表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
溺れるほど、きみが好き~国民的アイドルと初恋の幼馴染に奪い合われて、困ってます~  作者: 桜 こころ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/74

第41話 マネージャーの忠告

 あきらに連れられやってきたのは、テレビ局のスタジオだった。


 天井からいくつもの照明が吊るされ、まぶしい光が一面を照らしている。

 広い空間にはスターライトの音楽が響き、スタッフが慌ただしく行き交っていた。


 ステージの前には、大型のテレビカメラが何台も並んでいる。


「わあ……」


 思わず声がもれ、その迫力に呆然と立ち尽くす。


 そのとき、誰かが近づいてきた。


「よお、アキラ。今日は彼女連れか?」


 声をかけてきたのは、スターライトのメンバー・リョウ。


 生で見るのは初めてだけど、やっぱりイケメン。

 長身にクールな雰囲気、爽やかな笑顔まで完璧で、つい見惚れてしまう。


「可愛いね。でも気をつけなよ。彼女のこと……」


 心配そうに眉を寄せるリョウに、あきらは頷いた。


「ああ、わかってる。彼女は友達だ。今日は見学」


 言い切ると、リョウは肩を竦める。


「はいはい、そういうことね」


 呆れ顔で笑うその様子は、全部お見通しとでも言いたげだった。


 すると、その後ろからひょこんと誰かが顔を出した。


「あー! アキラ、その子だれ?」


 屈託のない笑顔で飛び出してきたのは、同じメンバーのハル。


 満面の笑み。愛らしい顔立ち。

 なるほど、“可愛い担当”ってこういうことか。

 弟キャラとして女性人気が高いって聞いていたけど、納得。


 か、かわいいなあ。

 またしても見惚れてしまった。

 もちろん、あきらだって十分かわいいし、かっこいいよ。


 芸能人ってほんとに美形ばかりなんだ。

 テレビ越しで見るのと、生の迫力はやっぱり違う。


 まとわりついてくるハルを軽く手で払うようにして、あきらがつぶやいた。


「うるさいな。いいだろ、俺の友達。今日は見学だから」


 さっきと同じ説明を繰り返す。


「へえー」


 納得してないのか、ハルは訝しげにあきらを見上げた。

 けれど私と目が合うと、にっこり可愛い笑顔を向けてくる。


「ま、いいや。よろしくね、アキラのお友達」


 わざとらしく甘い声を残し、ステージへ駆けていった。

 その背中を見送りながら、リョウもため息をついて後に続く。


 ……き、緊張した。

 小さく息を吐いたとき、あきらがこちらを振り返った。


「じゃあ、俺も行く。星はここで俺のこと見てて」


 まっすぐ見つめてくるその瞳に、戸惑いながら頷く。


「え、ええ」


 あきらは嬉しそうに笑い、ステージへと歩いていった。


 その背中を目で追いながら考える。

 どうして急に連れてきたんだろう。今まで現場に呼ばれたことなんて一度もなかったのに。


 でも。彼の仕事している姿を見られるのは、嬉しい。


 いつも楽しそうに語っていた舞台。その姿を近くで見られる日がくるなんて。


 胸が弾んで、ひとりでこっそり微笑む。

 私は視線を前に戻し、少し先にいる彼の姿に集中した。




 ステージの上で、スポットライトを浴びながら歌い踊るあきら。


 眩しい笑顔を振りまくその姿から、目を離せなかった。

 胸が熱くなり、ただ夢心地で見つめてしまう。


 やっぱり、格好いい。


 そのとき、ふわりと香水の匂いが鼻をつく。

 この香り……。


「ちょっと、いいかしら?」


 横に立ったのは、あきらのマネージャー・小森さん。

 腕を組み、鋭い視線で私を射抜いてくる。


 やっぱり苦手だ、この人。

 敵意を向けられている気がしてならない。


 でも、その理由はわかっていた。


「は、はい」


 逆らう勇気もなく、小さく頷く。


 小森さんはくるりと背を向け、すたすた歩き出した。

 私は慌ててそのあとを追う。



 スタジオを出て廊下を進み、人影のない通路で彼女は立ち止まった。


 しんと静まり返り、空気まで冷たくなったように感じた。

 嫌な予感しかしない。


 振り返った小森さんの表情には、怒りがにじんでいた。


「今回は特別なのよ。もう二度と、こんなことはないと思って」


 低い声で言い放ち、ため息をつく。


「あきらがどうしてもって言うから仕方なくよ。

 いい? ここで見たこと、聞いたことは絶対に口外しないで。必ず守って」


 びしっと言い切られ、私は慌ててうなずいた。


「は、はい!」


 ぶんぶんと首を上下に振る。


 それでも、小森さんの視線はさらに鋭さを増す。

 蛇ににらまれた蛙って、きっとこんな気分だ。


「あなた、本当にわかってるの?」


「へ?」


 強い口調に、変な声が漏れてしまう。


「こんな場所にのこのこついてきて……もし“彼女”だってバレたらどうするつもり?

 あきらにどれだけ迷惑がかかるか、考えたことある?」


 胸に突き刺さる言葉。うぅ痛い。ズキズキする。

 そんなこと、私だってわかってる。いつも不安でいっぱいだよ。


 今日だって心配だった。

 でも、ここに来るなんて知らなかったし。


 なんて、とても言い訳できる雰囲気じゃない。


 さらに彼女は口の端をつり上げ、冷たく微笑んだ。


「本当にあきらを思うなら、別れる道も考えた方がいいんじゃない?

 あなたと一緒にいたって、あの子のプラスにはならない。

 支えるだけなら、私で十分なんだから」


 勝ち誇ったような笑み。

 言い返したかったけど、言葉が喉に詰まった。


 だって、その通りだから。


 私はあきらの足かせでしかない。

 アイドルの彼に、私がしてあげられることなんて、ない。


 沈黙すると、小森さんが近づいてきた。

 そして横に並ぶと、前を見据えたまま低くつぶやく。


「よく、考えてみて」


 視線を合わせようともしない。

 そのまま彼女は、冷たい足音を響かせて去っていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