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あくまで予想

二日連続の投稿です。

全てが闇の中に消えたロジックは、最後に何かを言い残していった。


残ったのは、滅竜の神器(ドラゴンスレイヤー)の一つ、“カドモスの槍”と静寂のみ。


静かにリュートたちのもとへと後下してくるメアリーを見ながら、誰かが呟く。


「メアリー様、カッコイイ……!」


カレンだった。彼女は目をキラキラさせてメアリーを見上げている。確かに最後の決着は凄まじかった。


死ではなく永遠の地獄を与える残酷さを与える魔法。にもかかわらず、先ほどの魔法からは圧倒的な存在感も、死の予感も、恐怖さえも、何も感じなかったのである。それがかえって恐ろしい。


まさかメアリーがこれほどの魔法を有していたとは思わず、リュートも目を点にして驚いている状態だ。


ようやくメアリーがリュートたちと同じ位置にまで降りてきた。無事でよかったと安心したその時、地面に立った瞬間、メアリーの体が少しふらついた。


「「「メアリー様ッ!?」」」


ユスティたちが声を上げる。それでもまだふらついているメアリーの体を、リュートの腕が優しく抱きとめた。


「メアリー、大丈夫?」

「……平気。【暗闇の終焉(ザ・ダークネス)】は異常に魔力を必要とするから、ヒト型だと消耗が激しい。二つも造ったから、すごく疲れただけ……」

「僕の【虹龍召喚(アルカンシエル)】みたいな感じかな?それより、頬からすごく血が出ているよ。よく見せて」


ロジックの最後の一撃でかすってしまった頬からは、未だに血が流れていた。アイギスと同じである。


リュートが心配そうな声でメアリーに聞く。右手がゆっくりとメアリーの左頬へ添えられる。痛々しいほどに血が流れている傷をゆっくり、優しく指先で撫でる。もちろん、ただ撫でるのではなく、その指先には柔らかく、美しい光が灯っている。


光の治癒魔法だ。


メアリーの傷はみるみる治っていき、血も止まった。いかに【滅竜の神器(ドラゴンスレイヤー)】といえど、龍神の魔力には敵わないということだろう。


今にも壊れてしまいそうなモノを扱うかのように、そのまま頬に付いた血を拭い取るリュート。そしてリュートは微笑と共に伝える。


「お疲れ様、メアリー」

「んッ……」


「「「「「……」」」」


これを見ていたユスティたちは、何も言葉を発せないようだ。しかし、それも仕方がないだろう。


まず、未だにリュートの腕がメアリーの体を抱きとめているため、二人の距離はかなり近い。その状態でリュートは素顔のまま、微笑を浮かべながらメアリーの頬に優しく手を添えている。


メアリーも至近距離でこの世ならざる美しい微笑みを見ているため、自分の頬に添えられた手を意識してか、上気した頬と潤んだ瞳、艶めいた声を出す。いつの間にか彼女の小さな手がリュートの胸に添えられている。


はっきり言ってこの二人、雰囲気が甘々すぎるのだ。下手すると、このままキスにまでいきそうな感じである。


「なんだか、見ている私たちまでドキドキしきてきちゃいました……」

「あの二人、アタシたちがいるってことわかってんのか?」

「ワタクシの目がおかしいのでしょうか?二人の周りがピンク一色に見えますわ……」

「わわわ、み、見ていいのかな!?見ちゃっていいのかな?」


そんな甘い雰囲気は、見ていた者たちにまで影響したのである。ユスティたちも二人に当てられてか、顔を赤く染め、胸の動機が収まらない。純情(ウブ)なカレンや玉妃は、両手で顔を隠している。


