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溺れるほど、きみが好き~国民的アイドルと初恋の幼馴染に奪い合われて、困ってます~  作者: 桜 こころ


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第42話 通じ合う心

 もやもやした気持ちを抱えたまま、私はもう一度スタジオへ戻った。


 残りの時間はただ黙って、あきらの仕事ぶりを見つめる。


 ステージ上の彼は、本当にキラキラしていた。

 歌って、踊って、笑って、その姿はまるで光そのもの。


 見ている人みんなを惹きつける。息をのむほど眩しい存在。


 アイドルって、やっぱりすごい。


 中でも一番心に残ったのは、あきらの表情だった。


 すっごく楽しそう。

 いつも仕事の話をするときに「好きなんだな」って感じてたけど、生で見るともっと……。


 心からこの仕事を愛しているんだって、ひしひしと伝わってきた。


 でも、その輝きに触れた瞬間、胸によみがえる声。

 小森さんの言葉。


 迷惑、マイナス。


 思い出した途端、気持ちがまた重く沈んでいった。



 撮影を終えたあきらが駆け寄ってきて、私の顔をのぞき込む。


「どうした? 何かあった?」


 心配そうな声。

 その優しさに胸がじんと熱を帯びる。


 私はどうすればいいんだろう。答えはまだ見つからない。


 メンバーやスタッフさんに挨拶を終え、私たちはスタジオを後にした。


 楽屋で私服に着替えたあきらが、にこっと笑って手を差し出す。


「ちょっと寄りたいところがあるんだ。一緒に行こう」




 テレビ局を出ると、すっかり日は暮れていて、町のネオンがきらきらと光を放っていた。

 人通りもまだ多く、気は抜けない。


「ね、大丈夫なの? 二人で歩いて」


 思わず不安を口にする。

 もし誰かに見られたら……。


「大丈夫。暗いし、ちゃんと変装してるから」


 あきらはウインクして、自分を指さした。

 帽子にマスク、パーカーにジーンズ。仕事中の彼とはまるで別人のようで、確かに目立たない。


 それでも気づく人は気づくかもしれない。どうしても心配は拭えなかった。


 そんな気持ちを払うように、あきらが明るく笑う。


 やっぱり、この笑顔に私は弱い。


「星、行こう」


 手をぎゅっと握り直されると、自然と不安がほどけていく。

 彼の笑顔につられるように、私も笑みがこぼれた。


 そのまま彼に導かれるように、近くの公園へ足を運んだ。




 そこは海に面した公園で、防波堤の先には波打ち際が広がっている。

 周りには緑も多く、空気もおいしい。どことなくゆったりとした空気も流れていた。


 ここは、恋人たちのデートスポットだという噂だ。


 防波堤の手前でふと足を止め、ふたり並んで腰を下ろす。

 寄せては返す波の音が心地よく響き、海風がひんやりと頬をなでていった。


 隣では、あきらが足をぶらぶら揺らしている。


 なんだか子どもみたい。そんなところも可愛いな。

 無意識に笑みがこぼれる。


 見つめていたら、ふいに彼と目が合った。


 トクン、と胸が高鳴る。


 澄んだ瞳はビー玉みたいに透きとおって、星を閉じ込めた宝石のよう。

 吸い込まれてしまいそうなこの瞳が、たまらなく好きだった。


「今日は、どうだった?」


 期待を込めたような眼差しで、あきらが問いかける。


「うん……すごく格好よかったよ。

 キラキラしてて、さすがアイドルだなって思った」


「それだけ?」


 不満そうに見つめてきたかと思うと、彼はすぐににこっと笑った。


「星に見てほしかったんだよ。俺が仕事してる姿」


 胸を張り、空を仰ぐ横顔はどこか誇らしげだ。


「どんなに大変な仕事も、いやだなって思うことも、好きなことだから頑張れる。

 ……でも、たまに負けそうになるときもあるんだ」


 そっと俯きながらつぶやくその声に、私は黙って耳を傾けた。


「でもそんなとき、星のことを思うと頑張れるんだ」


 顔を上げたあきらの瞳から、熱い想いが流れ込む。


「俺のパワーの源は、星なんだ。

 どんなときでも心の片隅に君がいて……冷え切った心も、あたためてくれる。

 だからまた元気になれるし、頑張れるんだ」


 そう言って、あきらは自分の手を私の手に重ねる。

 指先まで温かくて、彼の心を現しているようだった。


 ゆらゆら揺れる瞳が、真っすぐに私を射抜く。


「俺は、星じゃないとダメなんだ。君がいないと頑張れない」


 その言葉や気持ちがゆっくり染み込んでいく。

 嬉しくて、涙がこぼれそうになる。


「私も、あきらじゃなきゃダメ。

 一緒にいると心があったかくなって、元気をもらえるの。

 ずっとそばにいたいって、愛しいなって……」


 口に出した瞬間、顔が熱くなる。

 恥ずかしくて、俯いた。


 すると、あきらが私の頬を両手で包み、そっと顔を上げさせる。

 視界いっぱいに、大好きなあきらの顔が近づいてきて、鼓動が一気に速まった。


「この前は、ごめん。

 俺、嫉妬ばっかりで、ほんと情けないよね」


 悔しそうに眉を寄せ、あきらは視線をそらす。


 今度は私が、彼の顔に手を添えて、ゆっくりとこちらへ向けた。

 驚いたように、あきらの目が大きく見開かれる。


「ひ……星」


 かすかに揺らめく瞳。


「私も、ごめん。あんなところを見たら怒るのも当然だよね。

 油断してた。気を許しすぎてた。

 私には、あきらっていう大切な彼氏がいるのに。

 反省してる」


 見つめ合ったまま、時間が止まったように動けなくなる。

 その間も、心臓は鳴りやまない。


 息を整えてから、ゆっくりと言葉を絞り出す。


「――あきらが好き。大好き。それだけは信じて」


 そう告げると、あきらの瞳にうっすら涙が滲んだ。

 そして、ふっと柔らかな笑みを浮かべる。


「うん、信じるよ。俺も、星が大好き」


 微笑み合う私たち。

 夜の静かな海辺で、そっと唇を重ねた。


お読みいただきありがとうございます!完結に向けて、毎日更新中です。

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完結後には新作も予定しています。最後までお楽しみください。

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