表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/43

第14話 ラストダンス

炎に包まれたワーラットが、ふっと息を吐いた。


…息?

ネズミが?

でも確かに見えた。熱い空気が揺れて、肩が上下した。


瀕死。


だけど終わりじゃない。


ワーラットの踊りが変わった。


今までの優雅な滑りじゃない。

リズムが、荒い。

踏み込みが、重い。

“理性”は残したまま、身体だけをぶん回すみたいな狂気のダンス。


短剣が、風を切る音が変わる。


間隔が短い。拍が速い。


『ラストダンス来た!』

『やべえええええええ』

『ここで事故るやつ!!』

『しずく落ち着け!!』

『ほのか射線確保!』


ほのかが後ろで一歩ずれる。

弓の角度が微調整される。

機械的に安定したリリースが、狙う場所を固定する。


ワーラットが踏み込む。


一閃。二閃。三閃。


私は盾で受ける、重い。

盾の上からHPが削られるのが分かる。

受け続けたら、負ける。


(取るなら、中心)


私は銀盾を前に出さない。

体の近くに置く。

刃の軌道に盾を合わせるんじゃない。

刃が戻ってくる“中心”に盾を置く。


ワーラットの短剣が、交差する。


その交点に銀盾の縁が来る。


「っ!」


金属音が重なって、部屋の空気を裂いた。


《パリィ:成功》


成功の表示が出た瞬間、銀盾の特殊効果が噛み合う。


ワーラットの両腕が、一瞬だけ開いた。


それだけで十分だった。


「今!!」


ほのかの声が鋭く響く。


《ダブルショット》


コンパウンドボウの弦が鳴り、矢が二本、同じ軌道で飛ぶ。

命中精度が安定しているおかげで、ズレない。


一発目が胸を貫き、二発目が肩を引き裂く。

血が舞う。ワーラットの身体が、回転しかけたまま止まる。


完全に体勢が崩れた。


ワーラットの短剣が床に落ちて、小さく鳴る。

膝が落ちる。

頭が少し揺れて、落ちた。


私は杖を構えた。


(終わらせる)


「マジックブロウ!」


右手を振り上げる。

無防備な頭へ振り下ろす。


肉を潰す感覚。


踊りが完全に、止まった。


ワーラットが光になって崩れ、静かな粒になって消える。


《ボス撃破:1層》


数秒遅れて、コメント欄が爆発した。


『最高のパリィ!!!!!!』

『銀盾パリィ回、伝説更新』

『ほのかのダブルショットえぐい!!』

『コンパウンドボウTUEEE(2回目)』

『前衛魔法使い、完成してて草』

『強化ボス倒したぞおおおお』

『やべええええええ(歓喜)』


私は息を吐いて、膝に手をついた。

腕が震えている。

でも、指は盾を離さない。


ほのかが駆け寄ってきて、私の肩に触れかけて…触れる前に止めた。

いつもの距離感。


「しずく…今の、やばかった」


「ほのかの…矢も…」


「うん。うちも頑張った。でも、あのパリィが全部」


ほのかが笑う。

私は前髪の奥で、少しだけ笑う。


(勝った)

(強化ボスに)

(友達と)


床に、光が残っている。


ボスドロップ。


きっと、良いものが落ちてる。

でも、今は。


ほのかが小さく言った。


「祝勝会、またやる?」


私は頷いた。


「うん…また…明日も」


言ってから、自分でびっくりした。

明日を口に出せた。


ほのかが眩しい笑顔で言う。


「明日も友達!」


その言葉が、ボス撃破より嬉しかった。




光の粒が消えた、その余韻の中で。


私の手首がまた熱くなった。


(え、また!? もうやめて!?)


