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『マドリード戦記』  作者: JOLちゃん
王女革命編
12/109

『マドリード戦記』 王女革命編 11 リィズナの激戦 ①

『マドリード戦記』 王女革命編 11 リィズナの激戦 ① です。


レイトンの決断により<アインストック>を投入することにしたアリア。


軍師ザールはその効果を大きくするため、一芝居うつことを提言する。

アリアはレイトンの家族の危険があるとして難色を示したが、レイトンの意志は変わらず、ミタスやナディアたちを信じて作戦を決行する……

8/リィズナの激戦 1



 12月20日、午前8時27分。


クレイド=フォン=マクティナスを乗せた貴族評議軍、旗艦<パルモ・セルドア>が、リィズナ北東6キロの地点にある。

クレイドは<パルモ・セルドア>の艦橋司令席でフルコースの朝食を食しながら6キロ先のリィズナを見つめていた。


「今ひとつだなぁ」


 クレイドはそう呟く。参謀長コマイセンは慌ててクレイドに近づく。


「も、申し訳ありません! すぐに作り直させます」


 バシッ! とクレイドは表情を変えずにコマイセンの頬を張った。


「戦況のことだよ。バカじゃないか君は……いくら私でも戦場で贅沢は言わないよ」

 不機嫌そうにコーヒーを飲むクレイド。しかし彼が食べているのは専属シェフを呼び作られた前菜からデザートまでついているフルコースなのだが、彼自身矛盾だと思っていないし冗談を言っているわけでもなかった。上級貴族の彼にとってはこの朝食がどの場所でもこれが普通なのだ。

「アリア殿下はやるもんだ……さぁて、どうするかな」

 正直、戦略家クレイドの眼から見た現状は甚だ面白くない。6万の兵力を動因したのに、今では約2万4000に減ってしまった。一方アリア軍の兵力はほとんど変わり無く、約4500前後を誇っている。アーマーの数もほとんど減っておらず、潜在的戦力としては2万以上あるといっていい。アリアはこの兵力でこれまで三戦して、3万5000を各個撃破してきたのだ。アリア軍は戦闘経験も積み士気も高い。クレイドが一介の将軍であれば撤退を決意したであろう。ここで敗退すれば貴族評議軍の兵力を一気に失ってしまう。アリア軍はリィズナの要塞に籠もっている以上、力押しで陥落させるためにはアリア軍の五倍の兵力は必要で、現実的には困難だ。持久戦をするにはクレイド軍のほうも物資が足りない。


 が、クレイドにも引けない政治的理由がある。


 ここで完敗を喫しては、マドリード国内の機運は一気にアリア陣営に流れてしまうだろう。それはまずい。撤退するにしても、アリア軍に多大なダメージを与えなければ今後に関わる。


「10分後、砲撃戦開始。そして<パルモ・セルドア>他各戦艦、着陸しアーマーや戦車部隊を前面に歩兵たちを降ろせ。どうもこれまでの殿下の戦略を見ていると、真っ先に飛行戦艦を狙い、混乱を誘うことのようだ。船ごと歩兵たちを失えば損だからね」


 クレイドの命令通り、8時40分、前衛部隊が砲撃戦を開始、全戦艦が着陸し、戦闘兵が降り始める。それに対し、リィズナも砲撃を開始した。さらに……リィズナ基地から大型飛行艇戦艦<プラーサム>が出撃した。そして上空から艦砲撃を加えていく。

 さらに<アインストック>がリィズナから発進し、同時にヒュゼイン白機に率いられたアリア軍アーマー部隊がリィズナの外に現れた。

「ほう。アリア殿下直々先陣に参戦、か」

 アーマーたちは対砲撃戦用に、皆巨大なシールドを装備していた。アリア軍は後方と上空の砲撃の援護させアリア軍アーマー部隊が突撃してくる作戦だろう。クレイドはすぐに自軍のアーマーを前進させるよう命じた。


 そこまではいい。


<アインストック>が、最初に砲撃したのは、なんとリィズナに向けて、だった。


<アインストック>は前進しつつ、後方の対地上用砲がリィズナの防壁に穴を開け、続いてアーマー部隊にも上空から攻撃を与える。アリア軍のアーマー部隊は思わず足を止め、上空防御の体勢を取った。

