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龍神VS赤皇竜&精霊王(炎)

「赤皇竜と精霊王か……夫婦でもあるんだし、どんな戦法をとってくるんだろう?楽しみだな」


リュートは仮面を取る。これにより今まで以上に視界が広がり、さらに戦いやすくなったのだ。突然仮面を取ったリュートに驚く炎夫婦。しかし、その反応はそれぞれ別だった。


サラマンディアは、リュートのその神がかった美しい容姿に。


アイギスは、銀の髪と――黄金に輝く龍眼に。


「やはりそうか……」


小さく呟くアイギス。何かに対して確信を得た、という感じの彼は、今まで以上に笑みを深めた。







先に動いたのは、今度はリュートである。


リュートは消えたのかと錯覚させるほどの動きでアイギスたちの元まで移動すると、それぞれの腹の位置に手を添える。


アイギスたちがリュートの気配に気づいた頃には、リュートは既に魔法を放つ体勢に入っていた。そして彼の手から放たれたフレアバーストが、アイギスたち二人の腹を貫く――かに思われた。


「ぐうッ!」

「くあッ!!」


二人は間一髪、体を回転させることで躱すことができたのだ。その回転の勢いを利用し、――リュートから見て――右からアイギスが肘鉄を、左からサラマンディアが蹴りを放ってきた。リュートは魔法を発動しているために、一瞬防御が遅れてしまう。


なんとか右腕だけは間に合ったものの、サラマンディアの蹴りをまともにくらってしまう。


「グウウッッ!!?」


予想以上に重い蹴りだったために、体が横向きにくの字に折れ曲がる。


しかし、精霊王は本来六皇竜と同格の存在なのだ。女だから力が無いというわけではないのである。つまり、完全にリュートの油断だ。



炎夫婦はさらに追撃を仕掛けてくる。


「サラマンディア!」

「ハイッ!」


二人は間にリュートを挟み、数々の鋭い一撃を放ってくる。先ほどアイギスと演じた超近接戦闘だが、今回はサラマンディアも混ざっているのだ。前から後ろから、右から左からと、絶え間なく続く連撃。その一つ一つは魔力の練り込まれた一撃であり、当たればただではいられないレベルのダメージとなるだろう。


(一撃一撃の威力は厄介だけど、それ以上にこの二人、コンビネーションが良すぎる!!?)



夫婦だからなのだろうか。アイギスとサラマンディア、この二人のコンビネーションは抜群に良いのだ。片方に攻撃を仕掛けようとすると反対側から攻撃の手が入り、逆もまた然り。数の利を生かし、リュートに反撃させる暇を与えない完璧なタイミングの連撃、これが、リュートが防戦一方の理由である。


しかし、いつまでも手をこまねいているリュートではない。



「少し、離れてくれないかなあッッ!!!」


これまで我慢していた分をぶつけるかのように、魔力を開放、一気に魔法をぶつける。その魔法の属性は闇。闇が広がると同時に壁になり、アイギスたちを押し飛ばした。


「これで終わりじゃないよ?」


その魔法はただの闇ではない。メアリーから学んだ魔法であり、1対多の闘いでは非常に役立ってくれる魔法――“影戦士(ドッペルゲンガー)



闇の障壁からリュートの影の分身へと形を変え、二人に襲い掛かる。その数なんと30。15体ずつ、それぞれに向かう。


「これは……黒皇竜の魔法か!?――ちっ、面倒なことを!」


どうやらアイギスは見たことがあるらしい。戦力としては全く問題ないが、数が多いために面倒なのだ。そのことを思い出したのか、顔をしかめて襲いかかってきた影戦士を見据える。


「だが、所詮は数だけの雑魚。以前はうまく翻弄されてしまったが、今回はそうはいかんぞ!!」


アイギスは両手に魔力を集め、手のひらサイズの熱球を生み出した。そんな大きさで15体も相手にできるのかと不思議に思うリュートをよそに、アイギスは自信満々、といった表情だ。


「焼き切れ――回炎刃・(りん)の型!!」


アイギスは両手にある熱球を投げる。それぞれ影戦士の中心付近まで飛んでいくと、その場に停滞して形を変え始める。そうしてできたのは、複数の剣状の刃。それらは歯車のように高速で回転をはじめ、影戦士を灼熱の刃で焼き切っていく。もちろん、全てを斬り切れた訳ではない。しかし、そのことは織り込み済みである。


