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『マドリード戦記』  作者: JOLちゃん
王女革命編
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『マドリード戦記』 王女革命編 25 革命③

『マドリード戦記』 王女革命編 25 革命③


ついに市内で本格戦闘が勃発。


暴れまわる貴族評議軍バロウズ伯に対し、ミタスとシュナイゼンは巧みに兵を繰り出し戦線を支配していく。


思わぬ苦戦に、レミングハルト候は決断を下した!



4月6日。


 夜に発生した革命戦の緒戦はミタス軍VSバロウズ伯配下の首都防衛軍の夜間戦闘が<アリア=フォン=マドリード革命>の火蓋であった……いや、ザール軍とクレイド軍の衝突が革命の始まりである。この二つの意見が長い間歴史家たちの間で討論され、今だその答えは出ていない。戦端が開かれたのはザール軍のほうが早かったし、両者の兵力、クレイド伯の壮大な戦略を考えればザール軍対クレイド軍の戦いを初戦と判断できる。だが、ザール軍はアリア軍から分かれ、その方面では完全な独裁指揮権を有し、クレイドも中央のレミングハルトとの連携はなく、その意味では別の会戦だといえる。別の歴史家たちは、より本格的な直接対決であるミタス軍対バロウズ軍及び貴族評議軍との衝突のほうが革命の初戦だと主張する。

この論争は未だ結論が出ていないが、筆者の見解では、ミタス軍のほうが革命緒戦ではないか思っている。


 この夜、アリアの活躍はなく、ミタスの独壇場だった。


 バロウズ=フォン=コクラン伯の戦略眼はアリア軍の下士官ほどもなく、戦術能力はアリア軍の領袖たちの半分もなかっただろう。だが現場の戦闘指揮官という、本来下級将校程度が担う戦闘指揮に関しては卓越した手腕を持っていた。


 バロウズ他貴族評議軍は軍と呼べる活動は初めから行なわなかった。それぞれ小隊、中隊規模で王城周辺の屋敷を占拠し、司令官不在のまま各個に戦略もないまま篭城戦闘を始めた。指揮も何もあったものではなかったが、この革命緒戦の混乱期においてはバロウズの暴力指揮はアリア軍に対し大きな効果を発揮した。


戦術は相手にも最低限の知能があって初めて成立する。それを持たない者との戦いは戦争ではなく、ただの喧嘩だ。戦略など頭にない喧嘩相手に高等戦略は分が悪い。


この手の秩序ない喧嘩戦闘は、アリアよりむしろ在野にいたミタスのほうが得意であった。

ミタスは主力を中央に布き被害が市街に広がらないよう警戒させつつ、少しずつ敵兵力とぶつかり削り取るように進軍を行った。バロウズは当然その主力に対して全力でぶつかっていったが、アーマーの数が多いアリア軍はビクともしない。その隙にミタスは白兵戦の精鋭兵を約150人率いて市街北側の最左翼に移動し、白兵でもって襲撃していった。


これにはバロウズ軍……という軍と名のついた荒くれ者たちは、それぞれ連帯がなかったがため、ミタスのこの挟撃強襲戦術に抵抗する術もなかったが、連帯がないという事は、逆にミタスの部隊は小規模の戦闘をその都度繰り返さねばならず、この点バロウズの手腕の評価は分かれるところであった。時に度を超えた無能は卓越した人間にとって、有能な敵より厄介なものだった。


 この夜、戦闘指揮官であるミタス本人がその愛用の戦斧槍を振るい50人は倒したであろう。敵はミタスに恐怖し、ミタスの部隊にぶつかった貴族評議軍は恐怖を喚き散らしながら四散していった。アリア軍は徐々に戦線を整理し、時間と共に民衆も整理され落ち着いていき、ようやく軍と軍の戦闘の様相に移っていった。


