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桃は食ふとも食らはるるな  作者: 海原ろこめ
第一章「桃の香りを嗅ぎ、梨の皮に目印をつける」
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口元に黒い笑みを浮かべながら手を振る

「貸し切り? 今、貸し切りっつったか?」


 私は歳桃が言った一つの単語に引っかかって訊き返さずにはいられなかった。


 歳桃はお辞儀をやめて笑みを深くしただけで、うんともすんとも言わなかった。教える気はないみたいだ。


 わざわざ教えてもらわずとも、少し考えたら分かりそうなので脅して吐かせる必要はない。


 大方、歳桃が屋上を貸し切り状態にした理由は、他の生徒に見られて困るようなドッキリを実行するつもりだから、といったところだろう。


 今まさに実行中の王子様ごっこは別に見られて困るものではないので、これから犯罪まがいの特大ドッキリを仕掛けてくるに違いない。


 また、歳桃は一番乗りではなかったはずだ。


 屋上に着いた直後に、自分より先に屋上にいたお馴染みのメンバーたちを一人残らず全員追い出したのだろう。


 こいつは口上手で人の行動を誘導するのが得意だ。


 だから相手をおだてたり、褒めちぎったり、甘い言葉を囁いたりなどして、ものの数分もしないうちに貸し切り状態にする。


 歳桃にとって、この程度のことはお手のものなのだ。


 本当は屋上で過ごすつもりだったのに気づけば追い出されていた、と。明日訊けばメンバー皆、口を揃えてそう言うに違いない。


 女子は歳桃にメロメロ状態、男子は浮かれて上機嫌になったままで。


 男女共に共通しているのは、何の疑問も持っていないどころか苛立ちも怒りも覚えていないところだ。


 ドアから速やかに出て行こうとするメンバーたちの後ろ姿に向かって、口元に黒い笑みを浮かべながら手を振る歳桃。そんな光景は腹立つぐらい目に浮かぶ。

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