マドリード戦記 大陸連邦留学旅行編23
マドリード戦記 大陸連邦留学旅行編23
表彰式。
優勝したナディア。
そこで一人の軍人と出会う。
その男こそ、この軍基地の主、クガート=バドドーテ少将だ。
そして思わぬ展開へ……。
***
大陸連邦軍デトラリア基地、午後15時。
まだ興奮冷めぬ模擬戦会場で、優勝授与式が行われた。
むろんその栄光を受けるのはナディアである。
会場には他に参加した20人の参加者たちも並んでいる。彼らも観客も、優勝したのがまだ若い少女といっていい歳のナディアあることに驚きを隠せない。
そこに、一人の男が姿を現し、観客はさらに声をあげた。
現れた長身の男……彼こそカレドニア公国が誇る将軍、クガート=バドドーテ少将だ。
彼は30cmほどの金のトロフィーを手にしていた。
……若くて背の高い将軍だね……。
この時クガートは24歳。
パドドーテ公爵家嫡男で生まれがいい。だが少将の職は貴族だからではない。
若いが威厳が自然に備わり、重々しい風格が備わっている。こういう場だが愛想笑い一つ浮かべていないが、けして雰囲気が悪いわけでもない。
「ナディア=カーティス君。優勝おめでとう。まさかヴィクトレア少佐を打ち負かしたのがこんな若いお嬢さんだとは思わなかった」
「ありがとうございます」
「おめでとう」
クガートはそういうと握手を求めた。ナディアもそれに応じる。
その時だ。握手をした二人の表情が僅かに変わった。
握手の時間が長い。そして二人が不思議に沈黙した事も周囲は不審がった。
すると予想外の事が起きた。クガートが軽くナディアを抱き寄せ、軽い抱擁をしたのだ。
そして二人は離れた。
「祭りを楽しんでくれたまえ」
クガートはそういうと観客たちに手を振り、去っていった。
***
その後、ナディアは大陸連邦軍事務所で優勝賞金1万ギルスの受領を受けた。
アリアも同行していて、案内はヴィクトレア少佐が直々に担当した。彼女は明るく聡明な軍人で、自分を負かしたナディアの腕を絶賛し、そして負けはしたが同じく抜群の働きを見せたアリアを賞賛した。
「貴方たちがアルファトロス人で残念だわ。大陸連邦人ならスカウトするところよ。中尉は約束できるんだけど」
「そりゃあどーも♪ 光栄。でも残念、実はもうちょっとだけ階級は上なんだ」
「そっちのお嬢ちゃんは軍人には見えないわね。凄い腕だけど貴族のお嬢様かしら? アーマーを玩具にして育った? 伯爵家か公爵家でナディアさんは国が派遣した護衛ね。違うかしら?」
「そのようなものです」
アリアもクスリと笑った。
中々洞察力の鋭い優秀な少佐だ。彼女の言葉ではないが、外国でなければスカウトしたい人物だ。軍人らしい規律があり明晰な頭脳があるのに女性らしさも備わっている。タイプはミタスに近いのかもしれない。
「損傷した<ベレッサ>だけど、ウチの基地で修理させるわ。軍が招待して高価なアーマーを壊して返したなんて我が軍の面子に関わりますから」
「ありがとうございます。ですが明後日にはこの街を発ちますが?」
「明日の夕方までにはなんとかしましょう。幸いいい技師が揃っているから心配いらないわ」
「喜んで甘えさせて頂きます」
壊した点はアリアにとって少々気になっていた事だしお金もないからこの申し出は有り難かった。軍が直してくれるのであれば安心できる。
こうして手続きは終わったが、ヴィクトレア少佐は模擬戦の感想を語り始めて二人を帰そうとしなかった。だがナディアはその訳を知っているようだ。
やがて20分ほどすると一人の士官がやってきてヴィクトレア少佐に何か耳打ちする。それを聞きヴィクトレア少佐は頷いた。
「ナディアさん。午後17時30分、軍広報部に来てください。それまでは祭りを楽しんでください。ブレプ豚の串焼きは絶品です。ああ、そうそう。注文があれば用意しますが?」
「60cmくらいのを2本あるといいんだけど? 重さは普通ので」
「短いのが好きなのね。分かりました」
そういうとヴィクトレア少佐は楽しそうに微笑み、退室していった。
事情を知らないのはアリアだけだ。
「どういう事なの? ナディア? まさか本当に大陸連邦軍に勧誘されたのですか?」
「まー似たようなものかな? あははっ♪ なんかお互い興味が湧いたっていうか、フィーリングっていうか、一目惚れっていうか」
「えっ!?」
思わぬナディアの告白に、アリアは愕然となった。まさかナディアが恋に落ちたのか!?
当惑するアリアを見て、ナディアは楽しそうに笑う。
「試合を申し込まれちゃった♪ 今度は剣術のほうだけど」
「…………」
あの抱擁は試合の申し込みだったのだ。勿論ナディアも即答で応じた。
愛の囁きに浮かれるなら分かるが、試合を申し込まれてここまで嬉しそうにするのはどうなのだろうか?
「あの……ヴィクトレア少佐の仕返し……意趣返しで剣術で名誉回復を図る……それがクガート少将の狙いなのですか?」
「かもね。でもそんな陰湿な雰囲気はなかったけど? あの将軍、かなりの達人だと思う。悪い雰囲気はなかった。それに剣術の試合で負けるようなあたしでもないし」
「…………」
本当に妙な事になったかもしれない……さすがに模擬戦で勝つのは目立ちすぎただろうか……と、アリアは思ったが、もう後戻りはできそうにないようだ。
マドリード戦記 大陸連邦留学旅行編23でした。
まさかの剣術試合です!
ある意味ナディアは見初められたワケですね。
達人同士だからこそ分かり合ったお互いの技量……といったところです。
クガート少将、今回のゲストの最後の目玉で、剣製クガートの異名を持つほどの達人で英雄です。彼も第一次大戦で戦士として、将軍として頭角を現し、姉妹作「蒼の伝説」でフィルさんの敵として登場。戦後はフィル派に属し第二次、第三次世界大戦にも参加する英雄です。
ということで、次回ナディアVSクガート!
剣術試合です。
ナディアもマドリード屈指の戦士ですがどうなるか!?
この剣術試合編が柳垣旅行最後のイベントです。
これからも「マドリード戦記」をよろしくお願いします。




