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第26話 ローグライクの新機能

図書準備室。

紅茶の湯気。クッキーの香り。

ミコトのノートは、ほぼ作戦書だった。


ほのかが椅子に座り直して、ワクワクした声で言う。


「明日、三人で潜ろ。目標は、あのゴブリンの巣穴攻略!」


しずくが一瞬止まる。

“巣穴”って単語が、昨日の阿鼻叫喚を連れてくる。


ミコトも頷いた。


「巣穴は…ボス部屋とは逆方向ですね。協会のマップにも危険区域の印がありました」


ほのかがにやっと笑う。


「でもさ、巣穴の奥に宝箱あるらしいんだよね。噂。噂だけど」


宝箱。

それだけで胸が少しだけ躍る。


(ロマン…)


ミコトがペンを置いて、きっぱり言った。


「結論から言います。明日は攻略ではなく、制圧しながら宝箱確認が現実的です」


「開けられそうなら回収。無理なら撤退。欲張らない」


ほのかが「うっ」となる。


「優等生の正論パンチ」


しずくが小さく頷く。


「…欲張ると…死ぬ…」


宝箱はロマン。

巣穴は地獄。

でも三人なら、行ける気がした。




探索者協会。

カウンターの前に、三人が並ぶ。


受付嬢が三人を見て、少しだけ表情を柔らかくした。


「今日から三人ね」


ほのかが胸を張る。


「はい!巣穴、いきます!」


受付嬢の目が細くなる。


「欲張るなよ」


ミコトが即答する。


「はい。撤退基準は共有済みです」


「よろしい」


受付嬢はしずくを見て、小さく頷く。


「佐倉さん。頑張りなさい」


しずくは喉が詰まりかけて、でも小さく言えた。


「…はい」


それだけで、少し強くなれる気がした。



ゲート。

三人は光へ踏み込む。


この世界では、一度到達した層へ直通できる。

だから、


2層スタート。


空気がまた変わる。

煙と油。生活の匂い。住んでる匂い。


しずくの視界に、ウィンドウが浮かぶ。


《職業:放浪者》

《本日の型:戦士型》

《初期装備:ロングソード/バックラー/革鎧》

《補正:STR↑/VIT↑/HP補正大》


「戦士型…」


タフなしずくが、さらにタフになる型。


バックラーを左手に構えた瞬間、身体が落ち着く。

剣の重さがちょうどいい。


(今日は、盾と剣の日)


ほのかが後ろで弓を軽く引いて感触を確かめ、ミコトは杖を握り直す。


そして、


ローグライクの無情な声が、今日は少しだけ頼もしく響いた。


《ローグライクアナウンス》

【3人パーティー】を確認。

規定を満たしましたので、パーティースキルを解放します。


1.パーティーメンバーのHP/MPを視認できるようになります。


2.パーティーバフ(小):パーティーメンバー全員に攻撃・防御バフが付与されます。(ローグライクのスキルレベル上昇で効果上昇)


3.条件未達成のため、発動できません。


「…え?」


ほのかが目を丸くする。


「パーティスキル!?なにそれ!」


ミコトがすぐに冷静に分析する。


「HPとMPの可視化…それは純粋に便利です」


「バフも…小ですが、十分に価値があります」


しずくは視界の端に、見慣れないバーが増えているのに気づいた。


ほのか:HP 100% / MP 100%

ミコト:HP 100% / MP 100%

しずく:HP 100% / MP 100%


(見える…)


安心感が、ひとつ増えた。


ほのかが笑って言う。


「ミコト、MP減ったらすぐ分かるね。無茶させない」


ミコトが頷く。


「はい。逆も同じです。しずくさんのHPが落ちたら、撤退ラインを意識します」


しずくは小さく言った。


「助かる…」


そして、3つ目。


【条件未達成のため、発動できません】


ほのかが首を傾げる。


「条件って何?まだ何かあるの?」


ミコトがノートを取り出しそうな顔になる。


「ローグライクの条件は、視聴者数や撃破数、撤退戦の成立など、状況条件の可能性があります」


「または、固定メンバーで一定回数の探索かもしれません」


しずくが前髪の奥で思った。


(まだ伸びしろがある…)


コメント欄も沸く。


『パーティスキル!?』

『HPバー見えるの強すぎ』

『バフまで付くのチートやん』

『条件未達成…3つ目何だ?』

『巣穴攻略フラグ立ったな』


しずくは剣を握り直し、バックラーを構えた。


(今日は三人)


守る。削る。癒す。

役割が揃っている。


そして何より。


誰かを置いていかないパーティ。


ミコトが小さく言う。


「行きましょう。入口まで静かに。走らずに」


ほのかが小声で返す。


「了解。宝箱は最後。生還が最優先」


しずくも頷く。


「うん…」


三人は足音を抑えて、巣穴へ向かって歩き出した。


巣穴へ続く通路は、昨日より静かだった。

静かすぎて、逆に怖い。


足音は抑える。走らない。息も小さく。


三人の視界の端には、互いのHP/MPバー。

それが“繋がってる”感じをくれる。


ほのかが、ぴたりと止まった。


「…いる」


声が、ほとんど吐息。


しずくも止まる。

ミコトも杖を握り直す。


曲がり角から覗いた先、広場。


焚き火跡。骨。雑な落書き。

巣の匂いが濃い。


そして、ゴブリンが4匹。


棍棒が2。

短剣が1。

弓っぽいのが1(矢筒は粗末だが、それでも弓)。


ほのかは目を閉じて、気配察知に集中する。


「奥の通路にもいる」

「数…はっきりとは…でも、まだいる。待機してる感じ」


ミコトが即、結論を出す。


「広場の4を短時間で処理しないと、奥が寄ってきます。

優先順位は…」


ミコトの指が一本立つ。


「弓持ちからですね」


ほのかが頷き、弓を上げた。


「弓持ち、うちが抜く」


しずくはバックラーを上げる。

戦士型の身体が、前に出ろと言っている。

でも出すぎない。


(釣って、狭いところで処理)


しずくが小声で言う。


「私…引っ張る…角まで…」


ミコトが頷く。


「はい。引いたらホーリーロープで止めます」


ほのかが小さく笑う。


「いいね、撤退戦のときと同じ構図」


しずくは息を吸って、足を一歩前へ。


でもその瞬間、広場のゴブリンが鼻を鳴らした。


「ギャ?」


“匂い”で気づいたかもしれない。


弓ゴブリンがこちらを見る。

矢をつがえ始める。


(やば)


ほのかの弓が、静かに引き絞られる。


「抜く」


≪ダブルショット≫


弓ゴブリンの肩に刺さり、動きが止まる。

でも倒れない。悲鳴があがる。


「ギャ!」


その声が、少しだけ響いた。


ほのかが舌打ち。


「呼ばれた?」


ミコトが即断する。


「広場の4、強行突破で瞬殺。奥が来る前に!」


しずくの体が熱くなる。

戦士型。タフ。前に出る。


バックラーを構え、剣を水平に。


「行く…!」


三人が同時に踏み出した。


広場の戦いは、短い時間で決まる。

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