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疾風迅雷乙女伝  作者: まろやか餅味
3/11

第二話「夢の語り部」

「た、ただいま」

「・・・・・・」

「み、湖で拾いました」

「・・・・・・」


中年の男背負ってなんとか帰ってきたものの、ミトお婆ちゃんの無言の鋭い視線が突き刺さる。


「捨ててきな」

「捨て犬じゃあるまいし...自分で治療するから」

「知識も無いくせに口だけは達者だね。まだあんたに手当の仕方教えてなかったね、傷の手当て位一回で覚えな。」

「ありがとう!ミトお婆ちゃん!」


なんだかんだミトお婆ちゃんは優しい人だなと感じる。

家に入ると奥の寝室に運び込み、男を横にする。


「右足が折れてるな、他にも軽い傷や打撲は多いが命に別状はないだろう。」

「はぁ良かった」

「ただ血がかなり流れてるからほっとくと死ぬがね。」

「ヒエエエエエエ!?」


ミトお婆ちゃんはさっさと診察すると、こちらを向き俺の手にほれと何か手渡す。


「げっクガの実」

「我慢しな」


手渡されたのはクルミを少し大きくした形状で、外皮は紫色だが皮を剥くと中から赤い半月型をした果肉が出てくる。残りの黒い粒は種で食べると下痢が止まらないとか。

クガの実は栄養価が高いが渋みと苦みが強い。

正直かなり苦手なものだ。

ただこのままでは俺も腹ペコでぶっ倒れそうなのでしぶしぶ口に入れる。


「うげぇ」

「食ったんなら早く薪持ってきな。足固定するよ」

「はーい」


口の中に残る渋みと苦みに耐えながらも薪を数本持ってくると、ミトお婆ちゃんはテキパキ慣れた手つきでと処置を施していきあっという間に終わってしまう。


「後はクガの実でも口の中に放り込んどきな」

「え、えぐいな」

「気付薬の代わりだよ」


薬草の調合をすると寝室を出ていく

なるほどと納得し口に放り込む。


「ぐほっげほげほっぐっ!?」

「あ、起きた」


飛び起きた男はキョロキョロと家の中を見回し、最後に私の顔で視線が止まる。


「私は生きているのか?ここは?君に助けられたのか?」

「まあ湖で拾いました。ここは森の中の一軒家です。」

「そうだったのか。まだ幼いのにたくましいのだな。助けてもらったこと感謝する。」

「いえいえ」

「私の名はビルムット=シュリフォンだ。」

「ヴェルティアです。」


ビルさんと両手で握手を交わし、ありがとうと深く頭を下げてくれた。

ブロンドの髪を短く切りそろえ、濃い緑の瞳と堀が深く歴戦の戦士といった顔立ちをしている。

身長は180は超えているだろう、筋肉質で至る所にある傷の他にも古傷も多く見られる。


「それとそっち側にいるミトお婆ちゃんが治療をしてくれたんです。」

「挨拶をしなければ!」


ビルさんは無理やり体を動かそうとして痛みで顔を歪ませている。


「大人しくしてな。良くなったらとっと出ていきな」


ミトお婆ちゃんはちらりとこちらを覗き込み、心底うんざりとした顔でそう告げると作業に戻ってしまう。


「怒らないでください、ああいう人だから気にしないで」

「迷惑をかけているのは私の方だ。この足が治ったらすぐにここを発つつもりだ。」

「まあまあ焦っても碌な事無いですって」

「君は妙に達観しているというか、子供と話しているとは思えないほどしっかりしているんだね。」


ギクリ


「か、可愛げがないでしょうか...」

「そんなことは無いさ。私にも君と同じ位の歳の息子がいてね、やんちゃでいつも外を駆け回ってるような子でね。言うことも聞かずによく妻の雷をよく落としていたからね。」


どこか遠い目で話すビルさんは幸せそうに笑っている。


(家族かぁ....)


前世ではまともに親孝行した事がないし、顔も何年も見ていなかった。


(父さんや母さんは大丈夫かなぁ)


今まで無意識に考えないようにしてきたことだったが、ちゃんと考えて向き合っていかないといけない。


「泣いているのかい?」

「いいえ泣いてません」

「そうか」


さっと後ろを向き、袖で目を拭う。

ビルさんはそれ以外何も言わず俺が向き直るのを静かに待ってくれる。


「とにかく!絶対安静ですから!」

「従おう。短い間だがよろしく頼むよ」

「はい!言うこと聞かずに無理したら左足もへし折りますからね」

「肝に銘じておこう」



=====



ビルさんが来てから数日経過

ビルさんが夜な夜な話してくれる魔物との戦いや冒険、街の景色、美味しい料理等はどれも俺の心を鷲掴みしていた。

世界には俺の知らないことで溢れている。

ビルさんも『パキストの英雄譚』を読んだことがあるらしく、お互いその話で盛り上がりミトお婆ちゃんの拳骨を食らったのは記憶に新しい。


月がまん丸の満月の夜

大樹に背を預けビルさんと星空を眺めている。


「ヴェルは夢があるかい?」

「夢か...考えたこともないな」

「きっと君にもいつか見つかるさ」

「そんなもんですかね」


家の中ではうるさいと言われたので、頑張ってビルさんの為にかなり不細工だが松葉杖も自作したのだ。


ビルさんの腕を肩に回し、立ち上がらせる。


「早く寝ないとまたミトお婆ちゃんに怒られる」

「それもそうだ」


また明日ゆっくり話せばいいさと笑いながら歩く二人。

今日はいい夢が見れそうだ。

ミニタイトル[実は...]


「あっ」

「どうしたんだいヴェル?」

「クガの実の種ごと口にぶっこんじゃったわ・・・・」

「なん...だと...うぉぉぉぉぉぉぉ下腹部がぁ下腹部がぁぁぁぁぁ」

---自己規制---

「これはR-15ですわ」



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