……指の隙間から覗いているのは、まあ、お約束だろう。





そんな雰囲気を止めるように、アイギスが「オッホン!」とわざとらしく咳をする。


「すみません。しかし、先にアレをどうにかしたほうが良いかと」


アイギスの示す先には、ロジックが落とした“カドモスの槍”。持ち主を失ってなお、竜を脅かす嫌な魔力が渦巻いている。


「そうだね。そんな危険なモノ、さっさと処分したほうがいい。イレーナ、悪いけど、メアリーを支えてあげてくれないかな?」

「もちろんです、主様」


そう言い、リュートはメアリーから離れる。イレーナが肩をかし、メアリーがそれに寄りかかるようにするが、どこか不機嫌な様子だ。頬を膨らませてアイギスを睨んでいる。


鈍感ではないリュートはその理由も分かるため、苦笑した後悪戯めいた笑みを浮かべ、メアリーに小さく何かを伝える。メアリーに近かったため、イレーナにも聞こえたのだろう。二人同時に、一気に沸騰したのかというほど赤くなった。


「何を言ったのですか?」

「フフッ、もちろん内緒だよ♫あ、みんなはそこで待ってて。何があるかわからないからね」


アイギスに尋ねられるも、リュートは笑顔で秘密にする。二人はそのまま“カドモスの槍”へと近づく。


「それじゃあこれ、どうしようかな?普通に壊れたりするのかな?」

「おそらくは。いかに【滅竜の神器(ドラゴンスレイヤー)】といえど、龍神の力の前では意味はないでしょう」

「そっか、それじゃあ……」


リュートが腕を上げる。そこに魔力を集中しているその時、“カドモスの槍”が急に割れ出した。ピキピキと音をたて、まるで卵の殻のように割れていく。


全てが割れ終わった時、残ったのは手のひらサイズの青白い水晶だった。その水晶の中に、何やら文字が刻まれている。その文字は「風」。おそらく、ロジックが風の魔法を使っていたことに関係があるのだろう。


「“風”か……。他の【滅竜の神器(ドラゴンスレイヤー)】にもこの水晶があって、それぞれに属性の文字が刻まれているのかな?」

「そうでしょう。おそらくですが、この水晶が【滅竜の神器(ドラゴンスレイヤー)】の核に当たるものかと思われます。槍が壊れて水晶のみが残ったこと、そしてなにより、この水晶から感じる魔力からして間違いないかと」

「そうだね、それじゃあさっさと破壊しようか」


リュートが水晶を破壊しようとする。その時、水晶が黒く輝きだした。かと思うと、最後のあがきとでも言うかのように黒風の刃を放ってきたのだ。


「「――ッ!?」」


リュートたち二人はずば抜けた反射神経ですぐさま後ろに跳ぶ。リュートが魔力障壁を展開し、黒風の刃を弾いた。その一瞬の隙を狙ってか、水晶は凄まじい速さで空へと消えていった。


「くそッ!逃げられた!なんだあの反応、まるで生き物みたいだ」


アイギスが舌打ちしている中、隣のリュートは飛んでいった水晶を眺めていた。


「……ドラ○ンボール?」


今、目の前で起こった光景が、願いを叶えたあとのドラ○ンボールの散り方にそっくりだったのだ。


「っは!?それなら孫○空よろしく、空で掴みとればよかった!」










 ***


現在リュートたちは最初にアイギスたちがいた火山へと向かっている。様子を見に行くためだ。飛んでいけばいいのではとも思ったが、これまで色々と急に起こりすぎたために、景色を見ながらゆっくり行こうということになったのだ。


まあ、周囲の景色といっても、アイギスたちとの戦いやロジックとの戦いで森はボロボロの状態なのだが……。


リュートたちがみんなのいる場所に戻ってきてから、リュートはずっと難しい顔をして何かを考えているようだった。


メアリーが少し心配そうな表情でリュートを見上げる(・・・・)


「……リュート様、どうかした?」

「ああ、うん。ちょっとね」


言葉を濁すリュートに対して、メアリーは心配そうな顔ではあるものの、幸せな雰囲気で寄りかかる。それというのも、現在、メアリーはリュートの両手で抱きかかえられているのだ。


