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溺れるほど、きみが好き~国民的アイドルと初恋の幼馴染に奪い合われて、困ってます~  作者: 桜 こころ


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第34話 衝撃展開⁉

 「はあ、おいしかった。ごちそうさま」


 満足げに笑う守兄を見て、私は苦笑いを返した。


「お粗末さまでした……」


 いやいや、なんでまた守兄が私の家で夕飯食べてるの?


 ついさっき「仕事があるから」って別れたばかりなのに、もう戻ってきてるし。

 しかも理由は「夕食を食べたいから」って。


 忙しいだろうに、わざわざこんな質素なご飯を食べに来なくてもいいのに。


 でも、嬉しいけどね。


 今は彼女いないんだよね? あのとき、私のこと好きって言ってたし。

 いや、でも守兄なら放っておいてもいい人が寄ってきそう。

 そういう人にご飯つくってもらわないのかな。


 お茶を口に運ぶ彼を、じっと見つめてしまう。


 もしかして、いや、かなり。

 アメリカから帰ってきてから、ずっと私のところに入り浸ってない?

 仕事、大丈夫なのかな。

 そういえば、今は何してるんだろう。ちゃんと聞いたことなかった。


「ね、守兄。仕事って、今なにしてるの?」


 問いかけると、守兄はふっと息を吐き、真剣な眼差しを向けてきた。

 その視線に、胸がドキッと跳ねる。


「な、なに?」


 問い返すと、彼は小さく頷いた。


「いや、そうだな。話しておくか」


 そう言って背筋を伸ばし、まっすぐこちらに向き直る。

 その真剣さに、私も同じように背筋を伸ばしてしまう。


 しばし考えたあと、守兄がゆっくりと口を開いた。


「俺は今、アメリカの本社の仕事と、日本事業の立ち上げを任されてる。

 その会社は……父の会社なんだ」


「え?」


 思わず声が漏れた。

 父の会社? 目が点になる。


「アメリカではいろんな事業を展開してるんだけど、日本でも本格的に動き出すことになってさ。

 それで、俺が立ち上げのリーダーになった」


 少し肩を竦める彼を、私は呆然と見つめる。


 守兄って、そんなにすごい家の人だったの。

 御曹司? いや、まるで別世界の住人じゃん。


 私とは正反対の世界で生きてたんだ。

 そういえば、守兄の家のこと、ちゃんと聞いたことなかったかも。


「す、すごいね。どんな会社なの? どんな仕事?」


 興味が一気に膨らむ。

 守兄って、いったい何者なの?


 身を乗り出すと、彼は少し困ったような笑みを浮かべた。


「うーん、AI事業を中心に手広くやってるかな。

 でも説明はちょっと難しいし……ま、星は知らなくていいよ」


 爽やかに言われ、むむっと眉を寄せる。


 なんか、馬鹿にされた気がする。

 「説明してもわからないだろ」って思ってるでしょ。


 私が頬をふくらませると、守兄がくすっと笑った。


「星のふくれ顔、ひさしぶりだな。やっぱり可愛い」


 そんなこと言われたら、頬が熱くなる。

 でも、本当に幸せそうに笑うから、目を逸らせなかった。


「な、からかわないでよ! で、続きは?」


 照れ隠しのように促すと、守兄は軽く咳払いして真面目な顔になった。


「アメリカへ行ってた四年間、俺は父の会社で勉強してたんだ。

 跡取りとして必要なこと、片っ端から叩き込まれてさ。

 最初から四年間って約束だった」


 そこで一度視線が落ち、少し苦笑する。


「正直、行きたくなかったよ。会社にも興味なかったし……何より星と別れたくなかった」


 まっすぐに見つめられ、大きく鼓動が鳴る。

 あの頃の痛みや想いが、じわりと呼び起こされる。


「でも父もなかなか折れなくてさ。

 俺も必死で抵抗したんだけど――結局、父が条件を出してきた」


 守兄は少し間を置いて、落ち着いた声で続けた。


「“四年間しっかり勉強する。それが終わったら自由にしてやる”って。

 会社のことをしっかり学んだ上で、継ぐかどうか決めればいい。そう言われた」


 遠くを見るような目で、ぽつりと笑う。


「逆らっても自由になれるわけじゃない。だったら四年我慢して、そのあと自由を掴めばいい。

 そう思ってアメリカへ行ったんだ」


 彼の瞳がまた私へ向いた。

 そこには、熱い決意が滲んでいる。


 やっとわかった。守兄が突然いなくなった本当の理由。


 あのときは詳しく話してくれなかったから、永遠のお別れだとばかり思ってた。

 でも本当は、戻ってくるために行ったんだ。


「星と別れるのは、すごく辛かった。

 身を引き裂かれるみたいで……最後まで悩んだよ」


 守兄が深く息を吐く。その瞳はまっすぐ私に向けられている。


「でも、四年間頑張ればまた会える。そう信じて、父の言葉を受け入れた。

 あれは俺にとってチャンスだった」


 一瞬の沈黙。

 やがて、守兄はゆっくりと微笑んだ。


「必死に頑張ったよ。この四年間、星を迎えに行くために」


 心臓がどくん、と大きく鳴った。


 ……なに、この展開。


 これって……愛の告白? いや、前に言われたときよりも、もっと重みがあるような。

 嬉しいんだけど。


 衝撃すぎて、どう答えていいかわからないよぉ。


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