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龍神VS黒皇竜!?

「っと、ここらでいいかな」

「ん。広くて、闘い易いと思う」


新たな家と、共に住む家族ができた数日後、彼らは皆、大陸最東部の海岸に来ていた。


というのも、昨日、メアリーからの申し出があったのだ。


「リュート様、明日、私ともう一度戦って欲しい」

「……理由を聞いても?」

「この前の試合は、邪魔が入って決着がつかなかった。だから、ちゃんと決着をつけたい」


メアリーは先日の試合の結果に満足していないようだ。しかし、それはリュートも同じである。


リュートは龍神となり、強大すぎる力を得た。しかし、リュートはその力を何かにぶつけたことはない。当たり前のことだが、龍神状態のリュートに敵う強さの敵がいないのだ。


しかし、それでもリュートは元高校生であり、男でもある。強さに対する憧れも大きいし、なぜか求めてしまう。


故に、リュートもメアリーとの再戦を求める。自分の知らない魔法を知るために。より高みへと上るために。


「私も竜族の一端のものとして、力を求める。だから、圧倒的な強者との闘いは望むとこ」

「……わかった、闘おう」


よって、リュートはメアリーの願いを聞き入れた。しかし、それに待ったをかける者もいる。


「ちょ、ちょっとお待ちください!メアリー様もご主人様も、なぜそれほどまでに闘いを望むのですか!?」


ターナリアだ。焦った様子の彼女は、二人の話についていけないようだ。その問にメアリーが答える。


「それは、私たちがドラゴンだから」


しかし、答えとも言えないメアリーの発言に、言葉を失うターナリア。助力を願おうと周りを見るが、ユスティは崇拝している龍神の勇姿を見れると頬を染めており、ウルとカレンは興味心身といった感じだ。

さらには、珍しいことにイレーナまでも若干興奮しているように見える。


助けはいないと悟ったターナリアは、はぁ、と溜息を一つ吐き、あきらめたかのように一歩下がる。それを見たリュートとメアリーは、話を終える。


「それじゃあ明日、東の端の海辺でやろうか。あそこは人もいないと思うし、やりやすいと思うよ」

「ん……」


小さく首肯し、了承の意を見せるメアリー。


そして、話は冒頭へと戻る。




「それじゃあ、さっそく始めようか」

「ん……」


二人は観客となる5人に魔力結界を張り、海上へと繰り出す。この辺りの魔獣は低ランクばかりであり、二人の溢れんばかりの闘気に恐れて逃げている。


「リュート様、今度は本気できてほしい」


メアリーの言う本気への含みに気付き、難しい顔となる。しかし、メアリーは真剣に望んでいるため、それに応えなければいけない。


「わかった。じゃあ、本気でいくからね」


その答えに満足したのだろう。メアリーの表情が柔らかくなっている。そして、二人はユスティを向く。


その視線の意味を解したユスティは、右手をまっすぐ上へ上げ、勢いよく降り下ろした。


開戦の合図だ。


始まりと同時に、メアリーは魔力を全身から漲らせ、リュートの前に一瞬で移動、と思わせて左に移動した。死角からの闇を纏った強烈な左。しかし、リュートはいとも簡単に防いでしまった。


防いだ瞬間、今度はメアリーが残った右手から『闇の波動』を放った。


普通なら、目の前で放たれた魔法に対応することはできないだろう。しかし、リュートは身体をひねり、メアリーの内側に入ることでかわしたのだ。そのまま回転の勢いを利用した肘鉄を繰り出すリュート。


