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007

「やっぱり怪しいのよね……」


 シキガワは自分のデスクで先ほどあったことを思い返していた。


「何が、ですか?」

「何が、って決まっているじゃない。あの上司のことよ。とはいえ、私があの部屋に向かうと確実にばれる……」

「じゃあ、俺が行こう」


 言ったのはクザンだった。


「クザンが?」

「俺はあまり行き慣れていないから、逆に気付かれない可能性が高い。シキガワさんは外で見張っているだけでいい」

「いや、それ以上に――もっといい方法がある」


 ニヤリ、と彼女は笑った。



 ◇◇◇



 ヨミシマのデスクに置かれているパソコンにはパスワードがかかっていた。


「ま。当然か」


 クザンは鼻で笑うと、首を鳴らす。


「――そのために、僕がここに居るのだけれどね」


 そしてクザンは、パスワードの解析を開始する。

 とはいえ、総当たりで打ち込んでいくわけでは無く、USB接続でパスワードを解析するための専用パソコンを繋ぎ、デスク本体にターゲットを切り替える。

 デスクにも鍵はかかっている。しかし、一番上の引き出しだけは鍵がかかっていなかった。

 そしてそこに入っていたのは――血がべっとりと付いたナイフだった。


「これは……?」

「何をしているのかね、クザンくん?」


 悪寒がした。

 振り向くと、背後にヨミシマが立っていた。


「ヨミ……シマ……」

「んん? 上司を呼び捨てとは、あいつにいい教育をしてもらったのだな?」

「このナイフ、どういうことだ?」

「まったく。幾度と無く手を引けとは言ったつもりだが……。どうしてこうなってしまったのか、理解出来ん。これだから昇進出来ないのではないか?」

「いいから、このナイフの説明をしろ」

「その説明、私にも聞かせてほしいものね」


 入口の壁に、シキガワが寄りかかっていた。

 それを見たヨミシマは舌打ちする。


「あら? 私が登場して、何か不都合でも? それとも、私が話すよりも先に『自殺ウイルス』について話してくれるのかしら、開発者サン?」

「私が開発者? 何を言っているのか、さっぱりわからないぞ」

「白を切るつもりならそれでも結構。今から証拠を出していくから。……逃げられないわよ?」


 彼女が取り出したのは、紙束だった。


「彼の有名な自殺ウイルス情報サイトの管理人が遺したデータの中に、こんな興味深いものがあったよ」

「ロックが解除されたのか?」


 クザンの質問に頷く。

 シキガワの話は続く。


「ウイルスに感染したサイトの前後で訪れた人間の情報が入っているものになっている。全……百件くらいかしら? すべてのサイトを見ると、あるIPが共通していることに気付いた。そしてそのIPを検索していくと……ある人物へとたどり着いた。それがあなたよ、ヨミシマ」

「それだけで……それだけで、私が犯人だというのか?」

「ああ、一応言っておくけれど、このIPが訪れた時間がいつも感染の二十四時間前だったらしいのよね。それも、インデックスページのみ見ている。……いくらインターネットに詳しくない私でも、これだけは怪しい、と思えるのよねえ」

「私は……私は……!」

「説明して頂けますね? ヨミシマさん?」


 ヨミシマの身体は、その場に崩れ落ちた。


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