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溺れるほど、きみが好き~国民的アイドルと初恋の幼馴染に奪い合われて、困ってます~  作者: 桜 こころ


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第29話 ようやく終わった波乱の一日

 や、やっと解放された。


 胸を押さえ、ほうっと息を吐く。

 観覧車を降りるまで、あきらに抱きしめられ、守兄に腕を掴まれたまま、

 身動きが取れなかった。


 まだ感触が体中に残っている。

 あんなに長く抱きしめられたのは初めてで。


 思い出すだけで顔から火が出そう、そのうえ守兄のあの熱烈視線まで浴びて……。


 もう、嬉しいを通り越して緊張感しかない。

 まさに地獄絵図だった。


「姉ちゃん、僕眠い……」


 太陽が目を細め、私の服の裾を引っ張る。


「ごめんね、太陽。眠いの? じゃあもう帰ろうか」


 二人に目を向けると、

 あきらと守兄は、背中合わせのまま立っていた。


 互いに視線すら合わせようとしない。


「ねえ、二人とも」


「なに?」

「どうした?」


 二人は同時に私に笑いかけ、その直後、また睨み合う。

 本当に犬猿の仲だ。


「太陽が疲れちゃったから、今日はもうお開きにしよう」


 そう告げると、あきらが子どものように口を尖らせる。


「えー、つまんない」


「ふん、これだからお子ちゃまは」


 守兄は馬鹿にするように吐き捨てながら、私には柔らかな笑みを向けた。


「もちろんいいよ。俺も仕事の予定があるから、そろそろ切り上げようと思ってたところだ」


 その余裕ある態度に、あきらは驚いた顔で口をあんぐり。

 「しまった」とでも言いたげな表情を浮かべる。


「じゃあ帰ろう。あ、守兄はこのまま行ってくれていいよ。私たちは電車で帰るから」


 そう言った途端、守兄が近づいてきた。

 ぎゅっと手を握られ、熱い視線を浴びる。


「……星は優しいね。でも、送らせてくれ」


「ちょーっと待った!

 星は俺が送ってく。おまえは大事な仕事とやらに行け!」


 あきらが割り込んできて、二人の間に再び火花が散る。


 守兄が言い返そうとしたそのとき――


「そうだね。ここはあきらに送ってもらう。だから、守兄は仕事へ行って」


 私はにこりと微笑みながら言った。

 穏便に収めるには、二人を引き離すのが一番。


 それに、あきらとゆっくり話したい気持ちもあった。


 守兄が現れてからというもの、あきらはずっとピリピリしていた。そのせいでいろんな誤解も生まれているような気がする。

 ちゃんと向き合わなきゃって思ってた。


 その想いが伝わったのか、それとも空気を読んでくれたのか。

 守兄がふっと笑い、軽く頷いた。


「わかった。星を困らせたくはないからな。

 じゃあ、また連絡する」


 そう言って優しく微笑むと、守兄はあっさりと踵を返し、そのまま去っていく。

 やけにあっさりとした別れに、ちょっと拍子抜けする。

 さっきまであんなにギラギラしていたのに。


 ……あれ? なんだか寂しい。

 いや、違う。そんなことない。だって、あきらがいるんだから。


 私はあきらに向き直った。

 ムスッと頬を膨らませ、ご機嫌斜め。


 そっと近づいて、優しく声をかける。


「あきら、帰ろう」


 ちらりと視線を向け、あきらは照れ臭そうに頷いた。


「おう……」


 こうして、目まぐるしい一日がようやく終わった。




 遊園地をあとにした私たちは電車に揺られ、やがて地元の駅に降り立った。


 本当なら、あきらの家からはだいぶ離れている。

 けれど彼は、どうやら私を家まで送るつもりらしい。


 ほんと、優しいよね。


 三人で並んで改札を出たとき、太陽がふいに声をあげた。


「僕、ちょっと用事あるから。二人は先に行っといて」


 にこりと笑ったかと思うと、あきらに向かってウインクまでする。


「ちょ、太陽!」


 私の声なんて完全に無視して、弟はそのまま駆け出した。

 遠ざかる背中を見つめながら、あきらがぽつりとつぶやく。


「あいつ……いいとこあんじゃん」


 へへっと笑うその顔は、なんだか嬉しそう。


「え、どういうこと?」


「ん? あいつも“男”だってこと。さっすが星の弟だよな」


 ご機嫌になったあきらが、私の肩を抱き寄せる。


「あ、あきら……」


 上目づかいで見上げると、彼は少し頬を赤らめて囁く。


「やっと、ふたりきりになれたな」


 至近距離からの愛しい人の声。その視線は熱を帯びている。

 頬がじんわりと熱くなった。


 彼が私の手をそっと握り、そのまま歩き出す。


「さ、行こうぜ」


「う、うん」


 手を引かれるまま、私は彼についていった。


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