アイギスが手を動かすと、それに従うかのように炎の刃も動く。これは、操作可能の魔法なのだ。


一度発動した魔法を維持するだけでなく、操作まで可能とするのは並大抵ではない。アイギスでもこの魔法の開発に数年を費やしたのだ。気軽にバンバン魔法を開発・コピーするリュートが異常なのである。まあ、今更であるが。



これにより、アイギスはそれほど時間をかけずに影戦士を殲滅した。






一方、サラマンディアの方はというと――――。


「まあまあ、こんなにも大勢の戦士に迫られるなんて、私もまだまだいけるわね」


軽口を叩けるほどに、意外と余裕のご様子だ。


彼女は「ふうっ……」と艶めいたため息を落とすと、次の瞬間には好戦的な笑みに戻っていた。彼女は魔力を両手・両足に集める。桁外れの魔力を十分に練りこんだそれは、炎となって、腕や足に纏う。それは徐々に形を変え、やがて大きな(つるぎ)の形と化す。


炎刃舞踏会(フレイム・ダンス)


悠然と影戦士へと向かっていくサラマンディア。一体目のもとまで行くと、腕を振るう。それと同時に相手は真っ二つに焼け切れた。次は一番近くの影戦士へと向かい、今度は足を振るう。またもや相手が真っ二つになる。


「4……5……6……!」


脚を、腕を振るたびに、相手は炎の刃で焼けきれていく。そのすがたは舞というには激しく、それでいて美しい。敵をパートナーとすると、サラマンディアの踊り(ダンス)はパートナーが命を絶たれる程に燃え上がる過激さであった。


そして、15体全てを切り終わると、振り向いて悪戯っ子のような笑顔でこう言う。


「フフッ、ごめんなさいね。私――四刀なの♫」



アイギスとサラマンディアが影戦士を全滅させるまでにかかった時間は、1分にも満たない。


二人はそれぞれの魔法を維持したまま、リュートの方へと向く。魔法を簡単に打ち破ったことによる優越感を感じていた二人だが、リュートを見た瞬間、その顔は怪訝そうな表情へと変わる。リュートもまた、笑っていたのだ。


「何を笑っているのかしら?あなたの魔法、簡単に破ちゃったわよ?」

「構わないよ、あれはただの時間稼ぎだからね」


その刹那、リュートの体から莫大な魔力が溢れ出した。アイギスたちは自分でも気づかぬうちに、その圧倒的な魔力に足を後退させてしまう。


蒼き世界の始まり(ブルー・パレード)


リュートの見てきた「生物」を再現させるこの魔法は、水属性の魔力が形を成して数々の生き物となる。その数は100にも届くかという程であり、全てが蒼一色であるため、確かに「蒼き世界」といえる。


リュートが「いけ!」と指示を出すと、100の水でできた生物たちが、一斉に襲い掛かる。それは、まるで大きな津波のようだ。



「どんな魔法かと思えば、性懲りもなく数で勝負に来たか!!

「残念、今回は量より質だよ」


リュートがそう言うなり、魔法によってできた水の生物たちは一箇所に集まっていく。どんどん巨大化していき、やがてそれは、ある生物の形をとる。


それは――“イカ”だった。


「一体だから、パレードはできないね……。でも、こんなに大きいのを動かすイメージをつくるのって、かなり大変だったんだよ?」


誰ともなしに言うリュートは、イカが動くイメージを浮かべる。そのイメージに従い、巨大なイカは10本の巨大な足を動かしていく。


「くうううう!なんだ、あの変な生き物は!?巨大すぎるぞ!!」

「まともにくらっちゃダメよ!当たったら終わりと思って!」

「分かっている!!」


考えてみて欲しい。大型トラックほどの太さのムチが、しなりの反動と凄まじい速さで迫ってくることを。当たればひとたまりもないのは確実である。


そのため、アイギスたちはかなり本気で躱している。時に魔法で軌道を逸らし、時に瞬足の移動をとり。



「あ、しまった」


そんな中、リュートが1本、操作を見誤ってしまった。見当違いの方へと振るわれたその足は、大きめの山へとぶち当たる。


ドガアアアァァァァンンツツ!!!


