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第二話「試験」その1

城を出た後、ランサーとアーチャーは少し屋台で焼き鳥を食べたり【ランサーの案】、何故か遠回りして防具屋に寄り道をしたり【アーチャーの案】してから、【基地】と呼ばれる場所に到着した。

古く錆びれたアパートに見える…。

「時空干渉魔法結界で、見た目は小さいけど、中は騎士団のアパート並みに広いよ。さ、ブレードさんが待ってるだろうから、急いで行こうか」

ランサーが正面玄関を開けた。

「うわ…!」ハリスは思わずポカンと口を開けてしまった。

中は丸い吹き抜けのエントランスがあり、明らかにマンション並みの高さまで天井が高くなっている…!

内装は赤や黒で統一され、不思議な雰囲気を醸し出していた。

「…ランサー?アーチャー…?一体何をしていた…?」ブレードが眉をひくつかせながらエントランスの中央に立っていた。

鎧は脱ぎ、黒いジャケットとズボンを身に付けている…。

「さらばっ!」ランサーが消えた。

ハリスは辺りを見回したが、逃げていくネズミ一匹しか見当たらなかった。

「ブレードさん…申し訳ありません…」

「いや、多分道草食ってる原因はあいつだろう。アーチャーがそんなことを…」

「…メルハ1の防具屋に寄り道をしてしまいました…」アーチャーは崩れ落ちる。

「…。」ブレードは天井を見ながらぎこちなく尋ねた「い…良いのはあったか?」

「残念ですが…新作ゼロです。ブレードさんの鎧を越える可愛さを持つものは未だ発見していません。…彼はどこに!?」

「俺の鎧なら…いつも通りお前の部屋に…」ブレードがそう言った瞬間、アーチャーが消えた。ハリスは辺りを見回したが、

エントランスの螺旋階段をかけ上がるアーチャーが見えただけだった。

「はぁ…」ブレードが片手で頭を抱えてハリス達を手招きする「まぁ…中入れ…」

二人は細長い食卓テーブルが置かれた部屋に通された。

「まぁ、適当に座ってくれ。向かいに俺が座る。」ブレードが椅子を持ってきた。

「ありがとうございましゅ…っ!」

アニが噛んだ。

別段気にも止めないようでブレードは二人が座った向かい側に座る。

「さて…さっき聞いた話だと、お前たちは別の世界から来たとか…」

「まぁ、少なくとも魂だけは…」

アニはそうブレードに言った。

「空間の歪曲…歪みから生まれた…」ブレードが少し俯いて独り言を言う。「…でだ。もし良かったらで良いんだが…」

「…何でしょうか」

アニはブレードと目を合わせた。

「これからの動きや、情報を共有しておきたい。それと…まぁ、言い方が悪いが、貴重な境遇を持つお前らを保護したい」

「それは…私達に、あなた方から離れるな、と言っているのですか?」

アニがブレードを見つめる。

「無論、強制はしない。街や外部エリアの自由も約束しよう。ただひとつ確かなのは…メルハの中ならここが一番安全…ということだ。お前らは【ブラッディ・ウェポンズ】として、ここを基地に行動する。」

