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飛べなかった小鳥

マスコミ探偵三部作の中心作品です。三部作は登場人物が共通で、話は関係がありません。主人公正田は仕事人で、殺し屋です。しかし、「マスコミ探偵」では犯人を追いつめる探偵役になります。

再びサンセットTVの第2スタジオ。セットをまえに正田とプロデューサーとが立ち話をしている。正田のほうは折りたたみ椅子にドカッと座っていて、あまり話を聞く気がなさそうだ。一方のプロデューサーは、ド派手でモヒカン頭というプロデューサーに似つかわしくないいで立ちだ。彼の名はジョニー西。敏腕プロデューサーというより、業界ではやりくりプロデューサーといわれている。ぎりぎりの低予算の番組作りが売りだ。それでもこの「ワイドステーション」は庶民的で、わりと視聴率がよかった。

「国民的アイドルと、集団詐欺の疑惑のある投資会社との接点が刺激的よ!番組の切り口変えるわ!剛ちゃんしっかり情報たのむわよ!」

ジョニーのしゃべり方はおねえ系だ。正田はいつものくどい話にうんざりしている。

「そういうの、サツ回りにやらせれば?俺がやらなくっても・・・」

正田の言うのはもっともだ。サツ回りとは、警察関係を取材する報道局の局員だ。正田は芸能レポーターで、芸能関係が専門だ。この場合、犯罪が関わっているという事を言っている。

「またあんたはそんなこと言って!相手が芸能人ならあんたの仕事でしょ?視聴率が下がって、編成会議でうちの枠がやばいのよっ!のんきに座ってないで、刺激のあるコメントとってくるの!」

プロデューサーと言うのは、出演者にとってお客だ。本気で怒らせてはならない。

迫力に押される正田だった。プロデューサーのアップはこたえるぜ・・・。

「へい、へい・・・」

あっさりと受けてイスから立ち上がる正田だ。いつも文句言うので、正田に手を焼くプロデューサーだが、あっさり従う正田に拍子抜けだ。

「どこいくの?話し終わってないわ!」

会話を切られたジョニーは正田に詰め寄る。

「インベンション!」

正田の言葉に、ジョニーの顔が赤らんだ。恥ずかしいというより怒りだ。インベンションとは業界用語でトイレのことだ。

「おトイレは打ち合わせ前に済ませとくものよ!このアーパー。」

この二人はいつもこんな会話をしている。正田にとって、ジョニーはテレビ局側のお客様だが、若さもあり、あまり話を聞かなかった。ジョニーも、広範囲な情報網を持つ正田を視聴率取りに欠かせない存在だ。


スタジオを抜け出した正田は資料室に行った。大きくはないが映像ライブラリーも含め充実している。テレビ局が情報の発信源だけあって、古今東西さまざまな情報を持っている。

「投資会社JIMという会社は、やべぇ会社だな。」

正田は何か調べている。投資会社JIMは代表取締役・村田五郎が設立し、前身の「BRIGHT  SKY」は1990年、健康器具でネズミ講事件を起こしていた。1997年「円友会」では先物取引で詐欺事件となっている。このようなあからさまな団体で、ハセナンは広告塔になっているのだ。だいたい審査はどうなっていたのか?事務所が把握してないはずがない。ブツブツ言っているところに肩を揉んでくる人物がいた。

「!なんだ、智ちゃんか」

正田が驚いて振り向くと、局で仲のいいADが居た。

井川智美25歳。番組ADだ。正田とは番組での付き合いだけだ。でも、もともとミーハーでゴシップ好きの彼女は、正田に付きまとうことが多かった。

「消えたと思ったら、こんなところにいたー!資料室でなにやってんの?」

智美は興味深々だ。

「いやなに・・・ハセナンの疑惑の情報収集を・・・。それよりなんか情報ない?」

情報屋の正田が智美に求める。智美は呆れた。

「あるわよっ!それより、あんたのアンテナ錆びついているんじゃない?誰でも知っているから。」

「?」

いまいち、正田に理解されないようだ。

「情報屋のくせに情けないわねっ!会社の情報を知っていて会員を集めているって、話よ。マネージャーが暴露しているの!。」

智美は情報不足と思ったが、正田には腑に落ちない疑問が起こったようだ。

(あの記者が言っていた通りか。でも何でマネージャーが発信源なんだ?マネージャーなら疑惑を否定するものだが・・・)

そんな正田に智美は

「それより、ジョニーがおかんむりよ!早く特ダネつかまないと、消されちゃうからっ!」

警告なのか叱咤なのか分からない。

「でもなー、そんなに特ダネ転がっているわけないじゃん!」

正田はいつもそうだがノリが軽い。智美にはお気楽やろうとしか映らない。

「それをやるのがあんたの仕事でしょ?口わらせんのよ!」

智美にぎゃーぎゃー言われて、資料室を追い出された。情報はアシで稼げと言わんばかりだ。局員と違って成果上げないと消えることになる。

「こりゃー、一度本人にぶつけるしかないな!」

独り言を言いながら、正田は局を後にする。



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