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第8話 犬やばい本当にやばい

「来る。正面。大きい。さっきより、嫌な感じ」


暗がりから、犬が出てきた。


犬だ。ダンジョンハウンド。


なのに、違う。


目が、違う。


赤いんじゃない。

血走っている。白目に赤い筋が走って、瞳が異様に小さい。

よだれが糸を引いて、口が笑ってるみたいに裂けている。


昨日の犬より、一回り大きい。


『そいつ強化個体だ!ただの犬じゃない、狂犬だ!』

『うわ出た、初心者殺し』

『狂犬来たぞ!』

『攻撃頻度がバグってるやつ!』

『撤退できるなら今!…いや通路狭い!』


「初心者殺し…」


私の喉が乾く。


ほのかが、矢をつがえる手に力を込めた。

笑顔が消えている。ギャルじゃない顔。


狂犬が、一歩踏み出す。

その一歩が、速い。


速すぎて、歩きに見えない。滑ってくる。


「…来る!」


私は銀盾を構える。

杖は右手。

前衛魔法使い。盾持ち。

意味わからない構成だけど、いまはそれしかない。


狂犬が跳ぶ。


マジックアローを撃ちたかった。

でも詠唱のほんの一瞬が、命取りになる。


だから先に盾。


「っ!」


銀盾を斜めに出す。

受けるんじゃない。流す角度。


牙が盾に当たり、滑る。

でも昨日より重い。衝撃が腕に残る。

狂犬は滑ったのに止まらない。


そのまま二段目が来る。


速い。連続。まるでスキル連打。


『二段噛みきた!』

『狂犬は連撃!』

『パリィ!パリィ狙え!』

『しずく、ガンギマリ入れ!』


(ガンギマリって言うな…!)


私は視界の端で、ほのかが後ろに下がるのを確認した。

距離を取る。正しい。


「ほのか、撃てる!?」


「撃つ!」


ほのかの声が鋭い。


《ダブルショット》


矢が二本飛ぶ。

でも狂犬は避けた。

昨日の犬は当たった。こいつは違う?。


「…避けた!?」


ほのかが唇を噛む。


狂犬の意識が一瞬ほのかに向いた。

私が、前に出る。


(行け。前衛。壁になる)


私は杖を突き出して、短い言葉。


「……マジックアロー!」


光の矢が飛ぶ。誘導する。

狂犬の肩口に刺さる、はずだった。


狂犬は、首を振って逸らした。


矢がかすめて、毛が焦げるだけ。


『当たらねぇ!?』

『狂犬、回避高い』

『初心者殺しの理由それ』

『固定砲台にさせないやつ』

『近接で崩して当てろ!』


崩す。

銀盾の特殊効果、パリィ成功で崩しやすくなる。


私は息を吸って、感情を遠くへ追いやった。


怖い。

でも、計算する。


狂犬は連撃。

一撃目を“受け流した後”に、二撃目が来る。

二撃目の癖は…低い。


(低いのが来る)


私は一撃目をあえて浅く流し、二撃目に合わせて盾の角度を変える。


ここ!


銀盾が牙を弾いた。


《パリィ:成功》


狂犬の前脚が一瞬浮いた。

体勢が崩れる。


私は杖を踏み込みに合わせて振る。


「マジックブロウ!」


杖先が光る。

殴る。物理+魔法。詠唱なし。


頭じゃない。肩。

筋肉の動きを止める場所。


狂犬がよろける。


ほのかが即座に追撃する。


《ダブルショット》


今度は当たった。

矢が二本、脇腹に刺さる。


狂犬が吠えた。

吠え声が、痛みじゃなく、怒り。


血走った目が、さらに細くなる。


そして狂犬の動きが、もう一段階速くなった。


『狂犬、HP減ると加速する!』

『初心者殺しフェーズ2!』

『しずく、盾壊れるぞ!』

『撤退判断まだ!?』


撤退。


…できる?

通路が狭い。

背中を見せたら追いつかれる。


私は、ほのかの位置を確認する。

後ろ。まだ距離はある。

なら、足止めするしかない。


「ほのか、下がって!もっと!」


「しずくは!?」


「…私が、止める!」


言ってしまった。

格好いいことを。

現実の私は言えないのに。


ほのかが一瞬だけ迷って、頷く。


「分かった。無理なら叫んで。すぐ引く」


狂犬が跳ぶ。

私は盾を構え、わざと“受ける”。


衝撃が腕に来る。痛い。

でもHPは高い。耐える。


そして、二撃目。


私は全神経を盾の縁に集中する。


(ここだ)


《パリィ:成功》


崩れる。

今度は大きく。


狂犬の体が横に流れ、壁に肩が当たった。


「…当てる!」


私は杖を突き出す。


「マジックアロー!」


至近距離。誘導とか関係ない距離。


光の矢が、狂犬の目の横を貫いた。


狂犬が悲鳴を上げる。

動きが一瞬止まる。


そこへ、ほのかの矢が飛ぶ。


彼女は叫ばない。

でも引き絞る腕が震えている。


矢が喉元に刺さった。


狂犬が、ぐらりと揺れて、


それでも、前に出ようとする。


(まだ、動くの…?)


初心者殺し。

本当に殺しに来ている。


私は最後に、盾を押し付ける。


銀縁の盾で、顔面を押し込む。

狂犬の視界を潰す。呼吸を乱す。


そして杖で。


「マジックブロウ!」


二回。三回。

殴る。殴る。殴る。


狂犬の体が、やっと崩れた。


光になって消える。


静寂が戻る。


私は膝に手をついて、息を吐いた。

手が震えている。

でも頭は変に冷静だ。


『勝った…?』

『初心者殺しを初心者が倒すなw』

『しずく&ほのか、コンビ強すぎ』

『銀盾MVP』

『前衛メイジ、成立してて草』

『この二人、伸びるぞ…』


ほのかが駆け寄ってきて、私の腕を掴みかけて…触れる直前で止めた。

距離感を考えてくれてる。


「しずく、大丈夫?」


私は頷いた。

声が出ない。

でも、頷ける。


ほのかは小さく笑って、言った。


「うちさ…アーチャー1人じゃ無理だわ。今日、確信した」


私はちょろいので、その言葉だけでまた胸が熱くなる。


そして、床に何かが落ちた。


魔石。素材。

そして、見たことのない“札”みたいなもの。


コメント欄が息を呑む。


『ドロップ見ろ!』

『初心者殺し、レア落とすぞ』

『強化個体の報酬…来るか?』


私は震える手で、それを拾った。

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