「具体的にはどうなりますか?」アニはブレードに訊いた。

「俺の親衛隊としてこの建物で暮らしてもらいつつ、防衛戦に参加をしてもらいながら、俺達の活動の協力を頼む事になる」

「…良いんじゃないか?」それまで黙って俯いていたハリスが顔をあげる。

「ハリス…」

「アニ、活動拠点を宿屋にしても、費用はかさむし、情報もあまり得られないと思うんだ。だから…」

アニは少し考え込んでいたが、やがて

「まぁ…貴方の指示が間違ってた事って、まず無かったものね…」

と言って了承してくれた。

「よし、分かった。…聞いたか、皆!」

食堂のドアというドアが開いた。

「アニ!ハリス!ようこそ!ブラッディ・ウェポンズへ!」

クラッカーが鳴らされ、紙の飾りがハリスの頭にかかる。

「…となることは分かっていたんだが」

ブレードは片手で頭を押さえて言った。

「折角皆さんが用意していたのです。未遂に終わるのは可哀想ではないですか?」

アーチャーがブレードに言う。

ハリスとアニはいつの間にか用意されたご馳走をただ呆気にとられて見ていることしかできなかった。

「まぁ、丁度夕食の時間だ、隊の自己紹介をしながら夕食を取っていこうか」

ブレードはそう提案する。

「まずは俺からだ。ブレードと呼んでくれて良い。何故か隊員はさん付けで呼ぶが…使用武器は機械大剣、戦闘職業は【ダーククルセイダー】だ」

その横にスラッシュが立って言う。

「俺はスラッシュだ!悩んでることがありゃあ何時でも言ってくれよな!今日は楽しもうぜ!職業は【ダーククルセイダー】!ランサー、次だぜ!」

「あぁ…まぁ、知ってると思うけどランサーだ。【メカニクル】をやってる…」

ランサーはしきりにブレードを見ていた

「あぁ…ランサー、後で俺の部屋な」

「棄権していいですかね…?」

「駄 目 だ」ブレードが睨む。

ランサーの隣に座っていたアーチャーがハリス達の方を向いた。

「歓迎します。私はアーチャーです。ご存知でしょうが、職業は【ドラゴンテイマー】です。竜騎士ですが、竜を落とす方に特化しています。」

竜騎士なんだ…知らなかった…。

更に隣にはアーチャーよりも更に小さい、まだ10歳にも満たないであろうハットを被った男の子がいた。

「カリースだ!職は【ヘビィガンナー】をやってる。よろしく!」

挨拶が終わるとカリースはそそくさとご馳走を詰め込み始めた。

「ははっ、食べ盛りだね」その隣、感情を感じられない、無表情の男がいた。

黒い包帯を重ねたような服を着ている。

「…【キルマスター】のシオン。新入りさん、戦闘中は背後に立たないでね?」

口調こそ穏やかだが、逆にそれが怖い。

その隣に、華やかなピンクの羽衣を纏ったピンクの髪の少女がいた。

「…彼女が口を開くと、皆魔法になってしまう。だからいつも筆談なんだ。」

ブレードはそう言うとメモを渡す。

『ノルイです。【ウォーシンガー】をやりながら、アイドル活動もしてます』

「メルハで彼女を知らない人はいないんだぜ!」スラッシュがノルイの肩を叩く。「スタイルも性格も良いし…ちょっとドジなところも可愛いんだぜ!」

「ドジっていうな」ノルイが喋った。

「む…!」スラッシュが口を押さえた。

そのあと口をしきりにパクパクさせる。

「声を封じられたな…馬鹿め…」ノルイの横に座っていた着物姿の男は言う。

「…村雨丸、お前の番だが?」

更に着物姿の男の隣にいた男が言った。

「拙者の番か…うむ。拙者は真の流派【木っ端微塵流】の後継者、村雨丸。…木っ端微塵流に興味があるのなら何時でも聞くがよいでござる。」

村雨丸の隣にいる男はため息をついた。

全身を黒いマントで覆い姿が見えない。

「…シェイダーだ。【ダイイングバレット】の異名を持ってる。次会ったら殺す」

「…何でっ!?」ハリスは突っ込む。

「じゃあな…挨拶はしたからな…」

シェイダーは部屋から出ていった。

「…シェイダーの横の空席はメース。今は冬眠中だ。まぁ、多分明日目覚める。」

ブレードがそう言った。

そして最後、その空席の隣にちょこんと座っている白いウェーブのかかった長い髪をした15くらいの少女が自己紹介をした。

「…ラミエよ。【メカニクル】をやってるわ…」とても暗い。

「ラミエ…また何かあったか?」

「茶柱が立たないのよ…いくら【戦場の幸運】と呼ばれていたとしても…普段ついてない私なんて…どうせ…どうせ…」

ラミエは机に突っ伏してしまった。

「…ラミエの隣に座るはずのラフィーリアはハリスの後ろにいる」

ブレードは指を指して言った。

「え…うわっ!?」

ハリスが振り返ると、息も届きそうな場所にハリスくらいの若い女性がいた。

髪は真っ赤で、まるで血のように彼女の体にかかっている。

ハリスから見て頭の左側にドクロを象った黒い髪飾りをしていた。

「ラフィーリアは私よ。新婚さん、いらっしゃーい♪」着ている物はペンキか血か、所々に赤い斑点のある革鎧だった。

