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『マドリード戦記』  作者: JOLちゃん
王女革命編
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『マドリード戦記』 王女革命編 26 革命④

『マドリード戦記』 王女革命編 26 革命④


ついに首都シーマで開戦!


アリアは首都に入り、国民と兵士を前にし、王として演説を始める。


アリア、出陣する!



「国民よ! 今日、この国は解放される!」


 アリアは民衆に向かって叫んだ。


 シーマの中心にある大広場セバストーニ公園でアリアは自軍の兵士、そしてそれを取り巻く数万の民衆に対し演説を行ったのは午前7時過ぎであった。


 むろん、今この時間も前線ではミタス、シュナイゼンの両指揮官の下、戦闘は続けられている。


 アリアは二時間前、市街戦の終了報告を受け全軍に進軍命令を出す前に、この革命の責任者として、また、国民を守る責任を持つ王として何もしないというわけにはいかなかった。アリアはすぐに安全革命宣言演説を行なうことを決め、急ぎ用意させた。用意といっても会場を探させ、そこで演説を行なう旨を街中に報じさせただけで特別な警備などの手配はさせなかった。


 演説は戦争宣言であり観兵式であり、王としてのシーマでのデビューでもあった。


 観兵式の演出など知らない人間が多かった。それでも兵士たちは会場となったセバストーニ広場の中央に立派な演説舞台を作り、舞台を囲むように整然とアーマーを並べ、士官はもちろん兵士たちも見事な整列を作り上げた。そして、大規模に声をかけたわけではなかったが、話を聞きつけ僅か二時間で約3万人が集まった。むろん民衆が集まったのは好奇心が一番の理由だが、今の生活や戦争に不安を持ち、アリアに大きな期待と希望を持っていることも事実だった。他にも昨夜、戦闘に巻き込まれ逃げてきた民衆もいた。


 そんな中、アリアは現れ、大勢の兵士や民衆に対して演説を始めた。


 地声でマイクは使わない。アリアの声は後に<史上最も大きく気高い美声>と言われたように、人一倍大きく、とても澄んで響く美しい声を持っていた。この声も、後に世界中に広まり歴史を動かした<アリア教>の一つの要素であった事は間違いない。


 この時、シーマの市民たちは、初めて革命軍を率いている王女の姿をじかに見た。


 民衆たちはアリアが予想以上に歳若い少女であることに驚きを隠せなかった。考えてみればアリアは15歳になったばかりなのだ。


 だがすぐにその姿に美しく威厳に満ちた姿に魅了され、静かになった。その姿は凛々しく、何人をも圧する威厳と自信に満ち、赤紫の長い髪と白と黒の軍服は圧倒的といっていいほど絵になり、神々しいほど美しかった。早朝の少し霧を含んだ冷たい空気と活動が始まる前の街の静寂、遠くから聞こえる砲撃の音……それらの演出によってよりアリアの存在感が神秘的に印象付けされたという要素はある。ただ、そういう雰囲気を自然に作ってしまうという事もアリアの天賦の才であり、彼女が強い運命の人と言われる由縁であろう。


「私は! 今からこの国を混乱と不安と無秩序を産んだマドリードの敵! 愚父アミル=フォン=マドリードと貴族評議会を討ちます!」


 アリアが父アミルを討つ、と公言したのはこの時が初めてだった。

 アリアは演説する時、原稿やメモなど用意したことは生涯なかった。この時もそうだ。しかも彼女の近辺には馴染み深い仲間は一人もおらず、全てアリア自身の判断だ。


 そう叫んだ時は無我夢中だったのだろう、自分で言った言葉でその事実に気がついた。



 ……父を殺さなければならない……。



 アリアは分かっていた。王城に攻め込めば父アミルがどうなるか。敵対するか殺されるか……どっちにしても父アミルが助かることはない。もし万に一つ無事救出できたとしてもすでにアリアが23代国王を名乗りこれまでのマドリードの現在の国政批判をしている以上全く責任を問わないわけには行かない。国民に対してもケジメがある。アミルはどの道死ななければならない。


