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二話その2

【男性陣】【スラッシュ】

「おはよう…」アニは少し扉を開けて中を覗く。スラッシュは寝ていた。

ベッドに何も掛けず大の字に寝ているスラッシュにアニは目を開けた瞬間レモン汁が目の中に入るトラップを仕掛けた。

…一分後…

「ぐほぁぁ!メガ!ギガァァァァ!」

「…面白い…」アニは呟いた。

【ランサー】

「おはよう…」アニは少し扉を開けて中を覗く。ランサーは読書中だった。

「ん…窓でも開けるか…」

ランサーはアニに気づいていない。

窓を開けに席を離れた隙に、アニは読書中の本を引き出しの中にしまい、エロ本とすり替えて机に置いた。

「ん…?」ランサーが戻った。

アニは扉の影に隠れる。

「…ま、まじかっ!」動揺した。

しきりに辺りを見回している。

アニは笑いを堪えるのに必死だった。

「罠だ…きっとこれは罠…だがっ!」ランサーは表紙に両手を添える。「たとえ罠だとしても…男なら見届けてやるっ!!行くぜ!これでも食らえぇ!!」

ランサーは勢いよく表紙を開いた。

…いや、食らうのは貴方だって…。

中には強化ゴムと鉄板で作られたパッチン蛙【知ってる?】が仕込んであった…。

バチコォォーン!

よせば良いのに身を乗り出していたランサーは顔面にその直撃を受ける。

「ぐぅぅわぁぁああ…!!」

ゆっくりと鼻血を出して吹き飛び、ランサーは消えた。

…絨毯の上に、腹を見せて仰向けでぶっ倒れているネズミがいるだけだった。

「ぷっ…あははっははは…」

笑いながらアニは部屋を後にした。

【村雨丸】

「おはよう…」アニは扉を少し開けて中を覗く。村雨丸は和室の中央で正座しながら寝ていた。

とりあえず気づかれないように、姿勢を動かすと木刀の一撃を食らうトラップを仕掛けた。部屋を後にしようとしたとき、

「アニ殿…これを外して頂けないか…」

という村雨丸の悲痛な声が聞こえた。

「…なぜ付けられているのを知っててなすがままにされてたのかしら…?」

「い…いや、メース殿以外の異性が部屋へ来ることなど滅多にないから…その…」

あ、下心があった訳か。

以外とそういう人だったのね。この人。

「…それ、作動するまでとれないから」

「えぇ゛!?」村雨丸が顔を上げる。

あ…動いた。

バシイィッ!!!!

