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第20話 救出作戦

広場。


そこは巣の前庭みたいな場所だった。

崩れた柱。焚き火跡。骨。逃げ道が少ない。


そして、


小柄な女の子が、囲まれていた。


白いローブ。小さな杖。

フードが半分ずれて、頬が見える。

中学生くらい?少なくとも同学年には見えない。


ゴブリンは6。いや、奥にもう2。


武器は棍棒、短剣、石。

囲み方がうまい。逃がさない配置。


少女は震えながら杖を握り、壁際に追い詰められている。


震えた声が小さく響く。


「だ、だれか…!」


(助けないと)

(でも、8体)

(巣の近く)


怖い。


ほのかが、いつもより低い声で言った。


「…あいつら、置いてったんだ」


怒りが混じっている。ギャルの怒りは、静かで怖い。


コメント欄もざわめく。


『逃げた男2人クソすぎ』

『ヒーラー幼くない?』

『ゴブリン8はやばい!』

『撤退しろって…でも助けて…』

『しずく盾!ほのか射線!』

『双剣投げろ!』


しずくは双剣を握り直した。軽業が、体を前に押す。


ほのかが矢をつがえた。


「しずく、助ける?」


しずくの心臓が跳ねる。


少女の声が、もう一度震えた。


しずくの胸が、ぎゅっと締まった。


(私も、こわい)

(でも、あの子は一人だ)


昨日までの私なら、見なかったフリをした。

できないから。怖いから。


でも今は。


横に、ほのかがいる。


しずくは、小さく息を吸う、そして吐いた。


「助ける…!」


声が震えている。

でも、はっきり聞こえた。


ほのかが頷く。


「下がる、下がる!は、いつでも…」


「うん。危なかったら即言う」


広場の空気が張りつめる。

ゴブリンの視線が一斉にこちらへ向く。



しずくは一歩引いて、ほのかの肩に手を置いた。


「ほのか。双剣…使って…」


しずくが双剣をほのかに渡す。

踊り子の双剣が風の気配を纏い、ほのかの手に“収まる”ように渡った。


ほのかが一瞬だけ目を見開いて、すぐに笑う。


「了解」


しずくは代わりに、今日の初期装備を握り直す。


右手に短剣。左手に銀縁のバックラー。


バックラーを構えた瞬間。


胸の奥が、落ち着いた。


(うん)


双剣も良かった。強い。かっこいい。ロマン。


でも。


(やっぱり盾が安心する)


体が一番なじむ。腕の角度、重心、呼吸。

全てが、いつもの自分に戻る。


ほのかが左右の双剣をくるっと回す。

刃が光を反射して、風の気配が走る。


コメント欄が燃える。


『双剣ほのか!?』

『役割変更うまい!』

『盾しずくきた!安心感えぐい』

『ゴブリン8はやばいぞ!』

『あの娘を守れ!!』


ゴブリンが二体、こちらに突っ込んでくる。

短剣と棍棒。


しずくは盾を前に出しすぎない。

置くように構える。


まず棍棒が来る。重い一撃。まともに受けたら腕が死ぬ。


しずくは半歩、斜め前に出る。


盾の縁で外に流す。

衝撃を受けるんじゃなく、逃がす。


棍棒が空を切った瞬間、短剣のゴブリンが飛び込む。

速い。狙いは下半身。


しずくは呼吸を止めない。

視線を刃じゃなく、肩と腰に置く。


(来る角度)


銀盾がぴたりと合う。


銀縁が短剣を弾く。


ゴブリンの体勢がわずかに崩れた。そこへ。


ほのかの双剣が踊った。


《ダンシングソード》


刃が風を纏い、一本が弧を描いてゴブリンの足首を撫で切る。

血が風に舞う。

もう一本が追撃、頭が下がったゴブリンの、無防備な首に背後から突き刺さる。

踊る様に刃が返り、跳ね上がる。


「戻ってくるの、気持ちよすぎ!」


ほのかが叫ぶ。余裕がある。強い。


しずくは盾で残りの一体を押し返しながら、広場を見た。


囲まれていた少女が、まだ壁際で固まっている。

ゴブリンが二体、彼女の方へ戻ろうとしている。


(行かせない)


