彼との遭遇。
あなたは宇宙人の存在を信じますか?
私は信じていません…でした。そうさっきまでは。
「で、貴方は宇宙人なんですよね?」
「ああ、そうだな。宇宙から来たからな。だがお前も俺にとっては宇宙人だぞ。驕るなよ地球人」
お話によるとこの方宇宙人らしいです。
宇宙人と言えばでっかいチャーミングな黒色おめめに細長い手足、グレイのボディなんて誰が言ったのか、目の前にいるのは身長にして約2メートルはありそうな大男。しかもゴツくて態度もデカイ。
平日の昼間に窓の外がいきなりピカーッと光ったかと思うと次ぎにドカーンと爆音。驚いて飛び出してみると庭に穴とでっかい固まりが!何じゃこりゃー隕石?N○SAに電話か!?はしゃいでいたら中から大男、で日本語で話しかけてくるものだから信じてしまうのも仕方ない事だと思う。
「やっぱりNA○Aに連絡した方がいいのかな…いやその前に無難に警察か...」
「おい!人の話を聞いているのか地球人」
「あ、はい。聞いていますとも宇宙人殿」
思わず、敬礼までしてしまう。こんな不審者に強く出れない自分が悲しい。
「まあいい。お前には感謝している。外部の緊急用開閉装置を入れなければ脱出出来ないところだったからな」
あれ、私そんなボタン押したっけ?
「はあ…それはどうも」
「ちょっと操作を誤ってしまってな。だがお前は本当に運がいい」
「へ?あの、話が読めないんですけど…」
「飲み込みの悪い奴だな。命を助けてやると言ったんだ。特別だぞ」
は!?
俺様宇宙人様と言えどもマイライフについて干渉されたくない。断固拒否である。少しずつ距離を離すように後ずさる私。
「何を逃げているんだ?ん?」
こんなにも人(宇宙人だけど)は意地悪く笑えるんだと思えるほど悪い笑みを浮かべた男は私の腰を掴んだかと思うと、ぐいと引き寄せ抱き上げる。
うわーたっかーい☆なんて思わないよ!
そろそろ最初の浮かれ気分はどこへやら身の危険を感じ脂汗で背筋が薄ら寒い状態だ。
「華奢だな。想像していたよりも…」
え?今何か言いました?
ボソっと何か呟くと私を抱いたままつかつかとでっかい固まり(おそらく宇宙船)に近づき、空いたままになっている扉から乗り込むと扉を閉める。
って、ちょっとまてえええええええええええええええええ!!!
あの、これ拉致ですよね?え、え、え??
パニックに陥っている私を置いてきぼりに操縦席で操作を始める男。膝の上にちょこんと乗ったまま目の前の大型画面を見上げると、見慣れた我が家の庭から忽ち星々が爛々と輝く宇宙へと映像が切り替わる。
まじか、マジなのか。
余りの出来事に私の脳は機能停止状態に。
それから数分いやもしかしたら30分は経っていたかもしれない。
「おい、着いたぞ」
男に乱暴に揺すられ意識が戻ってきた。
「あの...どちらに着いたんでしょうか?」
「聞いていなかったのか?俺たちアルフェリア人の宇宙船カシュタルにだ」
「そうですか。では、私はいつ地球に帰れるのでしょう?」
「なんだ死にたいのか?」
何故そういった返答になるのか私に分かりやすく30字以内で教えて欲しい。頭沸いてるんですか?
