フラワーボックス
「気に入ってくれると嬉しいんだけど」
彼女が一つの箱を、俺に差し出してくる。
白い、けど金色のリボンが丁寧に巻き付けられている箱。
彼女の小さな手で、その両手に包まれて俺に早く開けてほしそうに、箱が見つめてくる。
冬の日、クリスマスムード一色になっている世界の、ほんの小さな公園の片隅で、俺は彼女と会っていた。
「ありがとう、開けても?」
俺が受け取って、彼女に尋ねると、彼女はコクコクと恥ずかしそうにうつむきながらうなづいた。
リボンは端っこを引っ張るだけで軽くほどけていく。
箱のふたを開けると、ふわりときれいな香りが漂ってきた。
「あのね、ごめんなんだけども、生花を用意することって大変だったの。だから……」
中には説明書きが1枚。
どうやらお風呂に浮かべる薄い石鹸でできた花のようなもののようだ。
香りはこのうちの花の一つ、真っ赤なバラから立っているようだ。
「ありがとう、とても気に入ったよ」
「よかったぁ」
へんにゃりとしてホッとしている彼女に、俺が答える。
「でも高かったんじゃないか?」
言いながらもふたを閉じ、リボンでふたがずれないように固定する。
「ううん、大丈夫」
何が大丈夫なのかはさておいて、彼女が言うならばそうなのだろう。
「じゃあ行こうか」
彼女からのプレゼント、今度は俺が彼女へプレゼントを送る番だ。
とはいってもこんな素敵な贈り物じゃないが、近くにあるホテルの最上階でのフレンチディナーだ。
気に入ってもらえると、とてもうれしいのだが。
いや、きっと彼女なら気に入ってくれるだろう。
そう信じてる。