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第57話 予兆

息を殺して、距離を詰める。


祭壇前。

祈るカエルもどきが4匹。


汚い声、儀式、呼び水。


止めるなら今。


ほのかが目線で合図を出す。

ミコトが小さく頷く。

しずくは盾を構え、はさみ剣を両手で握る。


まず、ほのかが動いた。

腰のホルダーから、踊り子の双剣を抜く。

物陰から飛び出しざまに、リズムよく投げ放つ。


《ダンシングソード》


踊り子の双剣が舞う。

風を纏った刃が、一直線に飛ぶ。

祈りで無防備な背に、正確に刺さる。


カエルもどきが振り返る暇もない。


その時には、ほのかはすでに射撃姿勢。

コンパウンドボウがの滑車が滑る。

矢が2本。


《ダブルショット》


首元へ連続、急所に突き立つ。


一匹は、声も出せず光になった。


視聴者が叫ぶ。


『確殺ムーブ!』

『ギャル、仕事が早い!』

『双剣→ダブルショットはやばい』


同胞が倒れたのを見た一匹が、銛を掴もうとした瞬間、ミコトの詠唱が通る。


《ホーリーロープ》


ぐるりと絡みつき、体を締め上げる。

カエルもどきが汚い声で暴れる。

でも動けない。


「今です、しずくさん!」


確殺、捕縛、動けるのは2匹。


一匹が奇襲気づき、立ちあがろうとする。

もう一匹が横へ回り込もうとする。


しずくは近い方を選ぶ。


迷わない。


両手で持ったはさみ剣を、全力で叩きこむ。


刃が挟むというより、重量と勢いで潰す一撃。


ぬめった白い皮膚が裂け、緑の体液が飛ぶ。

カエルもどきが声にならない声を上げ、膝が落ちた。

そのまま無防備な頭へ刃を落とす。


祈りは、途切れた。


『祈り断った!!』

『はさみ剣、暴力すぎるwww』

『しずくパワー型すぎる』


だが——最後の一匹が、異様に反応した。


祈りを断たれた怒りか、

儀式が失敗する恐怖か。


白い皮膚が、じわりと赤く染まる。


そして、左手に光が集まる。輪になる。


【聖属性魔法 光輪】


「ぐぇぇぇ!!」


汚い声が、礼拝堂に響く。


ほのかが叫ぶ。


「最後、魔法くる!」


「一匹拘束中です!残りの処理をお願いします!」


しずくは盾を構え直す。

息を吸う。視線を固定する。


(ここからが本番)


拘束されたカエルもどき。


ホーリーロープに絡め取られ、もがいている。


ほのかは焦らない。


呼吸を整えて、弓を引く。

狙いは一箇所。


大きな目、その奥の脳。


ゆっくり、確実に。


「ごめん」


そして放つ。


矢は一撃で頭を貫いた。


お手本のような、完璧なヘッドショット。


拘束されたカエルもどきは、声を出す暇もなく光になった。


『ほのか冷静すぎる!』

『ヘッドショット職人』

『アウトレンジ最強』


だが、止まってる暇はない。


最後の一匹。

赤く染まったカエルもどきが放った、光輪。


怒りの輪が、しずくへ迫る。


しずくは盾を前へ。


銀盾の縁が淡く光る。

迷わず、角度を合わせる。


光輪を弾く、真上に。

光が天井へ流れ、壁画を滑る。

そのま柱へと突き刺さり、光が散って消える。


『光輪パリィwww』

『盾しずく堅すぎる』

『ピタ○ラスイッチかよw』


光の軌跡を一瞥したカエルモドキが、しずくを睨む。


そのまま、まさかの側転。


しかも妙に滑らか。


側転しながら一気に距離詰めてくる。


体当たり。


絵面がひどい。

礼拝堂で、ぬめった白いカエル人間が側転タックル。


しずくは咄嗟に銀盾前に出す。

が、重い。しずくの体が押される。

足が滑る、踏ん張りが効かない。


ミコトが叫ぶ。


「しずくさん!受け切らないで、崩してください!」


ほのかも声を上げる。


「しずく!体当たりは横!横にいなして!」


(体重と勢いで潰しに来てる)