「びっくりした…」ハリスは呟いた。

「本当に?ありがとう、【ハイドマスター】のラフィーリア。よろしくね」

「…さて、挨拶は済んだな。今日からこの親衛隊は俺を含め13人になる。共に戦える事を祝して、今日は騒ごう。」ブレードは杯を上げた。「乾杯!」

「つ、疲れた…!」

ベッドに飛び込んでハリスは呟く。

「お疲れ」アニが隣の枕で横になった。

「流石に今日は色々な事が有りすぎたからね。すぐ寝れそうだ…!」

「そうね」アニはハリスを見つめる。

「…ん?どうしたの?」

「まだ気づかないわけ…?」

案内された部屋は一つ。ベッドは一つ。

枕は二つ…………。

「うわっ…わわわああぁぁぁ…!!」

ハリスはベッドから転げ落ちた。

「ラフィーリアさんが言ってたんだけど…」アニは天井を見ながら言う「開いてた部屋って…ここしかないんだって…」

「え…嘘でしょ?」ハリスは額をひくつかせながら言った。

たとえゲームでだって、女の子と同室で寝たことはない。

「ハリス…以外に女々しいじゃない。私はそこで躍り出すかと思ったんだけど」

「なんでやねん!確かに僕らは結婚してるけど…ま…まだ式も挙げてないのに…」

「え?何言ってるのあなた…」アニはハリスの胸ぐらを掴む「女の子が寝ても良いって言ってんでしょうが!寝ろやあ!」

「うぎゃああぁぁ…」

後で分かったことだが、アニは実はラフィーリアに酒を飲まされていた。

こうなることを分かっていながら、だ。

…ラフィーリア、許すまじ!!

「…」ハリスが朝になって目を覚ますと、ベッド脇の椅子に座ってYシャツを着ているアニが目に入った。

「…おはよう」アニの声が暗い…。

「着替えるまで外…出てようか?」

「いや…いいの…もういいの…」

本人は精神的にダメージを受けていた。

「…昨日のこと、覚えてる?」

ぽつりと尋ねてみる。

アニの小さな肩がビクンと跳ねた。

「あ…ぁ…あぁ……!」

これは重症だ。どうにかしないと。

アニに部屋に置いてあった紅茶を入れて飲ませると、アニは落ち着いてくれた。

「まさかゲームごときで酒を飲んで酔ってしまっていたなんて…」

「一応今の僕達にはここが現実なんだよ。…っていうかお酒って知ってたんだ…」

「一口飲んだら美味しかったの。もう一口飲んだら更に美味しかったの。」

…お巡りさん。将来アル中になる人発見です。捕まえて下さい。

「…強引だったね」

「責任とって結婚するわ…」

「いや…もうしてるから…。」

「私…もう二度とリアルでもお酒なんて飲まないわ…」

固い意志が生まれた瞬間だった。

「さて…アニ、昨日1日で彼らについて考察してみたんだけど…聞くかい?」

アニは真剣な表情になって言った。

「えぇ。どうぞ」

「まず…彼らはNPCだ。」

NPC…つまりこのゲームに突然やって来た自分達とは違う、この世界にもとからいる住人。普通は自我なんて存在しない。

彼らはプログラムされた目的の為にしか動かない筈なのだ。

だが、この人達には自我がある。

悲しいときは悲しみ、嬉しいときには笑う。それ以上の、プログラム出来ないほどの個性、自我を持っているのだ。

この状況では彼らといると言うのは一番良い選択だっただろう。

NPCには戦争用にゲームバランスを失わないため、恐ろしいステータスが設定されている。それが自我を持ったなら、

気に入られて損なことはない。

「成る程ね…」アニは白衣を着ながらハリスの方を向いた。

「…で、まずは彼らと交流を深めることからだと思うんだ!」

「分かったわ。じゃあ貴方は今から女性陣を起こして回りなさい。」

「はぁ!?」

「私は男性陣を起こして回るわ、じゃ」

アニは部屋を出ていった。

『起こしてあげるイベントっていうのは…かなり好感度を上げるチャンスなのよ』

あとでそんな感じのメールがアニから脳内に届いてきた。

「なんで逆にしないんだよ…」

ハリスは文句を言いながら、いつもの白く袖のない法衣を着て部屋を出ていった。

【続く】


お久しぶりです!

最近寒くてインフルエンザの予防ワクチン打ったら見事に具合悪くなって倒れたケイオスです!

あとがきを書く暇も無いほどアイデアは待ってくれなくて…最近かなりご無沙汰になってしまっていました。

何人の方が【ゼロかもですが】このあとがきを見ているかわからないからと言って

手を抜くのは良くないかな?

…え?あとがきは良いから本文の手抜きだけは止めてくれって?

ぐはぁっ!…仰る通りでした。

この作品には山ほど登場人物が出てきます。多分並みの読者では追い付きません。

なのでひとしきり書いたらキャラクター紹介タイムを書こうと思っています。

なので見捨てないで!

次回も楽しみに来てください!

ではまた、気が向いたら世界の境界線あたりで会いましょう。

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