メアリーは肺の中の空気を吹き出しながら、後方へ吹き飛んだ。


リュートは吹き飛んだメアリーよりも速く動き、彼女の腕を掴んで海に投げ入れた。


大きな水柱とともに海へと投げ飛ばされたメアリー。やがてそれは大きな津波となり、ユスティたち観客を襲うが、魔力結界に守られているため無事である。


「す、すげぇ……二人の動きが、まったく見えなかった……」

「あれが、龍神と黒皇竜の闘い、か……」


ウルとイレーナが二人のあまりの闘いに寒気を感じた。ターナリア、カレンは声もでない様子だ。


それもそのはず。今の二人の攻防は、開始わずか数秒の間に起こったことなのだ。これだけでも二人の異常さがわかるだろう。


しかし、ユスティが一言伝える。


「あの方たちにとっては、まだ小手調べの段階ですわ。本番はこれからですわよ」


その言葉はターナリアたち4人にとって、信じられないものだった。この戦いが、まだ手加減したものだとは思いたくなかったのだ。


そんな彼女たちの気持ちを変えるかのように、再び戦いは始まった。


リュートの足元から多くの影が襲ってきたのだ。これは大会でも見た「影戦士(ドッペルゲンガー)」だ。


「それなら簡単に対応できるよ!」


そう言い、リュートは周囲の影戦士を魔力の放出のみで消し飛ばす。そしてメアリーを探そうとしたが、


「っ!?」


背後から消したはずの一体の影が蹴りを放ってきたのだ。その気配を感じ取ったリュートは素手でつかみ、逆に蹴り返した。


しかし、その蹴りは影をすり抜け、その影は距離をとって形をとる。メアリーだ。


「これに気づくなんて……さすがリュート様」

「まさか、影自身になれるなんて……すごい魔法だね」


そう、メアリーは影戦士を放ったあと、自身も影へと変化し、影戦士に混じって攻撃を仕掛けたのだ。


「じゃあ、これでいく……『解除(リレイズ)』」

「僕もそうしようかな――――『解除(リレイズ)』」


その瞬間、二人を大きな光が包み込み、徐々に輪郭が変わっていく。光がおさまり、人ではないものが現れる。それはすなわち、銀と黒のドラゴンの姿に。


ユスティたち5人は皆、二人(二頭?)の姿に圧倒される。


その神々しいとさえ感じる佇まいに。


その禍々しいとまでいえるほどの、圧倒的な力に。


もはや声も出せず、その場に立ち尽くすことしかできない。


『それがメアリーの本当の姿か。かっこいいね!』


メアリーの大きさはリュートより一回り大きく、鱗は漆よりも漆黒なツヤで輝いている。瞳はリュートと同じく黄金で、縦に裂かれた瞳孔がギラギラとしている。尻尾には大きな刺が連なっており、なんでも切り裂けそうだ。


まさに、闇の竜皇にふさわしい姿だ。


『それじゃあ、いく!』


そのまま、巨大な体躯には似合わない素早い動きでリュートに近づこうとするメアリー。今度は先ほどと違い、縦横無尽に動き、リュートに定められないようにする。


負けじとリュートも全速力でメアリーに体当たりする。ただ体当たりをするだけでなく、メアリーの技、「影戦士」を同時に発動させ、メアリーの動きを封じようとした。


『私の魔法……!?さすが、リュート様』


驚きはするものの、こちらも「影戦士」を発動し、リュートの影とぶつかり合う。


先ほどの人型ではなく、今回はドラゴンの形だ。ただ影がぶつかり合うだけで、その衝撃波が凄まじい威力で周囲を襲う。


しかし、その衝撃波が結果的にメアリーの動きを限定させ、リュートの進行と合わさってしまう。


「グルルァァァァアアアアア!!!」

「ガァァァァアアアアアア!!!」


お互いに咆吼し、そのまま頭突きでぶつかる。先ほどとは比べ物にならないほどの衝撃波がうまれ、大津波を起こし、上空の雲が吹き飛んでいった。

 

競り勝ったのはリュートだった。一回り大きな巨体を押しのけ、反り返ったメアリーの体へと尻尾を叩きつける。


『爆砕閃!』


尾を叩きつけた瞬間、その部分が爆発し、メアリーの大きな体の内部まで爆炎が届く。


『グウウゥゥッ!?』


初めて体の中を焼かれるという体験に、メアリーはくぐもった悲鳴をあげる。しかし、リュートはまだ攻撃の手を止めない。


七龍召喚(ドラゴン・パレード)!』


そう叫んだ瞬間、リュートの周囲から七つの魔法陣が浮かび上がり、それらから赤・橙・黄・緑・青・藍・紫という七色の龍が出て来た。


それぞれが意思を持ったかのように自由に動き、メアリーに襲いかかる。いわゆる「擬似的生命体」というやつだ。


『ぐう……。な、何?それはドラゴン、なの?』


メアリーが驚くのも無理はない。この世界のドラゴンとは、地球で言う西洋竜というものだ。リュートの召喚したドラゴンたちは、みな東洋龍であり、翼のない蛇のような細長いドラゴンなのだ。


