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第42話 ダンジョンって何?

カウンター横。手続きの待ち時間。


ほのかが、受付嬢に身を乗り出した。


「そもそもダンジョンって何なんです?」


ミコトも静かに頷く。


「ゲームみたいなシステムメッセージ」

「そういうものだと思っていましたが、よくよく考えたら違和感が」


しずくは小声で付け足す。


「…私も…なんか…当たり前だと思ってた」


受付嬢は一瞬黙って、壁の時計を見た。


「…まあ、いいか」


「一回、レクチャーしてあげる。来て」



四人で奥の談話室に入る。外の騒がしさが遠くなる。

扉が閉まる音がやけに重い。


受付嬢は椅子に座らず、立ったまま言った。


「先に大前提。学校で触りは習ってると思うけど」

「そもそもダンジョンとは何かから話すわね」


ほのかがごくりと唾を飲む。

ミコトは背筋を伸ばす。

しずくは前髪の奥で目を上げた。


「1970年。突如世界に現れた、虹色のゲート」


受付嬢の声は淡々としてるのに、内容が重い。


「各国が調査を開始。日本も自衛隊をゲート内に送った。そこで分かったのが」

「ゲートに入った者は 職業 と 固有スキル を得る」


「調査の末、火器は持ち込めない」

「剣や弓みたいなものしかダメだと分かった」


ほのかが顔をしかめる。


「最初から詰ませに来てる…」


「そうね。でも、そこで終わらなかった」


「ダンジョンで手に入る魔石と魔物素材が世界を変えた」


魔石による エネルギー革命

魔物素材による 技術進化


「自国内でエネルギーが賄えるようになって、ある意味世界は平和になった」

「そのかわり、産油国は死んだ」


空気が少し冷える。


「ダンジョンの正体は分からない、いまだにね」

「研究の末、意見は大きく二つに割れてる」


【異世界へのゲート派】


魔石や素材が、現実に持ち帰れる説明は強い

でも、システムウィンドウ/システムメッセージが説明できない


【VR・ゲーム的空間派】


システム表示の説明は強い

でも、現実へ持ち帰れる魔石や素材の説明ができない


ほのかが思わず言う。


「どっちも決め手がない」


ミコトが静かに呟く。


「矛盾が、残りますね」


受付嬢は少しだけ声の調子を変える。


「で、冷戦の70年にダンジョンが出現した」

「初期は自衛隊が主力で探索して、礎を作った」


「だからというか、今も自衛隊は人気高いでしょ」

「資源問題を解決した立役者だから、当然と言えば当然よね」


受付嬢が、ホワイトボードに要点を書いていく。


・今も自衛隊には探索部隊がいる

・世界トップクラスの探索者部隊がある

・国は資源確保のため探索者を推奨

・野党もマスコミもダンジョンに肯定的(魔石が欲しいから)

・資源問題が解決した日本は、ダンジョン出現以降国力が跳ね上がった

・魔石・素材研究は世界一位

・アメリカとは 従属ではなく対等な同盟 に変化した


しずくは、少しだけ背筋が伸びた。


(おじいちゃんが、探索者だった頃…こういう時代だったんだ)


