ルトウ① 善とは天使
なんとなく天使、と思いながら私は他の人にも意見を聞いてみる事にした。
「根津実ルトウくん」
「ルトウでいい」
「善ってなに?」
「善といったら天使みたいな存在の事だろう」
「神は?」
「神は悪魔を放置しているから必ずしも善ではないと思う」
たしかに天使はいい子で悪魔は悪い子。しかし神は罪深い悪魔ですら存在を赦している。
「悪を許すのはまた悪だ。たとえば盗みの罪ならムショではなく相応の対価を払えば許されるとオレは思う」
「それは私もそう思う」
罪は金を払わず物を得た事なら金を払う事が解決となる。
つまり罪人を入れて衣食住を与えながら生活させるのは金のムダじゃないだろうか。
罪を犯さず極貧生活をしている人間が馬鹿みたいだ。
「他はともかく一番重い刑は殺人だと思う。殺人を犯した者はどんな理由があれ死をもって償われれなけばならない筈だ」
「そうだね」
殺されたのに犯人が死なずにのうのうと生きているんじゃ、死んだ人間はが浮かばれない。
「だからオレは就職先を警察じゃなく、ここにしたんだんだ」
「でも甘いのは裁判じゃない?」
警察は逮捕するのが仕事で罪状に判決を下すのが裁判所なら、罪人に甘い判決をする方が悪い。
「まあどちらもオレの考えにあわなかったからな。でもここなら」
「ここなら?」
「……いや、なんでもない」
「いやいや、そこで止められたら気になるよ」
ルトウは素早く去った。