村雨丸は地面に突っ伏した。

「ぎゃあっ!…む…無念なり…。」

「…敵将、討ち取ったりー…あはは…」

【シェイダー】

既に出掛けていて居なかった。

バナナの皮でも置いておこう…。

【カリース】

「おはよう…」アニは扉を少し開けて中を覗く。カリースは寝ていた。

少しうなされているようだ。

「違う…僕に父さん母さんなんていないんだ…君達は父さん母さんじゃない…」

「…」イタズラを仕掛けるつもりだったが、アニはしんみりした気分になった。

「ごめんなさい…だから…近づくなよ…父さん母さんはいな…うぅ…」

枕元に座って頭を撫でる。

「大丈夫、大丈夫よ…」

「…」カリースは静かになった。

そしてアニは懐から先程からピーピー鳴ってる機械を取り出して呟く。

「…これ…たぬき寝入り発見機。」

がばぁっ!カリースがベッドから飛び起きてドアへ走る。

「…あ、かかった」アニが呟いた。

カリースがセットされたワイヤーに引っ掛かって転ぶ、そして上からたらいが降ってきて頭に激突した。

「け…KO…ぐふ」

カリースはそのまま動かなくなった。

【ブレード】

「…楽しかったか?」

ブレードは扉の近くで待ち伏せていた。

「あ…バレてましたか…?ではまた…」

アニは扉を閉めようとした。

「まぁ待て。片付けは忘れるなよ」

ブレードが再度扉を開けたときに作動し、吸盤付きの矢が眉間に当たるトラップ。

見事に看破されてしまった…。

「どうりで…目を腫らしたスラッシュと、何故か低俗な本を持ったランサーと、何故か嬉しそうだった村雨丸と、頭を押さえたカリースが苦情を言いにきた訳だ…」

村雨丸はマゾだったのか。

「皆もう食堂に集まったはずだ。…さっさと行くぞ。」

「はい…。」

半ば引きずられるようにして、アニはブレードと食堂に向かった。

【女性陣】【メース】

しかし…女性の部屋へ起こすためとはいえ、勝手に入って、不可抗力といえども寝顔を見るなんてこと…。

「あら…」廊下を考えながら歩いていると、真っ赤な修道女の服を着たハリスよりも頭2つくらい高い金髪のお姉さんがこちらを見つめていた。

「あ、おはようございます…」

「あらあらまぁまぁ、冬眠してる間に新入りさんが増えたのねー」

揉み上げの部分を三編みにしている髪の長いお姉さんだ。冬眠…ってことは…

「貴女がメースさん…ですか?」

「えぇ。職業は【アンリミテッドソーサラー】よ。よろしくね」

アンリミテッドソーサラーって、魔法しか取らない、防御も攻撃も捨てて魔法ステータスしか上げない完全魔法型の馬鹿職業じゃないかッ!?

「よ…よろしくです…」

アンリミテッドソーサラーはゲーム時代、厨二が必ずやる職業として有名だった。

ただ、やりこんだ奴は居ない。

そこまで育成の難しい、しかも育成しても扱いづらい職業だからだ。

たとえ戦闘値が1000あろうが5000あろうが、戦闘値1の防御しか持てない!

範囲攻撃で一撃死するわ、タゲは持っていくわで一時期、【厨二お断り】というパーティー名が普及したこともあるのだ。

だから最近じゃ全く見ない職業だ。

「…とりあえず、新人の初めの挨拶として、皆を起こして回ってるのかしら?」

「えぇ。アニと二人で回ってて…」

「本当は毎朝私が起こすのだけれど…」メースはにっこり笑った「頼んじゃっても良いかしらー?皆を食堂に連れてきてね」

「はい!」起こす理由入手!

「あら、いいお返事。」メースは先に階段を降りていった「じゃあ、よろしくー」

【アーチャー】

「アーチャー!食堂まで一緒に行かないかい!」自然に聞こえるように言う。

壁という壁に鎧が飾られた謎の部屋だ。

「…はっ!」アーチャーは地面に黒い鎧【ブレードの】を抱きながら寝ていた。

よだれをぬぐってハリスを見つめる。

「な…!」顔が赤くなっていく…!「メースじゃないのっ!?何で貴方がっ!?」

「自然に起こしに来ただけなんだけど」

「うわっ…わわわ…待って着替える」

いきなり今まで着ていたYシャツを脱ぎ始める。アーチャーは下着姿になった。

「あっ…!き…きゃあああ…」

「うおっ!…お、終わったら言って!」

一分後…

「失礼しました。ブレードさんに鎧を返さなければなりません。運ぶのを手伝って頂けると嬉しいのですが。」

「ぐおお…」何キロあるんだこの鎧!?

「ありがとうございます」アーチャーは見るからに冷酷な目でこちらを見ながら、背中に背負わせた状態で手を離した。

ぐはっ!背中が潰れたっ!

「ぎゃああああ」

【ラフィーリア】

「…というわけで…食堂にイカナイ?」

背中に鎧を背負わされたままアーチャーとラフィーリアを誘いにいく。

「うわぁ…」ラフィーリアは既に起きていて、魔法書を見ている所だった。

彼女の部屋はシンプルで、小さな本棚と紅茶セットの置かれたソファーとテーブルがあるだけだった。ソファーで寝てるのか…この人は…

「今から準備とかあったら、僕外で待機してるから…」ハリスは言う。

「いや、鎧は身に付けてるし着替える必要はないわよ。持つの手伝うねっ!」

「かたじけのうござる…」

ラフィーリアさん、ありがとう!

昨夜と真逆の事を思いながらハリスはようやく息をついた。

「…アーチャー、機嫌悪そうね?」

「何でもないですっ!」

アーチャーはそっぽを向いた。

【ノルイ】

「ノルちゃーん!食堂行こー!」

ラフィーリアが勢いよく扉を開けると、ベッド上の毛布の塊がモコモコ動いた。

毛布からメモが落ちる。

【わかった、着替える】

毛布はなおもモコモコ動いている。

「あの毛布の中って…まさか生活用品が全部…?」

「突っ込んだら負けと思いなさい」

ラフィーリアは真剣な顔で言った。

【ラミエ】

「ラミエさん、朝ですよ」

アーチャーが扉を開けた…。

ズガガン!