ほのかが、核心をもう一度投げる。


「結局、システムメッセージって何なんです?」


「分からない」


即答。


「誰にも分からない。協会にも、国にも、研究者にも」


少しだけ笑って、肩をすくめる。


「便利だから使ってる。それ以上は無理ね」


談話室に沈黙が落ちる。


ミコトが、静かに言った。


「分からないけど、確かにそこにある」


ほのかが腕を組む。


「なんか、RPGのUIだけ置いてある世界って、逆に怖いね」


しずくは小さく呟いた。


「…でも…教えてくれるのは…助かる」


受付嬢は頷く。


「そう。だから3層から採取ができるようになるけど、システムメッセージが教えてくれる」

「草花も鉱石も、うっすら光ってるから見れば分かる。ダンジョン固有の植物・鉱物ね」


四人の間に、同じ結論が落ちた。


分からない。

でも、進むしかない。



受付嬢の話は、そこで終わらなかった。


少しだけ声を落として、でもはっきりと言った。


「いま、人類が到達してる最深部は…35層」


ほのかが目を丸くする。


ミコトは即、計算する顔になる。


「それでも、全体の構造が不明なんですね」


受付嬢が頷く。


「正直、ダンジョンがどこまで深いのかは不明」

「終わりがあるのかすら、断言できない」


「でも、みんな思ってる。ダンジョンの本当の最奥、最深層」

「そこには必ず、ダンジョン解明の鍵、根幹があるって」


ほのかが、冗談を言う余裕が消えていた。


「ラスボス部屋みたいな…」


ミコトも小さく頷く。


「システムそのものの答えがある可能性」


受付嬢は、そこで少し笑った。

笑ったけど、軽い笑いじゃない。


「そして、そこにたどりついた時——また世界は変わるってね」


しずくは前髪の奥で、息を呑んだ。


世界は、もう一度変わる。

1970年の虹色ゲートみたいに。


その言葉が、遠い話なのに、妙に現実味を持って胸に刺さる。


受付嬢は、しずくを見る。

目が、いつもの事務的な目じゃない。


「佐倉さんのローグライク。ひょっとしたら…それがキーになるかもね」


しずくは一瞬、言葉が出なかった。


(私が…?)


【友達が欲しかっただけ】の自分が。


そんな大きい話の鍵になる?


ほのかが、しずくの肩を軽く叩く。


「やば。しずく、主人公じゃん」


「…可能性はあります」

「ローグライクが“観測者”に反応し、条件で世界の挙動が変わる。あれは普通の固有スキルとは違う」


受付嬢が頷いた。


「断言はしない。でも、国も協会も注目する」


しずくは、盾の縁の淡い光を思い出した。

呼吸に合わせてくれる相棒。

そして、配信越しに見えるシステムメッセージ。

最後に、あのやる気のない声。


分からないものが、確かに働いてる。


しずくは、小さく、でも今度は逃げずに言った。


「私…怖い…でも…」


視線を上げる。


「友達と一緒なら行ける…かも」


「行ける。うちらで行ける。まず3層から!」


「はい。最深層は遠い」

「でも、積み重ねれば辿り着けます。安全第一で」


受付嬢は最後に、いつもの言葉を、少しだけ優しく言った。


「頑張りなさい。世界を変えるかもしれないんだから」


しずくの心臓が、どくんと鳴った。


最深到達35層、最奥は不明。


その先に、何かがある。

そして。

その鍵の一つが、【ローグライク】かもしれない。



受付嬢が、手をぱんっと叩いた。


「まあ、ついでだし。初級探索者になったし。ここで初級探索者用の講義もしちゃうわ」


ほのかが即座に姿勢を正す。


「先生!お願いします!」


しずくは小さく頷く。

ミコトはメモの準備をした。


「探索者のランクは大きく四つ」


・駆け出し

・初級

・中級

・上級


最初は駆け出し。

2層突破で初級。

5層突破で中級。

10層突破で上級ね。


ほのかが指を折る。


「2、5、10、わかりやすい!」


「で、さっきも言ったけど、現在の世界で一番深い階層は35層。ちなみに日本よ」


ミコトが静かに補足するように呟く。


「上級の幅が広いですね」


「そう。上級は11〜35層になるから、ピンキリになるわね」

「上級=最強じゃない。11層の上級と、35層の上級は別物よ」


「…上級こわい」


受付嬢は次の話に移る。


「3層までは、日帰りできるくらいの規模。でも」


そこで、声が少しだけ重くなる。


「4層から、すごく広くなる。まず1日じゃ無理」


ほのかが目を丸くする。


「え、遠足じゃなくてキャンプになるやつ?」


ミコトが真顔で頷く。


「補給、休息、撤退経路…全部変わりますね」


受付嬢が指を立てる。


「で、ここから出てくるのがセーフエリア」


各所に小さなゲートがある


その周囲は、モンスターが入れない。

湧き(リポップ)もない。

そこから協会に戻れる。

ゲートに端末(探索者アプリの登録端末)をかざすと登録できる。

次回はそのゲートから探索開始になる。


ほのかが前のめりになる。


「え、チェックポイント!?」


「そういうこと。だから4層以降は、セーフエリアの確保が超重要になる」


ミコトが即メモする。


受付嬢が、さらっと言った。


「セーフエリアはまあまあ広くて、露店とかもあるわよ」


「え、ダンジョンの中に屋台!?」


「ある。食べ物、回復屋、資材の補充とかできる」

「あと情報。ここが一番高い」


ミコトが頷く。


「情報の価値が上がる環境ですね…」


しずくは小声で。


「ダンジョンの中でも…お店…」


「いい?3層までは帰る前提で戦える」

「4層からは、帰れない前提が混ざる」

「準備と判断が命よ」


三人は静かに、だが力強く頷いた。

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