第12話 初恋の人って最強説!
私は呆然と、守兄を見つめていた。
陽光を浴びて微笑む姿は、まるで貴公子みたい。
って、ちょっと言いすぎかな。
皺ひとつないフォーマルなシャツに、スマートなデニム。シンプルなのに、彼が着ると不思議なくらい様になる。
高身長で、長い手足。スレンダーな体型に、整った目鼻立ち。
しかもほんのり甘いマスクまでついて。
美男子、イケメン、王子様、そんな言葉が次々と浮かんでくる。
だって、実際めちゃくちゃ格好いいんだもん。
きっとアメリカでも相当モテてたに違いない。
ぼうっと見惚れていたら、ふいに守兄と視線が合った。
にこっと笑われて――ドキン、と心臓が跳ねる。
「おどろいたなあ。すっかり綺麗になって」
そう言いながら、守兄がゆっくりと歩み寄ってくる。
「え! な、なに言ってんの」
思わず視線を逸らす。
頬が熱くなるのがわかった。
気づけば、目の前に立った守兄が私を見下ろしていた。
その視線が気になって、つい顔を上げる。
……初恋の人が、こんな近くに。
「星、待たせてごめん。ただいま」
次の瞬間、私は彼の腕の中にいた。
ふわりと、懐かしい匂いが鼻先をかすめる。
あたたかな温もりに包まれて、胸がじんと熱くなった。懐かしい。
遠い日の記憶が胸いっぱいに広がり、そっと目を閉じる。
そのとき、不意に顎を掴まれ、ぐいっと顔を上げられた。
でも、その仕草もどこか優しい。
視界いっぱいに、守兄の整った顔が迫る。
ドキ、ドキ、ドキ。心臓が破裂しそう。
「あっ、あの」
何か言おうとしたのに、声が出ない。
まるで魔法にかけられたみたいに、体が動かない。
彼の顔が、どんどん近づいてきて――
ひ、ひえ〜。
ぎゅっと目を閉じた。
「僕、いるんだけど?」
後ろからの声に、はっと我に返った。
慌てて守兄から距離を取る。
顔も体も、火がついたみたいに熱い。
わ、私ったら……いったい何を。
「あれ? もしかして太陽?」
守兄がふわっと笑う。
その視線の先には、太陽が立っていた。
二人はしばらく見つめ合い、そして同時に笑った。
「守兄、だよね? ひさしぶり!」
太陽が嬉しそうに飛び跳ね、そのまま守兄に抱きつく。
「おお、太陽! 立派になったな」
二人はぎゅっと抱き合い、再会を喜び合った。
ひとしきり守兄を堪能した太陽が、ウキウキ顔で質問攻めにする。
「ね、いつ帰ってきたの? 向こうはどんなだった? 彼女できた? 今は何してるの?」
矢継ぎ早の問いに、守兄が少し押され気味に笑った。
「ははっ。太陽は相変わらず元気いっぱいだなあ。
二人とも、変わってなくて嬉しいよ」
そう言って、守兄が私に顔を向ける。
昔と変わらない、あの優しい笑顔。
懐かしくて、私もつい笑みを返した。
「あの、こんなところで立ち話も何だし。よければ家に寄ってかない? ぼろ家だけど」
今にも崩れそうな木造の一軒家を指差す。
そう、おんぼろだけど一軒家。しかも小さいながら庭つき。
……なかなか、いいでしょ?
守兄は家を見つめ、目を細めて嬉しそうに頷いた。
「ああ、そうだな。積もる話もあるし、あがらせてもらおうかな」
にこりと笑うその顔に、また胸が高鳴る。
ひさしぶりに見る守兄の姿に、私はすっかり乱されていた。
彼の熱いまなざしが突き刺さる。
ちょっと、なに?
そんなふうに見つめないで。ドキドキが止まらないじゃない。
やっぱり初恋の人って最強説?
いやいや、だめ! 私にはあきらという素敵な彼氏がいるんだから。
何やってんの、しっかりしなくちゃ。
よし。気合を入れ直して、私は四年ぶりに再会した初恋の人を、ぼろ家へと案内した。