しずくの目が、獲物を捉えた。


側転タックル。


シュールなのに、威力は本物。


しずくは一歩も退かない。


銀盾を受けじゃない、流し。


斜めに合わせる。


カエルもどきの体当たりが、盾の面を滑っていく。

勢いだけが前へ抜ける。


体勢が崩れた。


しずくははさみ剣を両手で握り直す。

刃を開く。


そして、挟む。


ぬめった白い胴体を、はさみ剣が噛む。

骨か、筋か、嫌な感触が手に伝わる。


しずくはそのまま——ぐるん、と体を捻った。


合気道の捌きに近い。

受け流して、重心を奪って、投げる。


ただし相手は人じゃない。

ぬめったカエルもどき。


でも、投げる理屈は同じ。


「っ!」


しずくは腰を回し、壁へ放り投げた。


肉が潰れる。嫌な音。


礼拝堂に、ひどい音が響く。


カエルもどきが壁に叩きつけられ、

そのまま崩れ落ちた。


緑の液体が、じわりと石壁を染める。


沈黙。


ほのかが口を開けたまま固まってる。


「…しずく?」


ミコトも呆然。


「…投げ…た?」


『パワフルすぎるwww』

『JKの投げじゃない』

『はさみ剣で挟んで壁ドン(物理)』

『ゴリラじゃねえか(褒め言葉)』

『闇落ちしてない?』


しずくは息を吐いた、今だけは自分が怖い。


(やった…倒した…)


床に落ちるのは、いつもの光。


魔石、素材。

そして、ローグライクの文字列が浮かぶ。


ローグライクドロップ【黄色い葡萄】

黄色く熟れた葡萄。

投げつけると、対象を腐食させる。

※腐食ダメージ(中)


一秒遅れて、コメント欄が大爆笑。


『ぶどうwwww』

『絶対腐ってるやつwww』

『黄色い葡萄って字面がもうアウト』

『食べたらどうなるんだよ』

『投擲武器:ぶどう』


ほのかが怪訝な表情。


「ぶどう、武器なの…?」


ミコトが冷静に補足する。


「腐食ダメージ中は普通に強いです。見た目が終わってますが」


しずくは葡萄を見つめて、そっと思った。


(投げつける…)


(私…投げ得意)


嫌なシナジーが生まれた。


そのとき、胸元から眠そうな声。


「ぶどう…甘い?」


「…食べないほうがいい…と思う…」


セレネがだるそうに一言。


「…じゃあ…コーラ…」


台無しである。


でも、その台無しが、いつもの日常に戻してくれる。


三人は魔石と素材を回収し、

祭壇の前へ目を向けた。


祈りは止めた。

“上”は、まだ起きていない。


戦利品を回収。


黄色い葡萄は、とりあえずミコトが持つことになった。

MP消費なしの攻撃手段は貴重だ。


ミコトが葡萄をそっとポーチに入れる。


「これは緊急用に取っておきましょう」


ほのかがぼそっと。


「食べたらダメだよね…絶対」


胸元から、眠そうな声。


「ぶどう…」


しずくが小声で。


「ダメ…」


そして、礼拝堂の奥。


2階への階段が見えた。


月明かりが窓から差し、

階段の手すりに細い光が走っている。


“進め”って言ってるみたいに。


だが、現実は数字だ。


HP:全員問題なし


MP:ほのか・ミコトが半分切った。


(3層はチュートリアルじゃない)


(上に“いる”ってセレネも言った)


ほのかは階段を見て、顔を綻ばせた。


「2階、行けるよね?まだ時間あるし、素材もクエストも」


ミコトは即、ブレーキを踏む。


「行けます」

「でも戻れるか、は別です」


冷静な分析。


「私のMPが半分。ホーリーライトを連発すると一気に枯れます」

「ほのかさんもダブルショットを使う局面が増えるほどMPが落ちます。」

「そして、ここは礼拝堂。地下と違ってアンデッドだけとは限らない」


ほのかが唇を噛む。


「…じゃ、引く?」


ミコトが頷きかけた、その時。


しずくが階段を見つめたまま、小さく言う。


「ちょっとだけ…上見たい」


進むでも退くでもない、第三案。


2階に上がる前に、階段の踊り場まで偵察


そこで気配察知と罠感知を入れて、

ヤバそうなら即引き返す


ほのかが目を輝かせる。


「それ!それがいい!欲だけど、無謀じゃない!」


ミコトも納得する。


「賛成です。情報はMPより価値がある場合があります」


胸元から、寝起きの声。


「…まだやんの?」

「…めんどい」


月の魔導士は、役に立たない。


『偵察えらい!』

『MP半分は引き際だぞ』

『2階チラ見だけでも価値ある』

『セレネ起きろwww』


三人は頷き合い、足音を殺して階段へ向かった。


一段ずつ、慎重に。


礼拝堂の夜は静かだ。

静かすぎて、逆に怖い。


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