 アリアは理性では分かっていたが、感情はそうではなかった。言葉で出した時、アリアは自分の感情が抑えきれなくなったようだ。涙が知らない間に零れ落ちていた。アリア自身、胸が詰まる圧迫感を感じてはいたが自分が泣いているとは思っていなかった。


 アリアは自分が泣いていることに気づかず、演説を続けた。


「今日! 今から私はあの城を攻めます! 戦火が市街に及ばないとは言い切れない、だけど! これ以上国内で戦争を続ける災禍を考えれば、私は戦う道を選びます!

 罪のない市民を巻き込むことに、抵抗がないわけではありません。その償いは、必ず、私が負います! だから国民の皆さん! 今は命を大切にしてください! 私の人生がそうでした。死んだら終わりです! 家族を失ったら終わりです! 私は……!!」


 その時ようやくアリアは自分が涙を流していたことに気づいた。アリアは手で力強く顔を拭うと再び叫んだ。


「今は私に戦いをさせてください! そして我が軍の兵士の皆! 皆の国を思う気持ちこそ、宝です! 戦争だから、死ぬでしょう! 私は口先だけの綺麗事はきらいです! だから私も一緒に皆さんと死にます! そして、このマドリードという国を、国民や兵士の皆が誇れる国に変えます! そのために、後一回……今日のこの一回だけ! 私に皆の命を下さい!! その代わり、私は皆に約束します。戦争はこれで最後だと!!」


 アリアは叫んだ。次の瞬間、アリアの名を叫ぶ高揚と感動と熱気の混じったシュプレヒコールが兵士たちから沸き起こり、それはすぐに全民衆に広がり、アリアを讃える声や応援の声はほとんど聞き取れないほどの大音量となり街に響いた。それはもはや音でもなく声でなく、強烈な空気の衝撃波であった。


 そしてアリアはそのまま演台の傍の愛機、ヒュゼイン白機に乗り込んだ。


 一瞬兵士たちに戸惑いがあったが、元国軍士官、第二軍分隊指揮官トドーレス=フォン=ライム大尉がここにいる数少ない高級士官としてすかさず演台に上がりアーマー兵士たちに号令をかけ、セパスポーニ公園の中央を開けさせて整列させた。一発本番では奇跡といっていいほど見事にアーマーは綺麗な縦列を作り、各機が基本装備の大槍を掲げアーチを作った。


「アリア軍! これより解放軍として進軍! 皆様応援宜しくお願いいたします!」


 少し道化染みたトドーレス大尉の宣言だったが、彼自身若く、元々の快活さもあり、役不足感は確かにあれども、それでも見事に締めくくることでこの観兵式の終わりを演出した。トドーレス大尉の名前が歴史に刻まれたのもこの瞬間だ。


 そのアーチの中を、壮大な歓声が巻き起こる中アリアのヒュゼイン白機は颯爽と、そして悠然と進軍していった。アリア機が公園を出るのに合わせて各アーマーもそれに続いていき、大通りではアリア機を先頭にした二列縦隊を作った。


 ついに、アリアの本格参戦となる。



『マドリード革命』、別名『女帝4月革命』のもっとも長い一日の始まりである。そしてもっとも激しい戦いの始まりであった。





『マドリード戦記』 王女革命編 26 革命④でした。


アリア様は演説好きです。


ちなみに本編では触れていませんが、首都シーマには街灯モニターと無線放送機があるので、収録したものを放送することもできますが、アリア様は常に自分で演説する人です。


彼女が参考にしている大陸連邦はむしろ放送中心なので、直に演説するのはアリア様の一大個性であり特徴です。アリア様はかなりの美少女で見映えがいいので……国民や兵士が熱狂するのは無理からぬことです。


ということで今回は演説話でした。


こうしてついに革命が開戦です!


これからも『マドリード戦記』を宜しくお願いします。



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