「小隊ずつに散開! 密集するとやられるぞ!! 各個、上空防御っ!!」

 ヒュゼインに乗るアリアが無線に向かって叫んだ。幸い対砲撃戦の盾を持っていたので被害はない。

 その光景を見ていたクレイドは哄笑した。

「あはははははっ! みっともないな、アリア殿下! ……しかしローゼンス子爵、この段階でようやく裏切ったか」

「どういう意味ですか」

「あの機動戦艦には砲撃はするな。我が陣営だ。……いや……待て」

 クレイドはじっと前方の戦いを見つめ、しばらく沈黙し、思考する。


 ……なぜこのタイミングでの反旗か……戦略的にはあまり劇的ではない。もっと両軍白熱した時のほうが効果は大きいはずだ。いや、そもそもレイトンの戦略能力でそこまで期待するのは間違いか……? アリア側も機動戦艦の出撃の機会を狙っていたはず、そう考えれば最初の出撃の時にそのまま寝返るのが自然か……。


 クレイドは軍人としては、本人の人格ほど奇矯ではなく堅実な思考と作戦に基づく理論的な将軍だ。

「閣下?」

「……あの機動戦艦と無線交信はできるか?」

「やってみます」

 コマイセンは控える参謀の一人を無線室に走らせた。5分後、「無線応答なし」と返答が返ってくる。


 ……ということは、これは演技の可能性もある……?


「飛行戦艦<マザック>を機動戦艦前に。これ以上こちらの陣地に近づけないようにしろ。地上部隊は敵アーマー部隊が混乱しているうちに前進!」

「閣下!!」

「ん? なんだ」

 その時、リィズナに大きな黒煙が上がった。反転した<アインストック>の粒子砲がリィズナの防壁を破り、中の施設を破壊したのだろう。それに対してリィズナ側も激しい砲撃を<アインストック>に与えるが、<アインストック>は前面フィールドを発生させ対応、ダメージはない。


 その直後、<マザック>からの無線報告で、<アインストック>からアリア軍の軍服を来た兵士が投げ捨てられているという報告が届き、そしてその10分後、<アインストック>よりレイトン=フォン=ローゼンス子爵本人から<パルモ・セルドア>のクレイド宛に無線報告が届いた。


『艦内のアリア軍の一掃を完了しました。これより貴族評議軍の命令に従います。命令を』


「閣下。これは閣下の手腕でございましたか?」

 報告を受けたコマイセンが驚いた表情でクレイドを見た。あの投げ捨てられたアリア軍の死体は艦内にいたアリア軍兵士たちだったのだろう。だが戦果ほどクレイドは喜んでいない。

「このままアリア軍に攻撃、我が方の前面で戦え、と伝えてよ。<マザック>はそのまま敵機動戦艦に随行」

 静かにクレイドは命令を下した。まだ、クレイドの中に疑念がある。

 その直後、地上のヒュゼインの高濃度粒子砲が<アインストック>の右舷に命中、船体が揺らぎ、それに対し<アインストック>の主砲が地にいるヒュゼイン目掛け放たれた。砲撃は咄嗟にアリア機が回避したが、間一髪だ。


この両者の交戦を見て、ようやくクレイドはレイトンの裏切りを受け入れた。この攻撃でヒュゼイン・アリア機は盾を失った。両者の間に無線で会話が行われた形跡はない。


 この時代のクリト・エの無線は単純で、電波の行き交いの探知は基本である。何を言い合ったかはわからないまでも、無線が発せられたかどうかを傍受することは傍受できる。ヒュゼインはしきりに無線で何か発していたが<アインストック>は貝の様に閉じこもり無言である。


 その直後、<アインストック>のレイトンからクレイドに無線連絡が届いた。


「<アインストック>の主砲を使うにはこの距離では近すぎ、リィズナにも地上部隊にも効果的な攻撃ができません。伯爵閣下の本陣傍への配置を希望します」


「許可するよ~。……そういうものなのかね、最新鋭の機動戦艦も不便はあるわけだ」


クレイドが許可したため<アインストック>は砲撃を止め、移動……クレイドの<パルモ・セルドア>を目指した。

 