見たことのないドラゴンたちからは今までにないほどの魔力を感じ、全力で避けるメアリー。


前から後ろから、さらには横からも襲いかかってくる七頭の龍に、メアリーは躱しながらも魔法で反撃する。


しかし、どれだけ攻撃しても、龍たちは体をくねらせて簡単によけてしまうのだ。やがて、メアリーは龍たちの攻撃をさばききれなくなってきた。


『さすがは黒皇竜。これでも致命傷にならないなんてね』


リュートは冷静にメアリーの動きを見定めていた。そして、攻撃がかすり出した時、新たな魔法を発動させる。


『七つの輝きよ、空に集いて世界を照らす虹となれ!【虹龍召喚(アルカンシエル)】』


メアリーを襲っていた七頭の龍たちが一斉に集まり、融合していく。すべての龍が融合し、そこには虹色に輝くふた周りも大きな龍がいた。その龍はリュートやメアリーよりもさらに大きく、一つとなった魔力もメアリーの魔力より巨大である。


『う……そ……』


メアリーはそのあまりの魔力に、そして、虹に輝く大きな龍に、戦闘中にも関わらず動きを止め、見入ってしまっている。


それはユスティたちも同じだ。


「あ、ありえねえだろ……。あたしは夢でも見てんのかい?」

「こんなの、もう、人がどうこうできるレベルではないぞ……」


感じる力に恐れおののくウルとイレーナ。


「「・・・・・・」」


カレンとターナリアは、ただただ、リュートたちの闘いを見ることしかできない。言葉に表せないのだ。


「あれは、まるで歴史に語られている聖戦のようですわね……」


ユスティがその光景に、大昔にあったとされている聖戦に重ね合わせる。


彼女たちに共通しているのは、皆、二頭の龍に魅入ってしまっていることだ。


銀に輝く、美しさを凌駕したかのような龍と、その龍よりもふた周りほど大きく、見たことのない形をしている虹に輝く龍。その二頭が漆黒の大きな竜と対峙している。 


それはまるで、神話の物語を見ているかのようだ。


『よそ見はいけないよ!』

『ッ!?』


メアリーが見入っているその瞬間に、リュートは瞬速で彼女の背後に移動、挟み撃ちを仕掛ける。


それに気づいたメアリーは回避しようとするが、リュートの方が速く、首元に噛み付かれてしまう。その顎の力はやはり強力で、彼女の硬い鱗が悲鳴を上げている。


そのままリュートは彼女を振り回し、ある方向へと投げ飛ばす。


その方向とは、虹龍のいるところだ。メアリーはそれに気づいたがすでに遅く、目の前にまで迫っていた虹龍に体全体を飲み込まれ、体を貫通される。


「グガアアアアァアアッッ!?」


体の全てを襲う、尋常でないダメージに、悲痛な声を上げるメアリー。その声を聞いて、リュートも顔を歪めるが、これはメアリーたっての真剣勝負なのである。ここで情にかられ、やめることは逆に失礼なのだと思いなおす。


メアリーはなんとか体制を維持しているものの、もはや体はボロボロの満身創痍であり、もはや空を飛んでいることも辛いだろう。しかし、それでも目は諦めておらず、まだまだやる気だ。


『グフッ!ハァ……ハァ……。まだ、終わってない。次で、最後……」


しゃべるのも辛そうなメアリーは、口に残りの魔力を溜める。それを見たリュートも、彼女に応えるかのように口に魔力を溜める。


『黒皇竜の……』

『黒・龍神の……』


『『息吹ッ!!』』


両者、一斉にブレスを放ち、中央にて激しくぶつかり合う。闇と闇のブレスのぶつかり合い。それは大気を震わせ、海を割り、木々を吹き飛ばす。


ユスティたちを守っていた魔力結界もその威力の衝撃に耐え切れず、ついに破壊されてしまう。


「「「きゃああああっ!?」」」

「わぁぁああああっ!!」


ユスティら5人は吹き飛びかけるが、リュートが予備として張っていた魔力結界が発動し、再び彼女たちを覆うことでなんとか無事だった。


両者の闇のブレスは均衡をたもっていたが、メアリーは苦しそうにしているのに対して、リュートはまだまだ余裕そうだ。


そのため、リュートはさらに魔力を上げ、彼のブレスが一回り大きくなった。


結果、耐え切れなくなったメアリーのブレスが負け、彼女のブレスを貫いてメアリーへと襲いかかる。


当たるっ!?とユスティたちが思った瞬間、虹龍がメアリーを背中にのせ、回避した。


標的を失ったリュートのブレスはそのまま地平線の向こうまで進み、やがて海へと衝突した。その瞬間、大爆発と共に海に大穴が開き、今日何度目かの大津波となって海岸へと襲う。