巨大な衝突音と共に、その山が弾け飛んだ。衝撃波が全員へと襲いかかるが、皆、それについては何も言わなかった。いや、言えなかったのだ。


見てみると、山の頭頂部はかなりへこみ、また、更地も出来てしまっている。1本でその威力という事実に、魔法の発動者でさえ呆然となっていた。そして気づく。イカが消えていたことに。


この魔法は、使い手のイメージのみで動く。呆然としてしまったリュートは、イカの操作と存在のイメージを止めてしまった。結果、自動的に魔法がキャンセルされてしまったのだ。これが、この魔法の難点でもある。



巨大なムチの嵐とでも言うべきものが終わり、3人の間になんとも言えない空気が広がる。しかし、終わり方はどうであれ、確かに魔法の威力そのものは凄まじかったのだ。そのことを考え、気を引き締める夫婦。



「……強いとは聞いていたが、まさかこれほどとはな。予想以上だ……ここまでやられては、もうやるしかないな!」

「あら、そこまでしていいの?周りの環境が――」

「今はあの者をぶん殴ることと、楽しむことしか考えられん!!」

「――ふう、仕方がない旦那様ね。まあいいわ、私もやりたかったから、ちょうどいいもの」


二人は心の底から楽しそうな笑みを浮かべる。本当に楽しくてしょうがないという、無邪気な子供の笑顔そのものだ。あれほどまでの力を見せつけれられて、この態度。本当に、闘いが好きだということが伝わってくる。


「そっちがその気なら、僕も流れにのっておかないとね」


そんなん二人に当てられてか、それとも彼自身の本能が戦闘欲を抑えられないのか。とにかく、リュートもその気になった。


「「「解除(リレイズ)!!」」」



三人の体全体に、これまでとは比にならないほどの魔力が濃縮される。魔力の奔流が光の渦となり、彼らを包み込んだ。ただそれだけなのにも関わらず、大気が震え、地鳴りが起こる。


リュートは銀の光に。アイギスたちは炎の渦になり、それらは大きさを増していく。


サアッ――と晴れていき、巨大な姿が露になる。




龍神――銀の鱗と黄金の瞳を持つ、神々しさを感じさせる。竜としてはそれほど大きくはないが、空に佇むその姿は、威風堂々とした竜の王。


赤皇竜――紅蓮の鱗と巨大な体を持ち、鋭く長い、二本の牙がギラギラと輝いている。同じく黄金の竜眼であり、頭部には全てを貫けるかのような、立派な一角がある。


炎の精霊王――ヒトよりも三倍近い大きさとなるが、姿かたちはそれほど変わっていない。しかし、全身から炎が溢れ、服装もより過激なものになる(胸を帯状のものでサラシ風に巻くなど)。色っぽい姿と裏腹に、全身から尋常ではない殺気を撒き散らしている。


どちらかと言えば、サラマンディアの方がやる気のようだ。



『その姿――やはり、あなたは龍神様であったか。だが、それならばあの強さも納得だ。我らを相手にあそこまで余裕を見せるもの等、普通はいないからな』

『それほど余裕じゃなかったよ?結構大変だったからね、あれ」

「ご謙遜をおっしゃるな。まあいい、たとえあなたが龍神様とはいえ、これは真剣勝負。加減はしないぞ!』

『当然!そうでなきゃ面白くないでしょ!!』


2体の竜は、翼を羽ばたかせて一気に距離を詰める。


リュートは体を一回転させて尾をしなる鞭のようにしてぶつける。アイギスは頭上の鋭い角で敵を穿こうとする。


巨大な衝突音が空に響き渡り、両者のあいだに火花が散る。そこに、サラマンディアも加わる。


「二人だけで楽しむなんてずるいわよ!私も混ぜて頂戴!!」


サラマンディアはリュートたちに比べればかなり小さいが、それでも精霊王だ。力は化け物なのである。

彼女は突進を仕掛けると同時に体を回転させる。炎の渦となり、まるで銃の弾丸のように、スピードも貫通力も底上げする。


炎の弾丸と化した彼女の力がアイギスの力に加わり、若干、リュートを退かせる。


『――さすがだね……でも、それでも僕が勝つよ!!』


リュートは尾にさらに力を込め、アイギスとサラマンディアを地面へ叩き落す。地面との衝突に、大地が揺れ、木々が倒れる。


『ぐうッ――……この体に戻ってもなお、これほどまでにダメージを与えられるとはな……』

「当然よ、相手はそれ以上なんだから」

『それもそうだな・・・ではもう一度行くとしよう!』


アイギスたちは上空にて堂々と佇んでいる竜を睨むように見上げると、足に力を込めて一気に上昇する。そのせいで、落下の影響で陥没していた大地がさらに窪んでしまったほどだ。


