Ⅶ
次の日。アルフレッドは大量の本に囲まれながら勉強していた。
流石に今すぐには無理であると、あの後スティーブンを追いかけて説得した。
おかげで一週間時間をもらえたのだが、その代わりにダンスまで教えることになってしまったのだ。
ダンスなんて覚えてませんよと抗議したが、お前がそれほどの宮廷の礼儀作法を覚えているのなら、ダンスも覚えているはずだと言い返されてしまった。
自分が何者であったかわからないアルフレッドは反論できなかった。踊れる自信は全くない。だが、全てはディアナに宮廷で恥をかかせないためである。
気合を入れなおし、彼は再び机に向かった。
*
アルフレッドが父様から呼び出されてから一週間たった日のことである。ディアナは教師の姿を見て驚いていた。
今日から宮廷の作法とダンスの指導に家庭教師が付くのは知っていた。
そうして、私の部屋の扉を開けたのは良く見知った青年であった。
最近父様が彼の仕事もしているな、と思ったらアルフレッドが家庭教師もすることになったからであったのか。
確かに、彼の動作は何処か優雅で貴族的なのだ。彼は少なくとも男爵位以上の家柄出身であるのだろう。
あまり新しい使用人を置きたがらない我が家にとって、彼の存在はとても助かる。
「今日から私、アルフレッドがあなたの家庭教師もさせてもらいます。」
「家庭教師ってあなただったのね…。」
「ええ。私ではご不満ですか?」
そう呟いたディアナにアルフレッドは眼鏡をくいっと指であげてから答えた。
普段眼鏡を掛けぬ彼のそんな姿に、心がはねたのを誤魔化すように彼女は勢いよく首を振った。
「いいえ。貴方なら心配ないわ。宜しくね。」
それはよかった、と微笑む彼はディアナの様子に気付いていないようである。
「お嬢様の礼儀作法はほとんど問題ありませんから、必要なのはダンスと宮廷でのしきたりでしょう。まずはダンスですね。ステップ自体は教わっておいででしょう?」
アルフレッドの問いにディアナは頷く。
「では、私を練習相手として踊ってみますか。…ここでは狭いですから、広間に向かいましょう。」
今回は短め。
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