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くぅき  作者: ジョウビタキ子


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糸巻きぐるま


脳みその中に記憶という形で保存している情報が


入れる時はバラバラなはずなのに


どこかで一本につながっている時がよくあります


芋づる式に次々と記憶が引き摺り出される感覚ですね


欲しい記憶だけならいいのですが


出てきて欲しくない記憶も思い出してしまうのが難点


始まりはほんの少しのきっかけです


糸に繋がれた極小のかけら一粒が


記憶を沈めてある大きな湖にぽーんと投げ込まれると


そのかけらにひっついた記憶が


別の記憶をひっつけて


それがどんどんと連鎖して


勝手に釣り上がってきます


普段は思い出そうとしても


何の反応もないのに


気まぐれなタイミングで釣り上がってくる記憶


匂い


空気


重さ


温度


色


形


感情


季節


天気


平面な写真ではなくて


その当時


そこに立っていた状況がぶわりと浮かんで


終わったはずの昔に引き摺り込まれるんです


いい記憶なら嬉しいですけどね


きっかけになる一粒のかけらが自分では選べないので


釣り上げていくうちに


悶絶することもしばしばあります


けれど


こうしてランダムに手繰り寄せられる記憶が


便利な時もありますね


あれに合わせるのは何がいいかな?


色は?


形は?


こんな素材がいいかも


どう組み立てて


どう配置していこうか


あ


あれも使えそう


こっちにしてみてもいいな


いややっぱりあの時のあれを組み合わせて…


と


糸巻きぐるまの糸を巻き取っていくうちに


かけらとかけらが合体して


面白いことが浮かんだりもしますから


良いも悪いも兼ね備えた


不安定さ抜群の記憶の湖


この湖のほとりで


くるくるくるくる


糸巻きぐるまを巻く時間は


この文章を書く時間の百分の一の速さです


一瞬で、と言った方が簡単かもしれません


もう少し自由に扱えると良いなとは思いますが


凪のように静かか、暴走気味か


両極端な面もあるので


毎回何が釣れるのかは謎の


困った湖なんです


はぁ〜


脳みそってどうなっているんでしょうね


意味がわかりません


でも、なんか凄いですね


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