「レイトン少佐は成功したようだ」

 リィズナの司令室で、ザールは呟いた。そう、これこそザールが立てた作戦だった。

「クレイド殿はレイトン殿に裏切りを命じていた。ではそれを逆手に取りましょう。そのほうが敵に多大なダメージを与えることができます」


 この日早朝5時30分。ザールはアリアとレイトンに対面を求め、自らの作戦案を二人に渡した。

 その作戦書を読んだアリアとレイトン二人の顔に驚きが浮かんだ。が、その後二人が抱いた心境は別だ。


 アリアは不快げに眉を寄せ、レイトンは真剣な表情で作戦書を見つめている。


 ザールは静かに告げる。


「アリア様の立てられた<アインストック>の戦術案は存じております。あれは大変素晴しい。ですがあれは戦闘の佳境にこそ意味の出る作戦ですし、いつでも行える作戦です。ですがご覧になられたとおり、私の作戦であれば戦闘の初戦において敵を騙し撹乱させることができます」

「これではレイトン殿に危険が大きすぎるし、死体を投げ捨てるのは死者への冒頭です、ザール。それに相手はクレイド伯だ。事が露見した後、レイトン殿は敵陣真ん中に取り残されてしまう」

「その点は大丈夫。離脱方法も考えております。それに、当然その危惧に対する手も考えております。クレイド伯には、もう一つ餌を目の前にぶら下げれば、<アインストック>に構ってはおられません」

「その餌とはアリア様ではないですか! ザール殿! アリア様を危険に晒すなど……」

「そのことは構いません」

 そのことはアリアも分かっている。その点はキッパリとアリアは答えた。

 アリアが気になったのは、この作戦があまりに人を騙すことを前提にしているからだ。あまりいい印象がない。

 戦争の戦略戦術は騙しあいだ。そういう点ではアリアの作戦も基本的に敵を騙すことで成立している。だが同じ騙し方でも、アリアの騙し方は芸術的で知能的あり、ザールの作戦はどこか人間の暗部や残酷さを感じさせる物だ。


「少し、卑怯ではないですか?」


「その分効果があります。もちろん、アリア様が納得できなければ無理にとはいいませんが?」


「やりましょう。アリア様」とレイトンは頷く。彼は覚悟を決めたようだ。アリアは尚レイトンのため作戦を再考するようザールに忠告した。この作戦にはもう一つ問題を孕んでいる。この作戦は初手で行う以上、すぐにレイトンのアリア軍への寝返りは、すぐにクレイドの知る所となるだろう。レイトン自身覚悟したとはいえ、アリアとしてはギリギリまで報告を待ちたい。


 ただし、計算上はすでに<ロロ・ニア>はナムルサス公爵領内についているはずだ。時間的いつ成功報告があってもおかしくない。アリアは、救出作戦の成功に関しては一切疑問も心配もしていない。


 レイトンは重ねて、ミタスたちを信じると答え作戦参加に際し気持ちの整理はついていることを明言した。アリアも結局レイトンの意志を尊重し、作戦を認めた。

「アリア様。この作戦は私の口から1時間後、作戦会議で進言の形を取り提案します。この作戦は、アリア様は関わり知らず……ということのほうが良いでしょう。アリア様は皆の前でこの作戦に同意するだけで構いません」

「……しかし、ザール……」

 アリアはまだ迷っていた。いや、作戦内容ではない。作戦内容に関しては理解し、この状況下で反対すべき理由はない。だが、この作戦の提案者は結果がどうであれ腹黒く思われるだろう。アリアはその責任を他人に被せたくは無い。行うのであれば、自分が責任を持つべきだ……。

 だがそんなアリアの苦悩を、ザールは「間違いです」と嗜める。

「これは私の案です。アリア様、横取りは感心できませんよ。たまには私も軍師として働いているところを見せないと怠け者と言われかねませんから」

 ザールは澄ましてそう宣言し、結局アリアの不満感を逸らし、アリアを納得させた。そして、死体にアリア軍の軍服を着せるため、軍病院に向かい歩いていった。





<アインストック>は、まっすぐ<パルモ・セルドア>に向かってくる。


「何か変だ」


 クレイドは司令官席から立ち上がる。<アインストック>は、<パルモ・セルドア>に減速し接近してくるのだが、艦首はこちらに向いたままだ。

 この行動自体何も矛盾はない。だが優秀な軍人には戦場の殺気を感じる感覚がある。クレイドは僅かに感じた違和感から、<アインストック>から匂ってくる殺気を感じ取った。


「まさか……」


 そうクレイドが呟いた時……<アインストック>の主砲が<パルモ・セルドア>の中心を貫いた。





「急速反転! 目標、前方敵戦艦!! 前進しながら砲撃っ!!」

 レイトンは<アインストック>艦橋でそう叫ぶ。<アインストック>のエンジンがフル稼働し、大きな弧を描き艦首を先ほどまで隣接していた<マザック>に向けた。そして反転突撃攻撃に移った。