しずくは短剣を握り直して、盾を前に出した。


「こっち…!」


声は小さい。でも届いた。


ゴブリンがこちらを向く。

怒っている。獲物が変わった。


しずくの背中に、汗が流れる。怖いけど、落ち着いている。


盾があるから。

自分の形が戻ってきたから。


ほのかが後ろから言った。


「しずく、最高。やっぱ盾しずく、安心感バグ」


しずくは、ほんの少しだけ口元を緩める。


「うん…」


広場の戦いは、ここからが本番だ。



ゴブリンがまた、倒れる。

刃が風を巻いて戻ってくる。


でも、その戻り方が、さっきと違った。


ほのかの手じゃない。

腰のホルダーに、吸い込まれるみたいに収まった。


「…え?」


ほのかが一瞬、目を見開く。


次の瞬間、彼女の顔がひらめいた顔になった。

戦闘中にひらめくの、強い。


ほのかは短く、でも興奮を抑えた声で言う。


「ダンシングソードって、戻る場所を調整できる」


「え…?」


しずくが盾越しに聞き返す。


ほのかは、一瞬だけ腰を捻り、ホルダーの位置を指で触った。

その動作が、まるで“スイッチ”みたいに見えた。


「手に戻すのもできる。腰に戻すのもできる。つまり」


ほのかはもう試している。言葉より速い。


ゴブリンが二体、また少女の方へ戻ろうとする。


ほのかが、その“背中”を狙う。


《ダンシングソード》


右の短剣が大きくうねる。

風の刃が背中を裂く。


左の短剣が、もう一匹の足元から垂直に跳ねる。

巻き上がった風がゴブリンの足を絡めとる。


ほのかの両手は、空いた。


そのまま、弓を引く。


コンパウンドの滑車が静かに回る。

引きが軽い。エイムが安定する。


《ダブルショット》


矢が二本。

ゴブリン達の背中を貫く。


投げ捨られるように、ゴブリンが床に転がった。


絵面が、あまりにも美しかった。


投げて、戻って、即弓。

ギャル系JKがやるから余計に映える。


コメント欄が爆発する。


『うわああああああ!!』

『かっこよすぎて草』

『ダンシングソードからのダブルショット、反則だろw』


『戦術オシャレすぎる』

『絵になる…これが配信者…』

『盾しずくが前で支えてるのも完璧』


しずくは盾を構えたまま、内心で思った。


(ほのか、天才…)

(かっこいい…)


ゴブリンが怒り狂って、ほのかへ向きを変える。

切られ、射抜かれ、プライドが傷ついた。


「ギャギャギャッ!!」


三体が一斉に走る。

狙いはほのか。


(来る)


しずくは即座に一歩前へ出た。


「こっち…!」


銀盾バックラーを“置く”。

ゴブリンの短剣を弾き、棍棒を流す。


一体がしずくを迂回しようとした瞬間、しずくは身体をずらして進路を塞ぐ。

軽業の補正が効いている。間に合う。


ほのかが後ろで息を整えながら言った。


「しずく、ナイス壁!」


「うん…!」


しずくの返事が、いつもよりはっきり出た。

戦闘中は別人格。


ほのかは、もう一度。


《ダンシングソード》・《ダブルショット》


風と矢が、リズムみたいに繋がっていく。

まるで踊り。


踊り子の双剣の名前通り、武器が踊り、持ち主も踊る。


しずくは盾越しに、囲まれていた少女を見た。


少女はまだ震えてる。

でも目は、しずくとほのかを見ていた。


(今、助ける)


しずくは盾を上げて、前へ出た。


「大丈夫…!」


その言葉は、少女に向けた言葉であり、

同時に自分にも向けた言葉だった。

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