「死にたくないです。でも帰りたいです」
あくまで丁寧な口調であるが言いたい事は言わせてもらうぞ。
「だから帰ったら死ぬと言っている」
「どういう事ですか」
「あの星は実験の後に破壊する予定だからだ」
やっぱりこの男頭が沸いてるんだなそうに違いない。じゃなきゃこんな危ない発言しない。
私が黙り込んだのをどう解釈したのか、男は話を続ける。
「我々は実験に活用出来る生物と環境が整った星を探していてな、地球時間でいう一ヶ月ほど前に見つけたのが地球だった。理想的な星である事はこの一ヶ月の調査ではっきりしている。明日にでも実験を開始する予定だ」
さっきから黙って聞いていれば好き勝手言って
「そんなの、嫌です!反対です!」
「ほう?」
私の反論に面白そうににやりと笑う。
「お前個人の嫌で我々の国家プロジェクトが覆ると思うのか?だとしたらとんだ思い上がりだな。まあ仮に地球人全員が反対したところで同じだがな。哀れな実験体の分際で」
「ちょっと待ってください。失礼じゃないですか?あなた方が高等な文明をお持ちであろう事は何となく分かりました。でも、だからって、私たちにも感情があります。大切な家族だって友人だっています。それを一方的に実験だなんて」
「じゃあお前ら人間の実験は酷くないとでもいうのか?動物に感情はないとでも?」
「で、でも...」
「俺は驕るなと言ったな地球人。同じだ。弱者は強者に従うしか無い。地球人より俺たちのほうが強者であっただけだ。あきらめろ」
口では傷つけるような言葉を吐きながら、手はまるで慰めるかのように私の髪を撫でる。本当は良い奴なのかもとか思っちゃうから止めて欲しい。体を離そうとすると更に強い力で抱き込まれそっと耳元で囁かれる。
「お前は俺の命の恩人だ。そこでだ、取引してやってもいいぞ?」
甘い甘い誘う声だった。
「取引って…?」
「お前の命だけは助けてやろうとこの船に連れてきた訳だが、我が侭にもお前はもっと多くを望む。仮にも恩人の頼み、俺は叶えてやりたい。だがそれじゃあフェアではないよな」
分かっているよな、とでもいうように言葉をきる。
「交換条件ですね。分かりました。何が望みですか」
「望みというほど大層なことじゃない。実験にちょっとつき合って貰うだけだ」
言うが早いか今まで抱きしめていた手が徐に私の胸に這う。
「ひゃぁっ!」
「ないな」
と言いつつも手は私のささやかな膨らみから離れない。
「ちょ、分かってるなら触らないでくださいよ!」
「少しぐらい良いだろう?地球人に興味も出てきていたんだ。少しつき合え」
「つき合ったら、地球の件考えなおしてくれるんですか?」
「ああ、お前が俺を満足させる事ができたらな」
前言撤回。こいつは良い奴なんかじゃない。
尚も怪しい動きを止めない手だけど、自分の立場を考えると抵抗出来なかった。
「ん…あんっ…や…んっ…」
「感じやすいんだな。初めてのくせに」
耳元で囁やかないでくださいよぉ。それに舐めないでください、この変態めえええ。
「な…んで…あっん……私が初めてだっ…しって...んんっ…るの、よ!」
「さあな。もっと気持ちよくなりたいか?」
ふーっと耳に息を吹きかけられ、ゾクゾクとした快感が背筋をかけぬける。
くつくつと笑い声を上げる男の、これ以上の行為を止める天の声が響いたのはその時だった。
「あのー…お楽しみのところ悪いんですけど、そろそろ降りて貰えますか?メンテナンスとかあるんですよね。僕の可愛い子ちゃんが傷だらけなんですよ」
整備士だろうか。うんざりしたような表情のこれまた大きな男が画面に映る。というか、今までの痴態を見られてたの?聞かれてたの?うわああああ穴があったら入りたい…。
今日が削がれたのか、男は舌打ちとともに再び私を抱え直し、固まりを出る。
「邪魔するなと言ったろう」
不機嫌そうな男は整備士に捨て台詞を吐くと何枚かの扉?と思われるものを越えずんずんと進んで行く。
うわースター○ォーズみたいだー、ぼーっとする頭にはどうでも良い事ばかりが浮かんでは消えてゆく。これから私を待ち受けるのは悲劇だろうか喜劇だろうか。
嫌な予感しかしないが今はただ眠かった。
おやすみなさい。
願わくば、喜劇を。
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眠りについた彼女から離れ部屋を出た彼に近づくのは先ほどの整備士の男だ。
「おいおい、よかったのかよ。あんな態度とっちゃってよ」
「何か問題でもあるのか?」
心配そうに問いかける男に
「いやいや問題だらけだろ。国家プロジェクトとか言ってたけど、この実験は完全なるお前の趣味だし。それに勝手にいろいろ採取しちゃってよ。上にばれて怒られても知らないからな」
「俺を怒れる者なんて兄上くらいしか浮かばんな。まあいいさ兄上もきっとサツキを気に入ってくださるだろう。まさか銀河のこんなへんぴな所で俺の運命に出逢えるとは思わなかった。これからが楽しみだ」
友人の善意からの忠告をよそにこれからの事を思い楽しげに笑う彼。
彼女の願いが成就する日は来るのだろうか。
それはまた別のお話で。




