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第31話 ミスリルの使い道

ゲートへ飛び込むと、空気が変わった。

ダンジョンの湿った匂いが消えて、協会の乾いた空気になる。


受付嬢が三人を見て、いつもの顔で目を細めた。


「おかえり。全員揃ってる。よし」


ほのかが胸を張る。


「巣穴、クリア!主もミミックもやった!」


「はいはい…で?」


受付嬢の視線が、ほのかの手元、鉱石に止まる。


「おお、ミスリルじゃん。おめっと」


ミコトが丁寧に頭を下げる。


「ありがとうございます」


受付嬢がふっと笑って、でも釘は刺す。


「けど、気は抜かないこと。ミスリルは高価だからね、狙われる事もあるんだから」


ほのかが真顔で頷く。


「わかってる。だから今から会議」



帰還報告を終え、三人は協会の休憩スペースの端に座った。

ミコトがノートを開く。議事録係、発動。


「本日の議題:ミスリル鉱石の使途」


ほのかが手を挙げる。


①取っておく

②誰かの装備を作る

③しずくの盾強化


「このへん?」


しずくは前髪の奥で、いったん深呼吸。


(欲しいけど、独り占めは怖い)


ミコトが提案する。


「私は、佐倉さんの盾強化を第一候補にします」

「理由はパーティ全体の生存率が上がるから、ただし」


ミコトがペン先でトントンと紙を叩く。


「工房選びと、費用、納期、強化の内容を確認してからですね」

「すぐ決めずに、協会の信頼できる先を紹介してもらいましょう」


ほのかがにやっと笑う。


「受付さんに聞こ。あの人、絶対当たりの職人知ってる」


しずくは小さく頷いた。


「盾…強くする」

「でも…三人で…決める」


ミコトが微笑む。


「はい。三人で決めましょう」




協会のカウンター。

受付嬢は仕事の手を止めず、三人の顔をちらっと見る。


「で?ミスリルどうする会議は結論出た?」


ほのかが手を挙げる。


「盾!しずくの盾強化したい!おすすめの職人さん!」


しずくは横で小さく会釈。

ミコトは丁寧に頭を下げる。


受付嬢は、当然の顔で頷いた。


「盾の強化が上手い職人?そりゃ知ってる」


しずくは前髪の奥で思った。

(受付さん万能)


受付嬢は、指を二本立てた。


「ルートは二つ」


「メーカーに強化依頼」


ほのかが聞き返す。


「企業?」


「有名どころは、強化プランのラインも持ってる」

「協会経由なら手続きも早いし、見積もりも早い。納期も読める」


ミコトがメモしながら整理する。


見積もりが早い


工程が安定(品質もブレにくい)


値段:そこそこ(良心的ではあるが安くはない)


受付嬢が釘を刺す。


「ただし、無難に強くするのが得意」

細かい癖、受けと流しどちらに寄せるとか、そういうのは大雑把になる」



受付嬢はもう一本の指を立てた。


「もう一つは、協会提携の個人鍛冶師」


ほのかの目が光る。


「職人さん!」


「そう。細かいオーダーができる」

「パリィしやすい縁にしてとか、握りの角度を微調整とか、そういうの」


ミコトが頷く。


「しずくさんの強みと噛み合いますね」


「その代わり、わりと高い」

「時間もメーカーよりは読みにくい。職人一人だから」


ほのかが顔をしかめる。


「高いのかぁ…」


「でもね」


三人が身を乗り出す。


「強化で残ったミスリルを提供するって条件なら、格安でやってくれる可能性は高い」


しずくがぽかんとする。


ミコトがすぐ理解する。


「素材の端材が鍛冶師にとって価値がある…研究や別案件に回せる、と」


「そういうこと」

「ミスリルは“数”が正義。端材でも欲しい奴は多い」


ほのかがにやにやする。


「じゃ、個人鍛冶師ルート強いじゃん。しずくの盾、こだわりたいし」


しずくは、少しだけ目を伏せる。


(こだわる…私の盾…)


「受付さん、個人鍛冶師さんの評判は?」

「盾の“受け”と“流し”の調整が上手い方ですか」


「バックラーみたいな小盾の“角度”にうるさい」

「合う奴にはめちゃくちゃ合う」


ほのかがしずくを見る。


「合うじゃん。しずくの銀盾、しっくり来るタイプでしょ」

「紹介して!個人鍛冶師!」


しずくは小さく頷いた。


受付嬢は、事務的にペンを取った。


「わかった。じゃ、紹介状出す。あと装備の持ち出し許可も」


目が少しだけ鋭くなる。


「あと。未成年だろ。保護者同伴な。持ち出し許可には印鑑もいる」

「佐倉忠義が来たら、話が早い」


しずくが、胸の奥で安心する。


(おじいちゃん、強い)


ほのかとミコトが頷く。


こうして、次の目的ができた。


盾を強くする。

それは、三人がもっと先へ行くための“土台”になる。



帰宅後、しずくは着替える間もなく話を持ち掛ける。

居間に正座して、紹介状を差し出した。


「おじいちゃん、これ…」


忠義は、黙って受け取る。

紙を見る目が、現役みたいに鋭い。


一行、二行、三行。

読み終わる前に、もう結論が出ていた。


「ほう」


「わしの知り合いじゃ」


しずくの声が裏返った。


「え、知り合い!?」


忠義は当たり前みたいに頷く。


「鍛冶師は探索者兼業の奴も多い」

「昔、一緒に潜ったこともある」


しずくの脳内で、鍛冶師=山奥で鉄を叩く職人のイメージが崩れる。

普通にダンジョン仲間だった。


忠義は紹介状を畳に置いて、決める。


「明日の放課後にでも行くぞ」


「え、明日!?」


「早い方がいい。鉄は熱いうちに打てだ」


しずくは息を呑んで、こくこく頷いた。


「う、うん」


忠義がにやりと笑う。


「驚くな。世間は狭い」



しずくは自室に戻り、スマホを握る。

ネットなら喋れる。ここは得意分野。


ほのかにL〇NE。


【しずく】おじいちゃんに相談した

紹介状の人、知り合いだった

明日の放課後いけるって


即レス。


【ほのか】え、強すぎw了解!明日行こ!

ミコトにも言うね!


ミコトにも送る。


【しずく】明日放課後、鍛冶師さんとこ行くことになった。

おじいちゃん知り合いだった。

3人で行ける?


すぐ返ってくる。


【ミコト】承知しました。

初対面のご挨拶も準備します。


しずくは小さく笑って、次のメッセージを打つ。


【しずく】ついでに、ミコトをおじいちゃんに紹介したい

いい?


【ミコト】はい。よろしくお願いします。


しずくはほっと息を吐く。


明日も仲間と一緒に動ける。


鍛冶師に会いに行く。

盾を強くする。

そして、ミコトを家族に紹介する。


しずくの世界が、少しずつ広がっていく。

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