俗に言うお姫様抱っこである。


リュートが戻ってきた時もまだふらついていたため、いっそのことリュートが持っていることにしたのだ。最初はおんぶしようかと思ったのだが、メアリーはロングスカートであるため、この形になったのである。


「……メアリー様、最初からあれ狙ってたんじゃね?」

「うむ、そういう感じにも思えるな。あれほどふらついていたのも、もしかしたら演技かもしれんぞ?」

「メアリー様……羨ましいですわ!」


いろいろと疑問に思うところはあるものの、メアリーが先ほどまで戦っていたのは事実であり、これほど幸せそうな表情でもあるため、言うのも憚れるのだ。


周囲がそんな話をしていた時、唐突にリュートが隣を歩く炎夫婦へと尋ねる。


「アイギスさん、サラマンディアさん。龍神がいたのって、どれくらい前かわかる?」

「龍神がですか?しかし、龍神は貴方様でしょう?」

「僕が龍神としてこの世に生まれ出てからまだ8年しかたっていなんだ。でも、龍神の伝説は各地に残っている。それはつまり、過去に僕以外の龍神がいたことは確実なんだよ」


この言葉に驚いた様子の夫婦。てっきり、これまでの龍神も目の前の男だと思っていたのだ。


「……ということは、龍神にも我々と同じように、【継承】が行われるのでしょうか?」

「いや、六皇竜はその属性竜ごとに【継承】が行われるよね。銀竜なんて属性竜はいないから、その線はないと思うんだ」


これに関して、他の者たちも難しい顔になる。


「……これは僕の予想でしかないんだけどさ」


リュートが口を開く。


「さっきの水晶には“風”の文字が刻まれていた。ロジックが使っていたのは風の魔法だし、あれは武器の属性を表すものだと思うんだ。【滅竜の神器(ドラゴンスレイヤー)】は6つあるから、多分それぞれに属性があるんだと思う」


ここまでは先程アイギスとも話していたことだ。


「6つの【滅竜の神器(ドラゴンスレイヤー)】、6体の精霊王、6体の竜皇。そして、竜皇のトップとして龍神がいる。ロジックも『我らの王』とか言ってたし、【滅竜の神器(ドラゴンスレイヤー)】にもトップがいるってことなんだろうね。もしかしたら、精霊王にもいるのかもしれない」


「私たちのさらに上……?そんな話、聞いたこともないわね……」


サラマンディアが不思議そうな顔で言う。それに対してリュートも苦笑を浮かべる。


「まあ、これはあくまで予想なんだけどね。僕が言いたいのは、その先のことなんだ」

「……どういうこと?」


「ロジックが『今回の聖戦』て言っていたことから、以前にも戦いはあったってことはわかるよね。そして、“龍神の伝承”はあるのに僕以前に龍神の存在を確認されていなかった。龍神が同時に2体現れるとは考えられないから、おそらく先代の龍神はその戦いで死んだんだと思う」


「まさか!そんなことあり得ません!!」


「ロジックは本人が雑魚だったけど、【滅竜の神器(ドラゴンスレイヤー)】自体は六皇竜に勝るとも劣らない力を秘めていたのは事実だ。そのトップなら、僕と同等の力を持っていてもおかしくはないんだよ」


「それは……そうかもしれませんが……」


アイギスは認めたくないのだろう。しかし、リュートの予想は確かに納得のいくものだったのだ。それを理解しているため、アイギスはさらに顔を歪める。





「なんにせよ、これから色々と調べなきゃいけないみたいだね……」



今回は久しぶりに、リュートとメアリーのイチャイチャぶりを書いてみました。少し真面目な話になりましたが、次からは少しゆったり話になると思います。


そこで質問なのですが、誰のどんな話が読みたい!とかリクエストはありませんか?もしありましたら、教えていただけたらと思います。ちょっと気分転換がてら、書いてみようかと思いますので。


感想、よろしくお願いします。

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