データ分析
少し短めです。
「…という、わけなんだけど…」
時々、チラチラと彼の顔色を伺いながら昨日あった経緯を説明していると、だんだん怖い顔になっていくニコル君。
ええ、駄目だった?私みたいなのが夜会に出たらやっぱヤバいのかな…
それともナーチルさんのパートナーっていうのが問題!?いや、確かにそれは大問題なんだけど、ってじゃあダメじゃん!!
私が1人おろおろしていると、腕組みをしながら聞いていたニコル君が眉間に皺を寄せて聞いてきた。
「それって、もしかして2ヶ月後の夜会ですか…?」
いつもより低い声のニコル君にはて、と首をかしげる。
「あーそういえばいつあるのか聞いてなかった…、陛下に招待されたって言ってたけど…」
すると、ニコル君はますます怖い顔になって、先越されたとか、あの夜会に呼ぶなんてとか、ブツブツいっている。
え、やっぱダメなのかな?!確かに昨日は気が動転して詳細も何も聞かずに帰ってもらったけど。
今から断ることって出来るのかな…
私が焦りだしたのが伝わったのか、ニコル君はニコリと安心させるように笑った。
「大丈夫ですよ、そんなたいしたもんじゃないです。今回は王太子の誕生パーティも兼ねてるものなので、ノザキさんが覚えなきゃいけないのは、ダンスくらいじゃないですか?」
「あ、そうなんだ。」
ダンスだけでも結構プレッシャーなんだけど、と思いながらもとりあえず、私が出ても大丈夫なのかとホッと安堵する。
「それに、ノザキさんは庶民といっても、この国では確かに特殊な立ち位置だし、陛下に顔も覚えてもらってるんだから、今まで夜会に参加してなかったのがおかしいくらいですよ」
優しく微笑んでそう言ってくれるニコル君はとっても可愛かった。女の私が全面降伏したいほどに。
「そっか、ありがとうニコル君。あと…この事は出来れば内密に…」
私の言葉を聞いたあと、ニヤリ、とさっきまでの可愛らしさはどこにやったのか、彼はまたもや男の顔をして顔を近づけてきた。
「分かりました。2人だけの秘密ですね?」
「ナーチルさんも知ってるけどね」
今度はなんとか赤面することなく私が即答すると、面白くなかったのか、彼はチッと舌打ちして唇を尖らせた。
「あ、あとその夜会には俺も会場の警備として出る予定なんで、何かあれば頼ってくださいね」
ああ、それは非常にありがたい。
きっとナーチルさんは私どころでは無くなるだろうから。
ありがとうと笑って、ようやく午前中に計画していた仕事が終了したので、2人で倉庫から出た。
ニコル君とお話をして、少し気分が晴れた気がする。
午後からは、事務室に戻って大量の伝票処理だ。
なんとか定時までに終わるように頑張ろう。そんで帰ったら近くの料理屋さんで美味しいもん食べて心ゆくまで寝るんだ!
私は明日が休暇となっているため、昨日よく寝られなかったぶんも思う存分寝てやろうと心に決めて、事務室に戻った。
その後、事務室にナーチルさんが来られてダンスと礼儀作法の練習は10日後の私の休日から行うことを伝えて足早に事務室から出られた。
うん、いつものナーチルさんだ。
既にニコル君は騎士団に戻っていたけど、万が一の事を考えていたのかもしれない。
そしてダンスの講師としてやってきた人物に腰を抜かすほど驚くことになるのは、もう少し後の話。