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プロローグ

初稿は2004年あたりのものです。ラノベのつもりで描いたけど、ラノベじゃなかったのだろう……百合キーワードですが、百合? っていう感じです。

 大切なあの娘の名前は倉持朔良くらもちさくら

 朔良ちゃんが、あたし、笠屋雪緒かさやゆきおの一番の友達であることは、どんなに時が経っても変わらない真実だ。

 友情は、あたしたちが出会った瞬間から始まり、小学校から短大を出た今まで揺らいだ事なんてない。

 それはあの娘がいつも病気がちで、高校を中退していたって……今も一年のうち、家から出られない日のほうが多くたって変わらない。

 でも本当は、あたしだけがそんな風に思っているのかもしれない。

 例えそれが間違いだとしても、朔良ちゃんは優しく「ふふ」と微笑むに決まっている。そしてあたしを許してくれる。

 だっていつもそうだったから。

 親にさえ反対された劇団員としての生き方だって、朔良ちゃんは「体加減がいい時には見に行くから……」そう言って、励ましてくれた。

 まあ、今じゃ親も喜んでくれてるみたいだけどね。

いや、ウソ。

それは、お父さんだけかな?

 なんにしても今のあたしは、きっと朔良ちゃんと出会えたから、今のあたしになれたんだと思う。

「……こんな事、朔良ちゃんに言ったら照れたりしてくれるかな」

 あたしは考えると、自分の長いポニーテイルの先をつかんで、くしゃくしゃやりながら、ひとりで悶えた。

 春の終わりを告げるような大空の間近。

あたしは街へと続く、自宅からの長い下り坂の天辺に自転車を止めて、朔良ちゃんの大きな家を振り返る。

「……いってきます……」

 もちろん見えるわけないし、聞こえるわけもないけれど、いつも通りに挨拶を置いて、あたしはペダルに力を込める。

「っしゃー! 今日もいきますか!!」

 風を切り、背中のバッグを大胆に揺らして、坂道を駆け下りる。

 本当にたいした事じゃないけれど、気合は一杯入る。まだまだ劇団じゃ下っ端のあたしは、この気合が一番大事だ。

 それは初めて劇団に行く日、桜の花びらで埋まった、この道の天辺から見送ってくれた朔良ちゃんを思い出せるから……病気がちなあの娘が一杯応援してくれる。それがわかるだけで、あたしは大概の事がやれるぞって気になるんだ。

「だからずっと、あたしの傍にいてね……朔良ちゃん」


 これはそんなすねかじりでダメダメなあたしと、誰よりも生きて生きて、命を輝かせている、病気がちなあの娘のお話。


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