アーチャーの背後の手すりが【螺旋階段の途中に一つずつ部屋があるのだ】何かを弾いた。地面に落ちたそれは…大粒実弾。

「今日という今日こそはツイてるのよ!貴方より先に起きたんですからねメース!さぁ、この前氷漬けにしてくれた礼を…」

「落ち着いて下さい…私です。」

アーチャーは肩をポンポンと片手でほろいながらラミエを見つめた。

ラミエは白地にピンクの小さなウサギの絵が散りばめられた上下のパジャマに同じ柄のナイトキャップを被っていた。可哀想に、目の下にクマができている…。

「アーチャーちゃん!?あぁ、なんてこと!不幸だわ…!メースかと思ったのに」

ラミエは持っていたキャノン砲を落とすと、ベッドに力なく倒れ、落ちた。

「メースさんは先に食堂に行きました。皆で行くところです、ラミエさんも…」

アーチャーが誘った。

「…私なんて放ってくれていいのよ…敵と間違えて味方に銃を向けたやつなんて…もう私なんて相手にしなくたって…」

「ラミエ、今日は皆と朝御飯を食べる、がラッキー行動みたいよ」ラフィーリアが出まかせをラミエに教えた。

「えぇ。今から着替えるから待ってて…逃げたら不幸が移りますからね。」

うわ、扱いやすっ…。

5分後…

「私みたいな無能が、皆さんとまた食事が出来るなんて…これ以上にツイてることはないわ!皆さん、ありがとう!」

ラミエは剣士のような黒い胸当てのついた白い服を着て部屋を出てきた。

霊騎士のようにも見えなくもない…が。

…でも彼女はメカニクルらしい。

その服装を気にしているのに気づいたノルイが教えてくれた。

《ラミエはランサーとは違って、霊を操る魔法も使えるの。だから暗いのかも。》

…性格に影響って出るのかな…。

【ブレード】

「聞いてくださいよ!俺の目が!」

「聞いてくださいよ!さっきみつけたエロチックな伝説の本が!」

「スラッシュ、何があった。ランサー、お前はどうでも良い…」

「拙者は間接的ですが、美少女に殴られ申した。ふはは…快なり!快なり!」

「うわあぁん!たらいに殺されるぅ!」

「…お前ら少し黙れ。分かった、アニは俺が連れてくるから、お前らは先に食堂に行ってこい。」

ぞろぞろと男性陣が階下へ降りていった

「ブレードさん、鎧を返しに来ました」

アーチャーがブレードに告げた。

書斎で書き物をしていたブレードがこちらに気づく。

「あぁ、アーチャーか。どうだ?昨日はよく眠れたか?」

「えぇ。お陰さまで…」

「…お前も大変だな」ブレードは鎧を受け取りながらアーチャーの後ろに気づく。「ん?皆で来たのか…珍しいな…」

《ハリスさんが皆を起こしてくれました》ノルイが筆談する。

「ふむ…」ブレードはハリスを見つめた「ハリス…女性陣だけ起こしたのは…」

「いえ!決してやましいことを考えているのではないですよっ!これは…」

ハリスは説明した。

「なるほどな。異性の方が確かに気分的にも新鮮に起きられるかもな…よし、じゃあ先にお前らは食堂に行っていてくれ」

ブレードは再び机に向かって言った。

朝食も豪華だった。スラッシュは【いつも通りだ】と言っていたが毎日、バイキング形式なんだろうか…

「さて…今日は新しく入った二人をテストしようと思う。」

ブレードが席を立って言った。

「いつものあれか…」ランサーはハムエッグをつつきながら呟く。

「具体的には何をすればいいのかしら」

アニがブレードに訊いた。

「…東のパロマス王国へ行き、そこの辺境の洞窟でドラゴンを倒してもらう」

…随分ハードなテストだな…

「ブレードさん、そこの適性レベルは」

「あぁ、1500だ」

…うわぁ…

「ちょい!いきなり上級者ルートに放り込むのかよ!確かにこいつらは結婚して1000以上になってるけどよ…」スラッシュは心配してブレードに抗議する。

「いや、二人では無理だが、パーティーを組めばできるはずだ。スラッシュ、お前はあそこを一人でクリアしただろう?」

「そ…そうですけど…」

「パーティーはこちらで決めさせてもらう。準備は一時間で整えてこい」

【続く】


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