 元々<アインストック>の目的は<パルモ・セルドア>ではない。<パルモ・セルドア>は大型戦艦で、完全撃墜させるには時間がかかり、その間敵陣で孤立する<アインストック>も危険が大きい。アリアはザールの作戦を修正し、<アインストック>の第一目標は敵を撹乱させる事、第二にできるだけ敵の機動兵力を破壊する事、そして無事戻ってくることを課していた。

 <マザック>に抵抗する術はなかった。敵艦は背後、しかも相手は最新鋭艦、そして距離も近い。瞬く間に爆発炎上し、そのまま地面に墜落した。<アインストック>はそのまま前進し、リィズナのほうに逃げていく。

 <パルモ・セルドア>は大型艦だ。<アインストック>の大型粒子砲の直撃を受け、船体の1/5は消し飛んだが、それでもなんとか飛行力は残していた。そして、司令部のある艦橋は無事だった。

 それでも不安定になった飛行力のため船体は大きく揺れ続けている。


「やってくれるよ……アリア殿下ぁ! レイトン奴……各砲台ぃ! あの馬鹿野郎を撃て!!」


「無理ですクレイド伯っ! まだ本艦のダメージを把握できません! それに船体が揺れでは狙いが定まりません!!」


「じゃあ地上部隊に攻撃させればいいだろう馬鹿っ!!」

「地上部隊も無理です閣下っ!! ご覧下さいっ!!」

 コマイセンは地上を指差し叫んだ。クレイドも地上部隊を見る。地上では、アリアのアーマー部隊が統制のとれた運動でクレイドの地上部隊と交戦に入っていた。地上部隊は突入してくるアリアのアーマー部隊に手一杯だ。さらにこの混乱に乗じリィズナから騎兵部隊も出撃し、塹壕内で混乱の極にあったクレイドの歩兵前衛部隊と交戦に入っている。<アインストック>との交戦で混乱したように見せたのもアリアの芝居だったのだ。これほど芸術的なまでのアーマー部隊運用をクレイドは見たことがない。

そして今、一丸となり地上部隊に突撃、その破壊的な攻撃力を存分に発揮している。とても上空の戦艦を打ち落とす余裕はない。

「ふははははっ! 全ては偽装ってことですかい、アリア殿下! さすが……さすがですよ、アリア様!」


 クレイドはふらふらと立ち上がり、コマイセンを呼び寄せた。


「シーマに無線連絡! ナムルサス公を呼び出し伝えろ!『やはり犬に噛まれた』とな!」


「そ……それだけですか?」


 クレイドは司令官席に座りなおし、前髪を整えながら、落ち着いた小さな声で言った。

「『飼い犬の不始末は飼い主の責任』とだけでいい。そしてこう付け加えるんだ。俺は、その結果が早く知りたい……とね。そうでなければ俺……いや、私は心を落ち着かせて戦いの指揮ができないとね」

 そういうとクレイドは忌々しげに<アインストック>を睨みつけた。すでに<アインストック>は再反転し、今では堂々とアリア軍の陣営で砲撃戦に加わっている。




 20日 午前9時54分。


 マドリード中央西部 トライン地方ナムルサス公爵領地。


 留守を任されていたコリオン=フォン=ナムルサス子爵が、当主ジエン=フォン=ナムルサス公爵から怒りに満ちた無線を聞いたのはその時間だった。

「レイトンが裏切った!? 彼の家族を殺害……と申されますか!?」


『不服があるのかコリオン!?』


「い、いえ……そういうわけではないのです! 公爵閣下、実は……」


 コリオンは額の汗を拭う。そして次の言葉を言うため口を開いたが、言葉を発する事はできなかった。まさに口をあけたその瞬間、冷たく鋭い短剣が喉に当てられたからだ。


『どうしたコリオン!? コリオン!?』


 動けなかった。少しでも動けばこの背後に迫った脅威は瞬時に彼の生命を止めるだろう。


「無線機を置け」

 鋭い女の声がコリオンの耳を貫く。コリオンはゆっくりと無線機を切った。

「ローゼンス子爵一家はどこ?」

 答えなければ即座に殺す……それは彼女から発せられる殺気と、今館で行われている襲撃から考えて本気だということは分かる。


もはやここは戦場だ。


 コリオンは素直に、ローゼンス一家は他の一族の家族同様、この襲撃を受け地下に避難している事を説明した。そして全てを説明し終えた時、彼の頭部に強い痛みが走り、そのまま意識を失い倒れた。


