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溺れるほど、きみが好き~国民的アイドルと初恋の幼馴染に奪い合われて、困ってます~  作者: 桜 こころ


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第17話 気づいてしまった

「ごめん。強く言いすぎた。俺としたことが、動揺してしまった。

 まさか星に彼氏がいるなんて、ちょっと想定外で」


 視線を逸らしながら言った守兄の言葉に、ひっかかる。


「待って。それってちょっと酷くない? 誰にも相手にされないと思ってたわけ?」


 怒り気味に返すと、彼は慌てて首を振った。


「ち、違う! そうじゃなくて……星も俺のこと好きなのかと思ってた。

 だから、ずっと待っててくれるって信じてたんだ」


 ドキリ。

 え、まさか。私の気持ち、バレてた?


「じゃあ、どうして告白してくれなかったの? ちゃんと言ってくれたら……」


「だって、おまえまだ十二歳だったんだぞ。 俺、ロリコンに思われるだろ」


「ロリコンじゃん」


 横から太陽がぼそっと突っ込み、守兄がぎょっと目を丸くする。


「お、おまえ! それ言うなって!

 ……いいだろ、十歳くらい。すぐ大人になる。そうすれば誰にも何も言われない、そう思ったんだ。

 だから迎えに来たら、告白しようって決めてた」


 照れたように笑う守兄の頬は、ほんのり赤い。


 そんなこと、全然わからなかった。

 私、守兄と両想いだったんだ。


 でも、それを今知ったとして、どうすればいいの?


 私にはあきらがいるのに。


 心が大きく揺れて、胸がざわめく。

 あきらへの想いだって本物。

 いい加減な気持ちなんかじゃない。彼のことが好きで、愛おしい。


 でも――。


 そっと守兄を見やると、彼は私の視線に気づいて、再び熱を帯びた眼差しを向けてきた。


「俺のこと、もう一度考えてくれないか?

 待つよ、何年だって待つ。ずっと待ってきたんだ。だから」


 必死に訴える守兄の姿に、胸が締めつけられる。


 本当に、大好きだった。


 あの頃の疼きが、鮮やかによみがえる。

 だけど、私はその気持ちにきちんと区切りをつけたはずだった。


 まさか、またこんなふうに揺さぶられるなんて。


 だめ。私にはあきらがいるんだから。


 ぎゅっと目を閉じ、心を振り切るように言葉を吐き出した。


「ごめん……あきらを裏切れない。私は、彼が好きなの」


 言った瞬間、胸が痛くて、苦しくなる。

 今好きなのはあきらなのに、どうしてこんなに。


 守兄は初恋の人。

 ずっと想い続けてきた。

 だから、今も少しだけ。


 その先を振り切るように、顔を背けた。


 ふたりの間に重い沈黙が落ちる。

 静寂の中、時間だけが過ぎていく。


 やがて守兄が口を開いた。


「……わかった。今日はもう帰る。ただ、考えてくれないか?

 今は混乱してると思う。でも、これだけは覚えていてほしい。

 俺は本気だ。ずっと、ずっと想ってた。君を忘れたことなんて、一度もない」


 そう言って、力なく微笑む。

 それは、昔から知っている、誰かを気遣うときの優しい笑顔だった。


「ま、守兄……」


「じゃあ、帰るよ」


 そう告げると、守兄は背を向けた。

 太陽が戸惑ったように後を追う。


 しばらくして、扉が閉まる音が虚しく響いた。

 私は、動くことができなかった。




 その夜。

 静まり返った部屋の中で、胸のざわめきだけがいつまでも鳴りやまない。


 眠ろうとするけど、まったく眠気は訪れなかった。


 原因はわかっている。本条守。

 守兄のせいだ。


 一方的に私の前から姿を消し、そしてまた突然現れて。

 さらには「好きだった」なんて、あんな唐突な告白……どう受け止めればいいのよ。


 もちろん、私だって昔から守兄のことは好きだった。

 初恋の人だったのだから。


 彼がアメリカへ旅立ってからも、しばらくは忘れられなくて……

 でも一年、二年と時が過ぎるうちに、忘れなきゃって。

 無理やり気持ちに蓋をして、やっと落ち着いた頃、彼と出会った。


 杉本あきら。今の私の彼氏。


 あきらと過ごすうちに、初めて知った恋のドキドキやときめき。

 最初は自分の気持ちもよくわからなかったけど、

 少しずつ、彼を本当に好きになっていって。


 ようやく守兄への想いにも区切りをつけられそうだったのに。


 なんで、このタイミングで現れるの。

 まるで神様が悪戯しているみたい。

 運命って、こんなふうに人を振り回すものなの?


 あきらのことだって、最初は半信半疑だった。

 なんで私なんかを選んでくれるのか、ずっと不安で、疑いの気持ちが抜けなかった。

 彼のこともよくわからなくて、戸惑うことばかり。


 けれど今では、すっかりあきらの虜になっていた。


 純粋で優しく、いつも全力で愛してくれる人。


 仕事にも真摯に向き合い、努力を惜しまない。

 何事にも一生懸命で、そんな姿を見るたび心から素敵だと思った。


 支えてあげたい、応援したい。そう思える人だった。


 彼と一緒にいると、心から楽しくて、嬉しくて。

 嫌なことさえ忘れられた。


 ときどき、息が止まりそうなくらいドキドキさせられるのは困りものだけど、

 それさえも、嬉しい悩みだった。


 嫉妬だってする。

 特に、あの色気たっぷりなマネージャーの小森さんの存在には、いつもハラハラらさせられる。

 彼女があきらの傍にいると思うだけで、気が気じゃない。


 でも、そんな嫉妬を感じるときこそ、自分がどれだけ彼を好きかって実感した。


 だから――

 今さら初恋の人が現れたくらいで、簡単に心が揺らぐなんてことない。


 ない、はずなのに。


 気づいてしまった。

 私、まだ守兄のことを忘れられていなかった。


 再会した瞬間、ときめいた。

 心臓が早鐘を打って、「好き」という感情がふっと湧いた。

 頭ではダメだとわかっているのに、心は勝手に動いてしまう。


 そして、守兄に告白されたとき。やっぱり、嬉しかった。


「あーっ……」


 思わず頭を抱える。


 どうしよう、最低だ。私にはあきらがいるのに。

 自分の気持ちが、もうわからない。


 そのまま、もんもんと悩み続け、


 ほとんど眠れないまま、朝を迎えてしまった。


お読みいただきありがとうございます!完結に向けて、一気に更新中です。

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完結後には新作も予定しています。最後までお楽しみください。

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恋人と片思い、どちらになるのか? じれじれ甘々
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