反射で手首を見る。


黒い“目”の紋様が、今度は刺々しくない。

線がほどけて、輪っかみたいに整っていく。熱も痛みじゃなくて、湯たんぽみたいな温かさ。


視界に、無情じゃないアナウンスが出た。


《ローグライクアナウンス》

観測者10,000人で強化個体撃破。

烙印が祝福に変更されます。


《放浪者への祝福》

・通常ドロップアップ(小)

・ローグライクドロップアップ(小)


「しゅ、祝福…」


ほのかが息を吐く。


「呪いじゃなくなった。てか祝福って何、主人公じゃん」


コメント欄も歓喜で爆発する。


『祝福きたああああ!』

『烙印→祝福は熱い!!』

『条件達成型ユニークスキル、世界初すぎる』

『これからドロップ祭りだろw』


私はちょろいので、祝福って言葉だけで少し泣きそうになった。


目元をぬぐいながら、ドロップを確認する。


まずは、いつもの現実。


強化個体素材(毛皮、牙、骨…いつもより良いやつ)


大きめの魔石(ずしっと重い)


ほのかが「これだけでもヤバい」と目を丸くする。


でも。


最後に、ローグライクの本命が来た。


《ローグライクドロップ:【踊り子の双剣】》


短剣が二本。左右で対になっていて、刃の根元に風みたいな刻印。

握ると、軽い。


表示が続く。


武器種:双剣


スキル:ダンシングソード 使用可能

※投擲後、踊るように対象を切りつける。

その後、使用者へ戻る(ダメージはDEX依存)。


属性付与:風



「戻る…?」


ほのかが、私の顔を見る。


「それ、絶対ズルい武器じゃん」


コメント欄、限界突破。


『踊り子の双剣!?名前がもう強いw』

『戻る投げナイフは反則!!』

『DEX依存=ほのか向きすぎる』

『弓+戻る双剣=距離管理が完成する』

『しずくは盾、ほのかは双剣(投げ)…役割綺麗すぎ』

『風属性!?足止めとか来る?(妄想)』


そして、光が私たち二人を包む。


《佐倉しずく:放浪者 Lv3 → Lv4》

《基礎ステータス上昇》


《固有ユニークスキル:ローグライク Lv2 → Lv3》

・ロック枠:1 → 2

・ロック装備:パーティー共有可能


「…え」


私は二回言った。


「…え、共有?」


ほのかが目を見開く。


「パーティ共有って…持ち込みを二人で使えるってこと?」


表示を読む限り、そうだ。


私がロックした装備を、パーティ内で共有できる。

つまり、踊り子の双剣をロックすれば、ほのかが使える。


(ローグライク、そういうことするの…?)


コメント欄がさらに燃える。


『共有はやばい!!』

『配信者パーティ最適化スキルかよ』

『ロック2枠=銀盾+双剣確定じゃん』

『もう固定装備パーティ完成してるw』


《神宮ほのか:アーチャー Lv3 → Lv4》

《基礎ステータス上昇》


《アーチャースキル:ダブルショット Lv1 → Lv2》

・ダメージ倍率上昇


ほのかが拳を小さく握る。


「火力上がった。これでボスの削り、もっと安定する」


「すごい…」


現実では言えないのに、いまは言える。コミュ障だが。


ロックの選択


私は装備ロック画面を開いた。


ロック枠:1/2(空き1)


候補は明白。


踊り子の双剣。


私は迷わず、ロックした。


《ロック:銀のバックラー》

《ロック:踊り子の双剣》

ロック枠:2/2


そして表示が一行増える。


《共有設定:パーティメンバー使用可》


ほのかが、ちょっとだけ遠慮した声で言う。


「…しずく。これ、うちが使っていい?」


私は胸が熱くなって、でも言葉が出なくて、代わりに短く頷いた。


「うん…ほのかのほうが…強い…」


ほのかの顔が、ぱっと明るくなる。


「やった。絶対大事にする。投げて戻るとか、夢じゃん」


(夢…)


私にとっても、これは夢みたいだった。

友達と、レアドロを分け合う日が来るなんて。


ボス部屋の空気が、やっと終わった空気になった。


ほのかが弓を下ろして、笑いながら言う。


「ねえ、しずく。今日さ…配信、伝説回じゃない?」


私は前髪の奥で、小さく頷いた。


「うん…たぶん…」


そして、心の中で付け足す。


(戦いもすごかったけど)

(いちばんすごいのは)


(“私に友達がいる”ってことだ)

続きが気になる方は、ブクマお願いします!

また、少しでも面白いと感じた方は評価お願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