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買い物

「おはようございます、ダナさん」

「ああ、おはよう。昨日はよく寝たようだねぇ」


リュートは今、一階の酒場にいる。あれからずっと眠っていたらしく、もう朝の8時をすぎている。どうやら人間になると、龍神とはいえ睡眠は人並みにとるらしい。


「朝飯はどうする?」

「じゃあ、パンだけください。あまりお腹は減ってないんです」


そう言って席に着くリュート。さすがに二日連続で朝食を抜くのはまずいと思い、パンだけでももらう。


「今日はどーするんだい?」

「今日は少し買い物に行きます。服が欲しくて……」


ああ、と納得するダナ。やはりダナも、リュートの格好に疑問を持っていたらしい。


リュートは、先日トールに紹介された店に行くつもりだ。金欠のリュートにとって、値段が安くなるのはありがたいのだ。


「じゃあ、行ってきます!」


リュートは意気揚々と店を出た。向かうは服屋「ルナルーク」である。







 ***



「ルナルーク」は王都の中心・貴族街に近く、周辺の店と同じように少し高級そうな店だ。中に入ってみるが、開店してすぐということもあり、リュートのほかに客はいなかった。


商品の服は思ったとおり、オシャレで高そうだ。今のリュートの服装からして、間違いなく場違いだと言わざるを得ない。とりあえず、呼びかけてみることにする。


「すみませーん!トールさんの紹介できましたー!誰かいませんかー?」


するとすぐに、店の奥から「はーい」という声と共に、一人の女性が現れた。どこかトールに似ている。


「すみません、お客さ……ん……」


彼女はリュートを見たとたん、固まった。目を丸くし、口を大きく開けている。


「どうしま『もッッッたいないッ!!』……え?」


突然の叫びにぽかんとするリュート。


「もったいない!!なんでそんな服を着てるの!?あなたにはもっと似合う服があるでしょう!?ちょっと来なさい!!」


トールとほとんど同じリアクションの女性は、無理やりリュートを店の奥に連れて行く。


「あっあの……?」


リュートは声をかけようとするが、彼女は真剣に服を選び始め、ためらってしまう。


「これは……違うわね。じゃあこれは……?」


とブツブツ言いながら、服をとってはリュートに合わせ、別の服をとっている。そのあまりの真剣さに、リュートは口出ししないことを決めた。


「よしッ!これがいいわ!じゃああんた、ちょっとこれを着てみなさい!!」


ようやく決まったらしい。選んだ服をリュートに渡し、更衣室に押し込む。困惑しつつ、彼女のあまりの気迫に、リュートは言うとおりにしてしまう。


やがて、着替え終わったリュートは更衣室のドアを開ける。それを見て満足そうに大きく頷く彼女は、自分のことのように嬉しそうだ。


「うんッ!さすが私!ベストチョイスね!!」


リュートの格好を説明しよう。上は白のロングコート。丈は膝上あたりまであり、表面は非常に滑らか。前は腰の上あたりまで閉じており、所々に蒼いラインが入っている。下は黒のジーンズのようなもので、上下、黒と白のコントラスが非常にマッチしている。靴は黒の革靴だ。


ちなみに、後ろ髪は昨日と同じで縛っている。


誰もが振り向くする美青年が完成した。


「これ、すごくいいんですけど……すごく高そうですね」

「もちろん高いけど、トールの紹介って言ってたわよね?なら、2割引でいいわ。金貨6枚ね」

「本当ですか!?ありがとうございます!」


ホッと安心して一息いれる、その瞬間、彼女は真顔になっていった。




「ところで……あなた誰?」




今更である。どうやら正気に戻ったらしい。




「僕はリュートです。昨日トールさんにこの店を紹介されて来ました」

「私はポーラ。トールの姉で、この店の店長をしてるわ。さっきはごめんなさいね?あなたの古びた格好を見たらつい」


失礼な店長である。もはや客に対する態度ではないのだが、それこそ今更だろう。


「はあ、まあいいです。いい服を選んでくれましたし」


そう、リュートは最初こそ戸惑ったものの、満足している。服のセンスもいいし、値段も予定内の出費で済んだのだ。満足しないわけがない。


「じゃあ、僕はもう行きますね」

「もう行くの?じゃあ、また服が欲しくなったらうちに来てね!」



リュートは最後に「もちろんです」と言いながら、店を出た。



 




 ***



服選びは意外と時間がたっていたらしく、もう昼前だ。


現在リュートは街を散策していた。多くの女性の熱い視線を前から後ろから受けているが、持ち前の図太さと鈍感さでまったく気にしていなかった。


美味しそうな臭いのする屋台を見れば買い、興味の惹かれるものが売っていれば、店を物色する。


思いっきり観光を楽しんでいた。


そんな時、偶然にもダントに出会った。


「よぉ、昨日ぶりだな」

「こんにちは、ダントさん」


リュートはダントと軽く挨拶を交わし、談笑する。そんな時、ダントがリュートに聞いてきた。


「そうだ、お前は来週の剣闘大会に出るのか?」

「剣闘大会?」

「なんだ、おめえ、知らねえのか?」


ダントが言うには、剣闘大会は毎年闘技場で行われている大会のことらしい。


いつもは優勝賞金が金貨50枚らしいのだが、今年は白金貨10枚もでるらしい。


なんでも今年は第二王女のユスティ姫が成人である18歳の誕生日らしく、誕生祭も兼ねているかららしい。


白金貨10枚といえば、日本円で一千万円、大金である。金欠のリュートからすれば、喉から手が出るほど、とは言わないが、ぜひともゲットしたいものである。


「なんだか面白そうですね。その大会は誰でも出場できるんですか?」

「もちろんだ。お前の魔法ならいいところまでいけると思うぜ?登録はギルドでもできるから、出てみたらどうだ?」

「出ようと思います。教えてくれてありがとうございました。」

「おう!頑張れよ!」


リュートはダントに礼を言い、ギルドに向かって歩き出した。






 ***



大会の出場登録はすぐに終わった。ただし、登録するときにいろいろあったのだが……。



リュートの変わりようにカナやミーナを含めたギルド中が唖然としたり、リュートが大会に出場すると聞いて二人が慌てたり、など。



最終的に、リュートが「大丈夫です、勝てますから」とゴリ押しで終わらせた。普通ならFランクのリュートが勝ち進むことなどできないのだが、その時のリュートは有無を言わせない雰囲気を出しており、渋々了承した。







 ***


リュートは現在、「赤竜の安らぎ亭」の自室にいる。


「二人が心配してくれたのは嬉しいけど、剣闘大会なんて面白いもの、出ないわけにはいかないしなぁ」


ベッドの上で、リュートは大会に期待をよせている。


ワクワクで眠れない、なんてことはなく、大会のことを考えているうちに、いつの間にか眠りについていた。

服を説明するのって難しいですね。

絵を載せることができればいいのですが・・・

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