『水流操作』


しかし、今回はリュートが魔法を使い、流れ込んでくる海水を操作して押し戻した。そのため、ユスティたちを津波が襲うことはなく、新たにできた大きな穴に渦となって流れ込んでいく。


『ふう……。あッ!メアリー!』


一息つき、メアリーのことを思い出す。彼女を見てみると、虹龍によって海岸へと運ばれたようだ。再び「人身変幻」を使って人へと変身し、急いでメアリーの元へと向かうリュート。


彼女のもとにはすでに魔力結界から解放されたユスティたちが揃っている。皆、メアリーに心配そうな視線を向けている。やがて、近づいてくるリュートに気づいたようだ。


「リュート様!メアリー様がッ!?」


ユスティが焦ったような声を出す。見ると、涙が流れている。幼少より度々付き合いのあるメアリーが無残な姿で横たわっているのだ。無理もないだろう。


そんな彼女の様子に胸が痛みつつ、リュートは急いでメアリーに回復魔法をかけた。


「すぐ治すからね、メアリー。天使の癒し(エンジェル・ヒール)


リュートの両手から発せられた暖かい光は、メアリーの大きな体を包み込み、彼女の傷を癒していく。傷が全快するまでさほど時間はかからず、やがて、メアリーは目を開けた。


『ん……。あれ、リュート様……?』


彼女の目には、最初にリュートが映ったようだ。メアリーは体をゆっくり起こし、リュート同様、「人身変幻」を使って人型へとなった。周囲を見回し、状況を理解したようだ。


「そっか、私、負けたんだ……」


そのつぶやきは悲しみよりも悔しさが含まれていたが、表情はすっきりした感じだった。


「リュート様、やっぱりすごい。闇を司る私に、闇のブレスで勝つなんて」

「いや、まあ……」

「それに、虹の見たことないドラゴンもすごかった」

「ああ、あれはお気に入りの魔法なんだ。でも、あの魔法、かなり使えるね……」


七竜や虹龍は、ある程度の自我を持った擬似生命体だ。しかし、結局は魔法のため、リュートの意思に沿った行動をとる。リュートのブレスがメアリーに当たりそうになったとき、虹龍はダメージを与えないよう、優しくメアリーを背に乗せた。かなり使えるといっていい。


「それに、リュート様、やっぱり手加減してた。私の目は誤魔化せない」

「あ、いや、それは……」


誤魔化そうとするが、メアリーのジト目は止まない。やがて観念したリュートは、自分の非を認め、メアリーに謝罪する。


「ごめん、メアリー」

「ん~……」


何かを考え込むメアリー。やがて、何かを思い付いたのか、足早にリュートへ近づいてくる。リュートの目の前で立ち止まり、背伸びをする。そして



リュートの唇へとキスをした。



それは一瞬の出来事であり、その場にいる全員が、思考停止となった。


やがて、頭が理解する。


「「「なあああああっ!?」」」


突然のキスを目の当たりにし、女性陣は顔を赤くして叫ぶ。ユスティにいたっては、メアリーに抗議するかのような視線を向けるが、当の本人は顔を赤くも染めながらもそっぽを向き、知らん顔である。


された方のリュートはと言うと、未だに耳まで赤く染め、思考停止の状態である。


こうして、龍神VS黒皇竜の闘いは終わりを迎えた。最後にとんでもない出来事を起こして。





余談ではあるが、この日、大陸中の多くのものが尋常じゃない魔力を感じとり、大気の震えや地鳴りに恐怖したという。このあと数日にわたって、魔獣たちはまったくといっていいほど動きがなかったそうだ。


原因を探るため、調査隊や騎士団などが向かったが、原因の場所には凄まじい闘いの跡しか残っていなかったらしい……。



やっと更新できました。今回はドラゴンどうしの対決でしたが、どうだったでしょうか?私としては、なかなか良くできたと思うのですが……。


感想など、よろしくお願いしますm(._.)m

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