 こうして夜戦はアリア軍の優勢に進んでいた。


 深夜になり日付が変わったころ、ついに貴族評議軍の一部は劣勢を受け王城に逃げ込み始めた。


 第二陣のシュナイゼン大佐はその機を捉え、機動部隊に猛追撃を命じた。


 敗戦で逃げ惑う兵士にとってアーマーによる襲撃は恐怖以上のものであった。

シュナイゼンが放った10機のアーマーと騎兵300騎、歩兵500人は、倍以上の貴族評議軍を、まるで綿の塊を引きちぎっていくかのようにあっという間に駆逐していった。シュナイゼンの部下のほとんどは元国防軍だ。彼らは連携も高く整然とし、集団戦では滅法強い。何よりミタス軍と違い十分に休息を取った精鋭軍だ。


ここで貴族評議軍をさらに驚愕させる出来事が起こった。貴族評議軍はバロウズ軍との連携を切り、通信も打ち切ったのだ。

レミングハルト候も勃発した戦争に混乱していた。だが少なくとも彼は他の貴族たちより有能だった。


彼はバロウズを見限った。


まだ王城内には貴族評議軍や彼ら貴族評議会たちの私兵が合わせて10000人はおり、王城は政庁であると同時に要塞でもある。門を閉ざしここに篭もる方が戦略的にも政治的にも有益だった。むろん城外のバロウズの部隊は全滅するだろうが全軍崩壊よりましだ。

レミングハルトの判断は早かった。篭城作戦を命じた。


だが、全門を閉じるべく命令を出した直後、最も大きい正門が爆破された。


 クシャナ、ミーノスの二人の工作であった。城内に潜っているクシャナが、状況を把握し行動を起こしたのだ。しかし門の破壊には成功したが、貴族評議会軍はすぐに人海戦術でもって防衛陣地を築き正城門周辺に兵力を集めた。


「信じられん! 何がどうなっている!?」


 レミングハルトは王宮の廊下を早足で歩いていた。向かっているのはアミル=フォン=マドリードの部屋だ。


 再び小規模だが王城内で爆発の音を聞いた。一瞬振り返り、すぐに歩き出す。


 14分後、レミングハルトはほとんど蹴り上げんばかりにアミルの部屋のドアを開けた。驚くべきことだが、乱れる喧騒と激しい戦闘音の中アミルは眠っていた。レミングハルトは罵倒せんばかりの勢いでアミルをベッドから叩き出した。


「なんだね、レミングハルト」


 アミルはいつもと変わらず気だるそうに目を覚ました。そして遠くから聞こえる騒ぎに初めて気づく。だが表情はあいかわらず他人事のように虚空を見つめていた。聡明な彼は何が起きたのか分かっているはずだがそれを表情に出すことはなかった。


「何をぼさっとしている! 立て! アミルっ!」

「まだ起きるには早いだろう」

 レミングハルトはアミルの愚鈍さに舌打ちした。薬のせいか、と思ったが、思いやっている余裕はない。レミングハルトは叩き倒したアミルを今度は引きずり上げた。

「喜べアミル。娘と再会できるぞ」

「私も若くない。朝から若い娘を相手にするのはキツイなぁ」

「ふざけるな!! 立て! そして服を着ろ!」

 レミングハルトは不愉快さを隠そうともせず怒鳴る。

「数年ぶりの正装だ、アミル=フォン=マドリード国王陛下! 反逆王女殿下がお待ちだぞ!」

 アミルはその言葉に、赤ん坊のような無邪気な笑みを浮かべ、言った。

「では用意しよう。アリア=フォン=マドリード陛下に会うために。君ももちろん正装するだろう? レミングハルト=フォン=サナル侯爵元宰相殿」


「…………」


 憮然とするレミングハルトを振り払うと、アミルはゆっくり立ち上がった。この日、彼は死ぬのだが、もしかしたらこの時点で自分の運命を知っていたのかもしれない。



 そして夜が明けた午前5時頃……シーマの大半はアリア軍の手に落ちた。




『マドリード戦記』 王女革命編 25 革命③ でした。


本格的になってきました。


ミタス軍に続いてシュナイゼン部隊も参戦しました。


そしてこの戦いが、長い革命の一日の始まりです。

ということで、これからの展開は完全に戦争編です。

アリア軍は一先ずミタス、シュナイゼンらが活躍します。

その後控えているのがアリア率いる本隊です。


アリア様の総力戦がついに始まります。


ということで、これからが面白いところになります。

これからも「マドリード戦記」を宜しくお願いします。

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