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第30話 次への第一歩

ミミックが歯を鳴らしながら、じり…と後ろへ下がった。

そして、大きく口を開けた。


箱の中が見える。

粘ついた舌の付け根。柔らかい肉。

そこを狙えと言わんばかりに。


視聴者が叫ぶ。


『口開けた!チャンス!』

『撃てええええ!』

『ほのか怒りのターン!』


ほのかの目が、完全にキマってる。


さっき締め上げられた恨み。

そして、配信映えの本能。


「…箱、調子乗んなよ」


小声なのに、圧がある。


ほのかは弓じゃない。

まず、腰のホルダーへ手を伸ばした。


踊り子の双剣。


《ダンシングソード》


風の軌跡。

双剣が回転しながら、ミミックの口の奥へ吸い込まれる。


そのまま舌を切り刻む、物理的な刃と風の刃が口内を寸断する。


柔らかいところを裂く音。

ミミックがびくんと痙攣する。


ほのかの手はもう弓に移っていた。


《ダブルショット》


双剣がほのかのホルダーへ、機械みたいに収まる。


二本の矢が、さっき裂けた場所へ追い打ち。

口内へ。急所へ。確実に。


ミミックの口がガクン、と閉じかける。


「…閉じる…!」


ミコトが即、追撃の指示。


「今です!口が閉じる前に、もう一射!」


ほのかが歯を見せて笑う。


「任せて、ドドメ!」


《ダブルショット》


2本の矢が閉じかけた口内に吸い込まれる。


ミミックの体が跳ね、痙攣し、歯のカチカチが止まる。


最後に舌を力なく垂らすと、霧みたいに消えていった。


しずくが息を吐く。


「勝った…?」


「はい。討伐完了です」


ほのかは弓を下ろし、まだ少し怒ってる顔で言った。


「当たり前。うちを締めた罪、重いから」


コメント欄が爆発する。


『ダンシング→ダブルは芸術www』

『ギャル強すぎて草』

『これが踊り子の双剣の正しい使い方』

『ミミック成敗!』

『箱、開ける前に殺されたw』

『ほのかの「調子乗んなよ」が刺さる』


「…ほのか…かっこいい」


ほのかが一瞬だけ照れて、すぐ強がる。


「今さら?」


ミコトが小さく笑う。


「では。ミミックのドロップを確認しましょう」


ミミックが霧みたいに消えた後、床に残ったのは。


いつもの魔石。

いつもの素材。


そして、鈍い銀色の塊。


《レアドロップ:ミスリル鉱石》


しずくが、思わず呟く。


「ミスリル…?」


ほのかの目が見開く。


「ミスリル!?」


ミコトも即座に反応した。


「ミスリル!本当に出るんですね…」


コメント欄、爆発。


『ミスリルきたああああああ!!』

『中級装備の第一歩!』

『ミスリル武器は正義』

『箱を倒してミスリルは熱い』


ほのかが手袋越しに鉱石を持ち上げる。


軽い。

見た目より軽いのに、硬そうな密度がある。


「これ、マジで軽い…」


ミコトが頷く。


「ミスリルは軽くて硬い。さらに魔力を帯びていて、物理が通りにくい敵にも通ると言われています」


しずくは前髪の奥でじっと鉱石を見る。


(ゲームの素材、現実にあるの変な感じ)


ミコトが続ける。説明が速い。


「ミスリルはレアですが、ダンジョンでは比較的“現実的に集まる素材です」

「いわゆる中級探索者がよく使う定番装備の素材になります」


ほのかがにやっとする。


「つまり、うちらも“中級”の入り口に立ったってこと?」


しずくが小声で突っ込む。


「まだ駆け出し…」


ミコトが真面目にまとめる。


用途①:武具の強化(既存装備のアップグレード素材)


用途②:ミスリル武具の作成(軽量・高強度・硬い敵に強い)


上位探索者でもサブウェポン採用が多い(物理が通らない相手への保険)


ほのかが頷く。


「盾、強化したいよね」

「しずくの銀縁、もう手に馴染んでるし」


しずくは、少しだけ強く頷いた。


「…うん…あれ…好き…」


視聴者も盛り上がる。


『銀縁バックラーをミスリル強化しようぜ!』

『ミスリル盾は硬いぞ』

『ほのかの弓もミスリル矢じり作れるのでは?』

『ミコトはミスリル杖?ローブ?』


「ただし、ミスリルは誰が持つかで揉めやすい素材でもあります」

「今回は、パーティ規約どおりに分配しましょう」


ほのかが即答。


「うん。3等分。もしくは共同資産で、しずくの盾強化に回すとか、相談して決めよ」


しずくは少しだけ口ごもる。


「私だけ…は…だめ」


ミコトが微笑む。


「大丈夫です。三人で決めましょう。誰かだけ得するは、パーティが壊れます」


しずくの胸が温かくなる。


(仲間だ)


ミスリルは、ただの素材じゃない。

“次の段階に進む”証みたいなもの。


そして、ミミックを倒したのは三人の連携。



ミスリル鉱石の余韻がまだ残っている。


ドロップを確認していると、ミコトの目の前に、淡い光のウィンドウが開いた。


《レベルアップ》


ミコトが一瞬だけ瞬いて、すぐ背筋を伸ばす。


「上がりました」


ほのかが即反応。


「ミコト!?レベル!?」


しずくも小さく言う。


「おめでとう、ミコト」


《白澤ミコト:ヒーラー Lv2→ Lv3》

《基礎ステータス上昇》


《ヒーラースキル:キュア習得》

【キュア:一人の毒・麻痺を回復。詠唱時間(中)】


「キュア!」


ミコトの声が、少しだけ弾んだ。


ほのかが拳を握る。


「ヒーラー基本セットきた!!」


視聴者も沸く。


『ヒーラー基本セット!』

『キュアは必須!』

『毒と麻痺が治るのデカすぎ』

『巣穴攻略で絶対必要になるやつ』


「これは重要です。ゴブリンの刃や罠で“毒”が入る可能性がありますし、下層ほど麻痺攻撃も増えると聞きます」


しずくが前髪の奥で頷く。


「安心…」


ほのかが笑って言う。


「ね、しずく。今後変な状態異常になってもミコトが治してくれるってさ」


しずくは小声で返す。


「変な状態異常…なりたくない」


ミコトが真面目に言い切る。


「なります(断言)」


「断言すなw」


ほのかがツッコミ、三人の空気が少し軽くなる。


ミコトは、ウィンドウを見ながら続けた。


「詠唱時間(中)なので、戦闘中の使用は時間が必要です」

「キュアを使うなら、しずくさんが壁。神宮さんが射線で削り。私が詠唱に入る合図を決めましょう」


しずくが頷く。


「キュア入る」


「はい。キュア入りますで」


ほのかが嬉しそうに言う。


「うちのパーティ、ちゃんとしてきたね」


しずくは小さく笑って、言った。


「ちゃんと…友達パーティ…」


ミコトが微笑む。


「はい。友達パーティです」


巣穴の主を倒し、ミミックを倒し、ミスリルを拾って、

さらにヒーラーが基本セットを揃えた。


次は、もっと深いところでも戦える。


手の中の蒼い鉱石が薄く輝いていた。


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