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溺れるほど、きみが好き~国民的アイドルと初恋の幼馴染に奪い合われて、困ってます~  作者: 桜 こころ


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第25話 遊園地でばったり、ドッキリ!

 遊園地当日の朝。


 太陽と一緒に出かける準備をしていると、チャイムが鳴った。

 玄関が開く音に続き、「お邪魔します」と声がする。


 この声は。


「やあ、おはよう。今日はいい天気でよかった」


 目の前に現れたのは守兄。


 って、勝手に入って来たの!?


 爽やかすぎる笑顔に、一瞬ときめいてしまい、突っ込みそびれた。


 はっとして自分を戒める。

 何やってんの、私。油断は禁物。

 だって、この前……。


 頬の感触を思い出し、慌てて首をぶんぶん振った。


 ダメ、ダメ。今は目の前のことに集中よ!

 準備に没頭しようとするけれど、どうしても視線が気になって仕方ない。


 だって、ずっと見られている気がして。


 そっと視線を向けると、目が合ってしまい、慌てて逸らした。

 小さな笑い声が聞こえる。は、恥ずかしい。


 落ち着かないまま支度を終えると、私たちは守兄に導かれ、外へ出た。




 道路脇には、高級そうな車が停まっている。

 私は車に詳しくないけれど、見ただけで「すごい」とわかるやつ。


「どうぞ」


 エスコートされ、車へ乗り込む。


 やっぱり、流されてる気がする。


 太陽と二人、後部座席に腰を下ろした。

 ふかふかのシートに体が沈み、ふわりといい香りが漂う。


「わあ、姉ちゃん。すっごいね、ふかふかだね! 格好いいなあ」


 太陽は目を輝かせて、きょろきょろと車内を観察している。


「お、落ち着きなさい。わかったから」


 こんな車、生まれて初めて。

 そりゃ驚くよね。私だって、びっくりしてる。


 運転席に乗り込む守兄をそっと見つめると、ふいにこちらを振り返った。

 目が合い、心臓が跳ねる。


 守兄は私と太陽に向かってにこりと微笑んだ。


「シートベルトしたね? じゃあ、行こうか」


 こうして私たちは、守兄の運転する車で、遊園地へ向かった。




 「いえーい! 遊園地だあ!」


 入場ゲートをくぐるや否や、太陽が子どものようにはしゃぎだした。

 スキップしたり、くるくる回ったり。まるで小さな子どもみたいに忙しい。


 ふふっ、あんなに楽しそうにしちゃって。連れてきてよかった。

 普段は大人ぶってるけど、やっぱりまだ子どもなんだよね。

 我慢ばかりさせてるからなあ。私も嬉しいや。


 太陽を眺めていたら、前をよく見ていなかったらしく、人とぶつかってしまった。


「きゃっ」


 よろけた体を、誰かの腕が支える。


「大丈夫?」


 顔を上げると、すぐ近くに守兄の顔。

 触れた部分が熱くなり、胸が高鳴る。


「う、うん……ありがとう」


 慌てて距離を取る。

 気持ちを紛らわせるように、わざと大きな声を出した。


「人、多いね!」


「そうだね、日曜だし。人気スポットだから。

 はぐれないように気をつけて」


 にこりと微笑まれ、頬が熱くなる。

 だめだ、完全に彼のペース。

 いかんいかん! しっかりしろ、私。


 ふとあたりを見渡せば、人、人、人。

 日曜の遊園地、恐るべし。

 人波に飲まれてしまいそう。


 そんなことを考えていると、手を握られた。


 ドキッ。

 振り返ると、守兄が私の手をしっかり握っていた。


「あ、あの、その……」


 戸惑うと、彼は照れくさそうにはにかむ。


「いいだろ? はぐれないようにさ」


 心臓が破裂しそうなほどうるさい。

 ど、どうしよう。


「なら、太陽と繋いでやれよ」


 突然、背後から声がした。


 ――この声。まさか。


 振り返った瞬間、背筋が凍る。


 パーカーにジーンズ。キャップを目深にかぶり、マスクをしている。

 その人物は、仁王立ちでこちらを睨んでいた。


「あ、あきら!? ど、どうしてここにっ」


 声が裏返る。

 ゆっくりと近づいてくるあきらから、不穏な空気が漂っていた。


「何だよ? 来られちゃマズいことでもあるのか?」


 低く言い放ち、視線を下げる。

 その先にあるのは、繋がれた手。


「っ……!」


 慌てて手を振りほどく。


「なんで、こいつと遊園地に来てんだよ」


 ジト目で睨まれ、言葉が出ない。


「うっ……そ、それは」


 私だって説明できない。成り行きなんだもん。どう答えれば。


 ふいに守兄が割り込んできた。


「俺が誘ったんだよ。星とデートしたくて」


「……なんだと?」


 あきらの声に、凍るような棘が宿る。


「ちょ、ちょっと守兄、そうじゃないでしょ!?

 これはね、太陽のためなの!」


 私はあきらに向き直った。


「太陽の?」


 あきらは意外そうに目を見開く。


 ほっ、よかった。怒りが少し和らいだ。


「そうなの。太陽が遊園地に行きたがって。

 本条さんが幼馴染のよしみで連れて行ってくれることになったの。ね、太陽!」


 助けを求めるように弟に視線を送る。


「うん、そうだよ。僕が行きたいって言ったんだ」


 にこにこ顔の太陽。さすが察しがいい。


「ふーん……」


 あきらが仏頂面のまま、小さく頷いた。


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