Ⅵ
この頃ホントに暑くなってきましたね。執事はバンパイアも二章にはいりましたよ~
アルフレッドがアルバート家に来てから二か月たち、執事の仕事もようやく一人前にこなせるようになった。そんなころ、アルフレッドはラルドア国王の要請で、一週間王都に行っていたスティーブンに話があると呼び出された。一体何の話かわからないままスティーブンの書斎に向かったアルフレッドは唐突な頼みに慌てた。
ディアナの家庭教師として彼女に礼儀作法を教えてほしい、と言われたのだ。
「はい?」
驚きのあまり二か月前と同じ反応を返してしまうアルフレッドにスティーブンも二か月前と同じような返事をする。
「記憶が戻るまででいい。ディアナの家庭教師をしてくれないか?」
一か月仕事をしていたとはいえ、こんな見ず知らずの人間に執事はともかく最愛の娘の家庭教師など頼んで良いのだろうか?そんな疑問から返事ができないアルフレッドにスティーブンは話を続ける。
「ディアナやトム、ジュリアから君の働きぶりを聞いたよ。俺は君みたいな執事が迎えられて幸せだね。」
「なぜ私に家庭教師をおたのみになるのですか?」
そう聞かれたスティーブンは視線をそらせて少し黙っていた。その様子を見てアルフレッドはアルフレッドは質問したことを後悔した。絶対なにかあったのだろう。
「…アーサーにディアナを宮廷に出せ。って言われたんだよ。ああ、アーサーっていうのは国王陛下のことだよ。俺の弟のはずなんだが、最近立場が逆転してる気がするんだよな。まあ相手が国王だから仕方ないか。」
どんどん話がそれていくが、アルフレッドは気にしないことにした。この二か月スティーブンの話がそれるたびにちょっとずつ修正しようとしてきたが、修正しようとするたびにどんどんそれていくのがオチなのだ。本題にもどるまで待った方が早い。
「ああ、そうそう。なんでかって話だったな。」
「はい。」
「アーサーにディアナを宮廷に出せって言われたって言っただろう?ディアナには最低限の礼儀作法を教えてはいるが、宮廷に出るにはもう少し詳しく教えなくてはならないんだ。それで、君の礼儀作法は完璧だって言われてたから、本当かなって思って見てたんだよ。そしたら君の礼儀作法は本当に完璧な上に教え方もうまい。もう君に頼むしかないじゃないか。」
アルフレッドは何も言えなかった。こんな適当な家庭教師の決め方があって良いものなのだろうか。
「そうそう。王都で礼儀作法に関する本もたくさん買ってきた。これを参考にしてくれ。…君になら
できると思うんだよ。やってくれるかい、アルフレッド?」
こんな頼み方をされて断れる人間がいるだろうか。アルフレッドは首を縦に振ることしかできなかった。
「いつ彼女を社交界デビューさせるおつもりですか?」
「次の社交界シーズンの始めに国王主催の大舞踏会があるんだ。そこでのつもりだよ。」
社交シーズンは春にある復活祭からである。残り時間はあと三か月。何とか間に合わせねば。
「俺も当分この屋敷にいる。君の執事の仕事の半分はやっておくから、午前中は執事の仕事をして午後はディアナに礼儀作法を教えてやってくれ。よろしくな。」
そういってスティーブンは部屋を出ていき、後には本の山と疲れた顔のアルフレッドが取り残されたのだった。
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今回は少し長めでした。途中で、きれなかったもので