「殺さないだけ感謝してよね」


 ナディアは無線機を叩き壊すと部屋を飛び出す。外にはミタスとクシャナがナムルサス公爵家の私兵たちと交戦していた。もっとも……ほとんど二人による一方的な戦いだったが。

 私兵団は銃器を手に取り応戦しようとするが、ミタスたちが持ち込んだエルマ粒子発生装置のため銃が使えず混乱していた。田舎の私兵団員たちはエルマ粒子発生装置が銃火器に及ぼす影響を知らない者も多い。その混乱の隙をクシャナが弓で狙撃し、ミタスとナディアが見事な連携で倒していく。


彼等三人の前には、私兵団は足止めにもならなかった。


「危機一髪。ヤバかったわ、ホント。アリア様も無茶するよぉ~ホント」

「無線のアラームが鳴ったときはさすがにビックリしたぜ」

 ミタスも苦笑する。そして図らずも二人はアリアたちが交戦に入ったこと、レイトンが自分たちの連絡を待たずアリア陣営として戦闘に参加したことを知った。ギリギリのタイミングだった。

 と同時に、内心アリアの計算力に感嘆を覚えるミタスとナディアだった。アリアは見事にミタスやナディアたちの進行状況を計算し、レイトンを戦場に投入したのだろう。


「こりゃ、早く帰って来いっていう知らせだな」

「少し遅れちゃっているしね。あ~あ……折角の軍服に血がついちゃった」

「俺もすっかり汚れてこのザマだ」

 ミタスは愛用の戦斧槍を振り、刃についた血を吹き飛ばす。ミタスはもっとも敵を屠ったため、全身隈なく返り血を浴びていた。早朝、領内への襲撃から館への襲撃と戦いは連続したが、三人は全くの無傷。三人とも、戦場よりむしろこういう白兵の襲撃戦のほうが場数も多い。


 ナディアは二人に、ローゼンスの家族が地下にいることを伝えた。それは玄関付近で交戦していたクシャナの耳にも届いている。

「私は表で警戒していますわ! お二人は地下に早くっ!!」

「5分で戻る」

 ミタスは答え、ナディアと共に駆ける。


 クシャナは玄関の影に飛び込み、いつでも撃てるよう矢を20本、壁に立てかける。玄関の横には、ナディアが突撃で使ったヒュゼインが館に半分埋もれるように佇んでいる。

 一刻も早く家族を収容し、アリアの戦いに参加しなければ……三人は焦りを感じつつも慎重に、確実に作戦を遂行していく。

「そうだ」

 クシャナは弓を背負い、矢を五本掴んでヒュゼインに飛び乗った。閉じられているコクピットを開け、機体の無線機を掴んだ。


 無線の相手は<ロロ・ニア>だ。


「地上は制圧! 至急迎えに! 急いで下さい!」


 すぐに了解の旨の返答が戻ってきた。<ロロ・ニア>は領内上空で待機している。

「時間……急がないと」

 クシャナは忌々しげに呟く。その時、地下から戦闘音が聞こえてきた。避難所の護衛だから数もいないだろう。救出はもう数分で完了する。そして今<ロロ・ニア>を呼んだ。20分以内で到着するはずだ。


 もうアリアは戦争に突入したはずだ。彼等にもタイムリミットが迫っている。








『マドリード戦記』 王女革命編 11 リィズナの激戦 ① でした。


ということで<アインストック>もついに戦線投入でした。

最新鋭艦って本当強いわけですね。そりゃあアリア様たちが劣勢でも勝てるわけです……勿論用兵術と指揮あって初めてあれだけの戦果が出るわけですが。


そしてミタス、ナディア、クシャナも久しぶりの大活躍です。


一機に戦争が進みましたが、まだ兵力差はあり、クレイド伯はほぼ無傷です。そして貴下の兵力差も大きく変わらずアリア様劣勢です。この展開いかに乗り切るかがアリア様の手腕の見せ所になります。


ということで会戦もまだ続きます。


まだアリア様の革命戦も先が見えない状況です。

今後も『マドリード戦記』をよろしくお願いします。


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