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溺れるほど、きみが好き~国民的アイドルと初恋の幼馴染に奪い合われて、困ってます~  作者: 桜 こころ


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第70話 いきなりパーティー

 そして、次の休日。


 なにやら物音がして、私は目を覚ました。

 眠い目をこすりながら、ふらふらと居間へ向かう。


 ――そこで、一気に目が覚めた。


「な、なに……これ?」


 目の前に広がっていたのは、見慣れた我が家とは別世界。

 まるでパーティー会場に迷い込んだみたい。


 壁にはカラフルなガーランドが揺れ、中央には「おめでとう!」の垂れ幕が掲げられている。


 そして、部屋の真ん中に置かれた小さなちゃぶ台の上には、

 ホールケーキがどんと鎮座していて、そのまわりには五つの皿とコップがきれいに並べられていた。


「い、いったい……」


 呆然と立ち尽くしていると、誰かが横切った。

 台所から姿を見せたのは、大きなジュースのボトルを抱えた小森さんだった。


 え、ええ!? なんで小森さんが、私の家に!


 ぽかんと口を開けたまま凝視してしまう。

 すると、彼女は振り返り、にっこりと笑った。


「あら、星ちゃん、おはよう。まだいいわよ、もうちょっとで準備終わるから」


 軽やかな声とともに、コップへとジュースを注いでいく。


「あ、あの……なんで?」


 戸惑いながらも、私はゆっくりと居間に足を踏み入れた。


 自分の家なのに、まるで別の場所みたい。


「あ、姉ちゃん、起きたんだ」


 背後から声がして、びくっと肩が震えた。

 振り返れば、太陽が満面の笑みを浮かべて立っていた。


「太陽、これはどういうことなの?」


 小さな声で問いかけると、弟はあっけらかんと答えた。


「ん? 姉ちゃんとあきらさんのお祝いだよ」


 ……は?

 理解できずに固まった。もう一度聞き返そうとした、そのとき。


 ピンポーン、とチャイムが鳴った。


「はーい!」


 太陽が玄関へ駆けていく。


「ちょ、ちょっと!」


 慌てて私もあとを追った。


 そして――玄関に立っていた人物を見た瞬間、足が止まる。


 あきら……と、守兄!?


 にこりと笑うあきらと、その隣で優しく微笑む守兄。

 目の前に並んで立つ二人の姿に、私は呆然と立ち尽くした。




 どうしてこうなったのか、さっぱりわからない。


 ちゃぶ台の前にちょこんと座り、そっと周りを見渡す。

 囲んでいるのは、私、太陽、小森さん、あきら、そして守兄。


 ……え、これなに?

 状況がつかめず、落ち着かない。

 いや、私だけじゃないはず。

 あきらだって、先ほどからどこか落ち着きないし。


 守兄はといえば、いつも通りの柔らかな笑みを浮かべていて。

 逆にわからない。


 なに考えてるの? と観察するようにじっと見つめていたら、ぱちりと目が合った。


 し、しまった。見すぎた。

 彼がふわりと笑ったものだから、ますます混乱する。

 どうしてそんなふうに笑えるの。


 そわそわと視線をさまよわせていると、小森さんがからかうように肩を小突いてきた。


「ダメでしょ、星ちゃん。そっちの彼と見つめ合ってちゃ。

 またあきらに誤解されちゃうよ?」


 にやっと笑う小森さん。


 あれ、この人、こんなに砕けた人だったっけ?

 なんだか妙にフレンドリーだ。


「そ、そんな見つめ合ってなんかないです!」


 とりあえず否定する。


 すると、守兄も落ち着いた声で続けた。


「そうですよ。俺と星は、もう終わったんです」


 そのきっぱりとした言い方に、場が一瞬静まり返る。


「ま、まあまあ、いいじゃん。さ、はじめよ!」


 空気を変えるように、太陽が元気よく声を張った。


 そのタイミングで、私はずっと気になっていたことを口にした。


「ねえ、まって。今日って……なに?」


 全員の視線が私に集まる。

 え、なに、なんか変なこと言った?


「なにって、お祝いだよ」


 太陽が当然みたいに笑う。


「姉ちゃんとあきらさん、仲直りしたろ? よかったね、元通りになって」


 ……え、そういうこと?

 知らなかった。誰も教えてくれなかったし。

 っていうか、それってお祝いすることなの?


 ……でも、そっか。

 みんな、それだけ私たちのこと心配してくれてたんだ。

 そう思えば、心がぽっとあたたまった。


 小森さんが勢いよくグラスを掲げる。


「ま、細かいことはいいじゃない!

 めでたいことはお祝いしなくちゃ。はい、乾杯!」


 勢いに押され、私も近くのグラスを手に取る。

 カチンッと小気味よい音と共に、みんなでグラスぶつけあう。


「星ちゃん、あきら、おめでとう。幸せになりなさいよ!」


 小森さんが涙ぐみながら盛大に叫ぶ。


 な、泣いてる?

 ていうか、これジュースだよね。酔ってないよね?


「あ、あの……大丈夫ですか?」


 おそるおそる聞くと、彼女はにっこりと笑った。


「平気よ。さ、ケーキ切るわね!」


 妙に張り切った様子でケーキを取り分けていく。


「は、はあ……」


 あまりのテンションの高さに、私はただ見ていることしかできない。


 すると太陽がこっそり近づいてきて耳打ちした。


「これ、企画したの小森さんなんだよ」


「え! そうなの?」


 驚くと、太陽が小さく笑った。


「僕に相談してきてさ。パーティーしようって。

 なんか、小森さんもいろいろ吹っ切りたいみたいだったし、協力したんだ」


 私はそっと小森さんを見つめた。


 ……そっか。あきらのこと、彼女なりにいろいろ考えてたんだ。

 気持ちを整理するために、あえてこんな大げさに祝ってくれたのかもしれない。


 それにしても、太陽ってほんと大人だな。

 私のことも、ちゃんと見てるし。他人のことまで。


 小森さんとも、いつの間に仲良くなったんだか……。


 視線の先では、太陽と小森さんが顔を見合わせて、楽しそうに笑い合っている。

 その様子を見ているうちに、私の口元にも自然と笑みがこぼれていた。


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