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休日

今回は短いですが、トルタ村編の最後ということで、勘弁してください。

ラーニャたちの宿でパーティーを行ってから、すでに今日で5日目。



この間、リュートたちは特に何か目的があったわけでもなく、ただ単にあちこちを回ってはバカンスを楽しんでいた。






――1日目


この日は山を散策し、様々な植物を見てまわったり、山菜取りなどを行った。


ウルやカレンが以外にもそちらの知識が豊富であり、彼女たち二人が率先して山菜をとっていた。カレン曰く、盗賊だったころに必然的に覚えたものらしい。


知識一つ一つを丁寧に教える時の二人の胸を張った姿がかわいらしく、リュートたちとしてはなんだかほっこりした気持ちになった。ただし、その時に揺れる姉の胸と自分の胸を見比べ、ひどく落ち込んだカレンの姿もあったりした……。


「あ、なんかこのきのこおいしそう」

「どんなの……お兄ちゃんッ!それ毒が――――ッ‼」


カレンが見ると、リュートの手にあったのは『ケレンダケ』という猛毒のきのこだった。食欲を掻き立てる美味しそうな見た目と裏腹に、一口でも口にすれば毒が全身に回って丸1日苦しんだ後、死んでしまうおそろしいきのこ。


しかし、リュートはおいしそうに最後まで食べきっており、なんともないようである。



お忘れかもしれないが、リュートには毒や麻痺といった状態異常系のものは一切効かない。この程度の事は、リュートからすればよくあることだった。


「もうお兄ちゃん!心配だからそんな事しないでよ!!」


怒るカレンに「ごめんごめん」と謝るリュートだが、あまり反省しているようには見えない。そのため他の者たちからも注意を受ける始末だ。


因みに、この日とれた山菜はラーニャの家で鍋にして食べた。







――2日目・3日目


この2日間は海でのキャンプだ。移動手段は簡単、リュート曰く、『高速龍神飛行便』とのことである。


キャンプは経験の多いウルとカレンの姉妹だけでなく、行軍時に何度も行っていたイレーナが指揮を執った。


海とくればやはり海鮮であり、リュートとメアリーが張り切って魚を取っていた。たとえ海といっても魔獣は存在する。たびたび巨大な海の魔獣が現れていたが、そのたびごとにドラゴンズに打ち倒され、食べれるところは美味しくみんなでいただいた。ただ、リュート1人がまたしても食べられない部分を食しており、またしてもみんなから怒られた。


「リュート様、それは何をしておられるんですの?」

「これは『釣り』っていってね、この糸の先についてるエサで魚を捕るんだ」


リュートが崖の上から釣り糸を垂らしていると、ユスティが近づいてきた。見慣れないものに目を丸くしている。


「そんな方法があったんですね……あら?玉妃もいらしたんですか?」


リュートの膝の上には玉妃が座っており、頭をリュートの胸に預けて眠っていた。その寝顔は幼く無邪気であり、なんとも保護欲を掻き立てられる。むにゃむにゃと眠る彼女の頭に、リュートは優しく手を置いた。無意識ながらも、それに頭を擦り付け、甘える玉妃。


「今日は日差しもいいし、気持ちいい天気だからね。それにあてられて眠っちゃったみたいだよ」

「フフッ、そうですか……お隣よろしいですか?」

「もちろん。ただ、ここからじゃ釣れないと思うから、暇だろうけどね」


リュートがそう言うもユスティはふわりと笑って隣に腰を下ろした。無言の二人。近くの浜辺で楽しそうなウルたちの声と、穏やかな波の音が、二人の耳に心地よく響いた。





夜は、リュートがどこかで買ったらしい大きなテントの中で寝た。もちろん、魔獣対策は万全である。みんなが昼の疲れでぐっすり眠っている時間帯、リュート、メアリー、ユスティに3人がそっと、テントの外に出た。


何があったのかは、翌日のユスティ・メアリーの赤く、つやつやした肌を見れば想像つくだろう。イレーナ、ウル、ターナリアの3人が呆れていた。




「……夜空の下でって、すごい……‼」

「……本当ですわね……」

「「「・・・・・・」」」







――4日目



山・海ときて次はどこかというと、野原・丘のあたりだった。ゆっくりと空を飛んで探してみると、景色のいい丘を見つけたのだ。そこには大きな木が何本か立っており、気持ちのよさそうな木陰ができていた。


リュートたちはそこにシートを敷き、弁当を広げる。この弁当はラーニャの家で作ったものであり、材料はこれまでの3日間で得た山菜や海の幸、それからライナに譲ってもらった肉である。


そう、この日はピクニックをしに来たのだ。



鮮やかな色合いで盛り付けられた弁当は、リュートたちの目を大いに輝かせた。まずは一口、みんながだまって口に入れる。その瞬間、その味に体を震わすリュートたち。



「すごい!これ、本当においしいよ!」

「このキノコのソテーも、鍋とはまた違った味で美味しいですわね」

「これ、これが一番美味いと思うぞ‼」

「あ、それは私が作ったやつだ」


賑やかな、それでいて穏やかな雰囲気のまま、食事を終わる。その後は軽い運動もかねて、ウル・カレン・玉妃の3人が野原を走り回っていた。彼女たち3人は獣人であるため、この開放的な場所が気に入ったのだろう。


ウル・カレンは狼の獣人。玉妃は狐の獣人である。この2つはイヌ科の動物だ。それを考えると、リュートは「犬は喜び庭駆け回り」のフレーズが頭に浮かび上がったという――。


隣ではメアリーがユスティ・ターナリアに草笛を教えている。二人とも興味津々で聞いていた。


イレーナはリュートの隣でゆっくりとお茶を飲んでいた。リュートと同じく、この穏やかな風景を楽しんでいるようである。


「イレーナもウルたちに混ざってはしゃいで来れば?」

「い、いえ。私はそんな……」

「ははッ、でも、そんなイレーナも見てみたいけどね」


リュートは想像する。イレーナが笑いながらウルたちとはしゃぎまわっているところを。


「おお、これはこれでいいかも?」

「そ、想像しないでくださいッ!」


顔を真っ赤にするイレーナが可愛いと思ったリュートは、彼女の頭を軽くなでるとそのまま寝転がった。


「……まったく、このお方は……」


そっと、触られた箇所にふれるイレーナ。その顔はいまだに赤い。


リュートは少し寝ていたらしく、目を覚ました。すると、リュートの傍では全員が無邪気な顔で、すやすやと眠っていた。リュートの仮面は取られていたようで、横に転がっていた。おそらくメアリーだろうと断定する。


ここら一帯にはすでに魔獣対策を施しているので、全員が寝ていても特に問題はない。


円になって寝る彼女たちの姿は、穏やかな昼下がりの午後の風景に非常にマッチしており、ここだけ、楽園のような錯覚を受ける。


心の奥底から湧き上がってくる気持ち。それを、リュートは自然と口にしていた。極上の笑みと共に。



「みんな、ありがとう――――」



出会ってくれてありがとう。


幸せな日々をありがとう。


家族になってくれて、ありがとう。


こんな僕を、愛してくれて、ありがとう。




どんどん溢れてくる感謝の気持ちを、この言葉にギュッと詰め込んだ。


望んだ日々。手に入れた、最高に幸せな毎日。だからこそ、恐怖を覚える――


「できることなら、僕が死ぬその時まで、みんなと一緒にこうしていたいな――」


必ず来るであろう、別れの時を――。





はい、これでようやく戦争編に入れます。トルタ村編は完全に遊びに来てました。

次の戦争編でリュートがどう暴れるのか、ご期待ください!



次の更新は明日にしたいと思います。

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