ひとときの休息と安らぎを
「暇だな~…なんでこんなにも人が少ないのさ?」
な~んて嘆いても人が来るわけじゃない。
「…!足音!いらっしゃいま…」
ニャアー
「なんだ、猫ちゃんか…期待して損したよ~ほら、こっちにおいで?」
猫を抱き抱える。
ふわふわだ。
カランコロン
「…タイミングわる!」
はっ!となり、咄嗟に口を塞ぐ。
「面白い方ですね。」
「あはは…」
めちゃくちゃ恥ずかしいところお客さんに見られちゃったよ~!!
「あ、ごっご注文はお決まりでしょうか?」
何を言ってるんだ自分。
今お客さんは店に入ってきたばっかりじゃん!
「ふふっ、やっぱり面白い。
ここに来て良かったです。」
少しだけ照れてしまう。
「では、アイスコーヒーを1つ、頂けますか?」
「はっはい!」
ポタ…ポタ…
「1つ、お話を。
どんな経緯でこの店を始めようと?」
「私は昔から人見知りで人と目を見て話すことが苦手なんです。
それで、いろんな人を傷つけてしまって…
だけど!上京して克服しようとこの店を開いたんです!
まぁ、そんな夢も全然叶わなくて…」
少し照れくさそうに、そしてどこか悲しげな表情を浮かべる。
「そんなことないですよ!」
私は急に手をぎゅっと握られた。
「あなたは今、私と話しているじゃないですか!
自分を卑下せず、自信を持ってください!」
ギラギラとした熱い眼差し。
この人はすごいな…そう心の中で思ってしまう。
「あっ…急に手を握ってごめんなさいね…びっくりしたでしょう?」
私は何故か言葉が詰まる。
今すぐにでも逃げてしまいたい。
だけどそうしたら絶対に後悔する、それだけは分かるんだ。
「あ、アイスコーヒーです…冷めないうちに…」
何を言葉を濁しているんだ、私は人見知りを克服するんでしょ?
「さっきの夢を語ってるあなた、キラキラしてたわよ。
すごくね。」
…キラキラ?私が?
「そろそろ私も去ろうかしら、代金はここに置いておくわね。」
言葉が詰まって出ない。
せっかくのチャンスが台無しになってしまう。
言わなければ…!
「あ…ありがとう!ござい…ました…」
「ええ、また来るわね。」
これで良かったんだ。
他愛もない話をして、見送る。
あの人は教えてくれた。
「…頑張ろう、今日も明日も未来も。」
カランコロン
「いらっしゃいませ!」