第1話 星と太陽の貧乏ライフ!
ただいま野原家は、二人暮らし。
私、星と、弟の太陽。
名前がちょっと変わってるって? そうだよね。
両親いわく「自分の力で光輝く子になってほしい」って願いを込めたらしい。
……そうなれてるかどうかは、正直わからないけど。
とにかく、どんな苦難にも負けずに日々頑張ってます!
で、なんでうちがこんなに貧乏かっていうと。
両親は、私が十二歳、太陽が十歳のときに交通事故で亡くなった。
最初は親戚の家に預けられたんだけど、どうも折り合いが悪くて。
そこのおばさん、私たちのことをすごく毛嫌いしてたんだよね。
まあ、自分の子じゃないし。
親戚とはいえ他人の子を育てるなんて、そりゃ面倒だろうなあ。
よっぽどいい人じゃないと無理だよ。うんうん。
それにしても、あのおばさん……。
ほんと、よっぽど嫌だったんだろうね。
やっすいぼろ家を見つけてきて「二人で住め」って言ったの。
家賃は払ってやるから、あとは自分たちでなんとかしろって。
――ひどくない? まだ子どもだったのに。
「せめて光熱費だけはお願いします」って頼んだら、しぶしぶ承知してくれたけど。
そんなわけで、おばさんがこの家を借りてくれて、
私たち姉弟は、無事にそのぼろ家で暮らすことになった、と。
まあ、一応“無事”ってことにしておく。
え? 生活費?
一応ね、生きるための最低限のお金だけは仕送りしてくれたの。
本当に最低限だけど。
だから、生活を切り詰めないと生きていけない。
めちゃくちゃ節約したよ。
近所に生えてる草を拾ってきて炒めて食べたり、そのおかげで、雑草にはやたらと詳しくなった。
スーパーの特売日を狙って買い物したり、店員さんと顔なじみになって、こっそり割引してもらったり。
私だって、親戚の家を追い出されてここに来たとき、まだ十四歳だったんだ。
働きたくても働けない。
それでも新聞配達はしてたよ。
自分にできることは何でもやりたかったから。
弟にひもじい思いはさせたくなかったし。
そんなふうにして、なんとか生き延びてきたって感じかな。
それでも、生活が厳しいことに変わりはなくて。
いつだって質素な暮らしをしなくちゃいけない。
育ち盛りの太陽には、本当に申し訳なくてさ。
男の子なんだし、もっと食べさせてあげたいのに、毎日貧相な節約料理ばかり。
服も新しいのなんて買えないから、破れたところを私が縫い合わせて。
それでも弟は、文句ひとつ言わなかった。
「姉ちゃん、ありがとう」なんて健気に笑ってさ。
我慢強い子だよ、ほんと。
あんな弟がいて、私は幸せだ。
あ、そうそう。
なんで児童養護施設に行かなかったのかって思うよね?
普通はそう思うらしい。
でもね、当時の私はそこまで頭が回らなかったし、
毎日の生活に必死で考える余裕なんてなかった。
それに、どうやらおばさんが、こっそり隠してたみたいなんだよね。
私たちを追い出したこと。
建前上は「ちゃんと面倒を見てます」って顔をしてたらしい。
そりゃそうだよね、追い出したなんて言えないし。
私たちがいないってバレたら面倒だもん。
正式な住所は、ずっと親戚の家のまま。
おばさんはこっそり、私たちをこのぼろ家に住まわせてたってわけ。
邪魔者は遠ざけたい。
でも世間から責められるのは嫌。
だから「面倒は見てますよ」ってポーズだけ取ってたんだ。
……おばさん、本当に私たちが嫌だったんだね。
一緒に暮らすなんて、死んでも嫌だったんだろうな。
ここまでやるかって、正直あきれたよ。
ご苦労さまです。
まあ、でもね。
私も太陽も、今の生活には満足してる。
だって、あのおばさんと暮らすくらいなら、こっちの方がずっとマシだもん。
二人で自由に暮らせるし、いじめられることもない。
うるさく小言を言われることもないしね。
それから私は十六歳になって、やっとアルバイトができるようになった。
だから毎日、仕事に精を出してる。
アルバイトはカフェでの接客。
これがけっこう時給いいんだよね。
なんでかって?
ふっふっふ。それは――“メイド服”で接客してるから!
そう、私はメイド喫茶で働いてる。
太陽には「そういうとこやめてよ」って言われるけど、こればっかりは仕方ない。
だって時給いいんだもん。
それにね、私が働ける年齢になったとたん、
おばさんがいきなり仕送りを減らしたんだよ。
信じられる? どんだけって思った。
あ、そうそう。
私たちには、両親が残してくれた遺産があるんだ。
だったらそれを使えばいいって思うでしょ?
でも、それにはいっさい手をつけてない。
両親が残してくれた、たったひとつのものだから。
それだけは絶対に守るって決めてる。
……とはいえ、いつかその時が来るかもしれない。
それはきっと、太陽のためだ。
あの子にだけは苦労させたくないって誓ってるから。
もし太陽に何かあれば、私は迷わずその遺産を使うだろう。
というか。
苦労させたくないって思ってたんだけどね。
太陽、中学生になったとたん新聞配達を始めちゃった。
いいって言ったのにさ。
「姉ちゃんにだけ格好つけさせない」なんて言って。
ほんと、いっちょ前に男なんだなあって感心しちゃった。
ってなわけで、私は貧乏ながらも幸せに暮らしてる。
ちょっと変わってるでしょ? 普通じゃないよね。
でもね、もっと驚くことがあるんだ。
それは、私の彼氏のこと。