アイギスはリュートの腕を掴むと、開いた腹へと攻撃を仕掛ける。


『喰らえ、赤皇竜の、息吹!!!』


アイギスの巨大な口が開かれ、そこから炎の息吹が浴びせられる。間近で受けてしまったために、リュートもさすがにただでは済まなかったようだ。リュートの体全てを飲み込むほどの巨大な炎は、鉄壁を誇る龍神の鱗にダメージを与えられるほどのものだったのである。


「まだまだ、終わってないわよ!!」


サラマンディアが、一瞬にして巨大な紅焔の剣を創りだす。全長で10mはありそうなほど巨大な剣、それをリュートへと向けて投げ飛ばした。その剣はリュートへと突き刺さった。そして、彼の体内を焼き尽くす。


『ぐ、ガァアぁッ!!?』


そのあまりの熱さにくぐもった悲鳴をあげるリュート。これはいけるか?とアイギスたちが期待を寄せたその時、リュートの翼が大きく一度、はばたいた。


風属性の魔力を翼に纏わせ、大きく一仰ぎしただけ、それだけでアイギスたちの魔法を散らせ、彼らを吹き飛ばす。そして、そこには無傷のリュートの姿が。


『――なるほど、これが炎で焼かれるということか……。なかなかできない体験だったよ。それに、そっちは本気の魔法を使ってきたんだ。こっちもそれ相応の魔法を見せてあげるよ』

『――!?舐めないでいただきたい!次の魔法こそ、我らの最大にして究極の魔法だッ!!』


三人が全員とも、魔力を上げ、練りこんでいく。周囲が地鳴りを上げ、ガタガタと揺れ出す。決着をつけるつもりなのだ。


アイギスが口内に魔力を集め、炎へと変えていく。ここまでは先ほどのブレスと同じだ。アイギスは発射させるのではなく、口の前で留め、肥大させていく。そこにサラマンディアの全力の魔力が加わり、紅蓮の紅玉は山程の大きさへとなっていく。


それだけではない。近くの火山からマグマを集め、それらも加えていくのだ。もはや、太陽と変わりないほどの熱量を持っているその紅玉は、空を真っ赤に初めている。



『へえ、ブレスってそんな風に貯めることができるんだ。これはいいことを知ったね。……それじゃあ、次はこっちの番だよ』


呟き、リュートは魔法陣を展開させる。その数七つ。


『みんな、出ておいで……七龍召喚(ドラゴンパレード)!!』


その名を叫ぶと同士に、魔方陣一つ一つから魔力が形を持って召喚される。それは、意志を持った七色の龍たち。リュートはさらに続ける。


『七つの輝きよ、空に集いて世界を照らす虹となれ!【虹龍召喚(アルカンシエル)】』


七体の龍が一箇所に集まり、やがて、一体の大きな龍となる。龍神とは違った神々しさを持つ虹色の龍は、大きく咆哮を上げた後、リュートの横へと佇む。


『新魔法と言えるかはわからないけど、この魔法がさらに完成へと近づいた“証拠”を見せてあげるよ』


そう言い、リュートもまた、口内へと魔力を貯める。おかしいのはこの後だ。なんと、虹龍までもが魔力を一箇所に集めだしたのである。擬似的生命体として魔法で生まれた虹龍が、本物の龍のように魔力の操作を行なっているのだ。しかも、集めている箇所が口元なのである。



『それが一体どういうものなのかは後ほどお聞きしよう。今は、決着をつける時だ!!』

『それじゃあ、いこうか……!!』




「『玉炎・焔陣砲!!』」


巨大な紅玉が、大砲のように放たれる。まっすぐにリュートらへと放たれたそれは、リュートからすれば太陽そのものが迫ってきているように錯覚させる。


しかし、リュートは自分が負けることはないという絶対の自信を持っている。


『双神龍の……息吹ッ!』

「グルアアアアアアッッ!」


こちらからは、銀と虹のブレスが放たれる。それらは一つとなり、より強大な竜の息吹(ブレス)となってアイギスたちへと迫る。




両者の放った魔法は空気を切り裂き、大地を焼きながら、衝突した。

そして、世界は一瞬、目も眩むほどの光に照らされた――――。

予想以上に長くなってしましました。グダグダになっていないか心配です・・・。


それはそれとして、虹龍はどこまで成長(進化?)するのでしょうか?そちらもお楽しみに!


感想、お待ちしております。

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