逃げます!!
え、なになになに!
現在、俺はネズミの大群に追いかけられている。
アルマに走れと言われて、走り出した俺の背後でネズミが鳴いたと思ったら次の瞬間から大群で押し寄せてきた。
「なにあのネズミ!」
(あれは、■■■■■です。100匹前後の群れを作る肉食のネズミです。絶対に追いつかれないでください。もっと急いで走ってください。)
「そういわれても」
歩いているときに体に違和感は感じなかったが、走ると自分の体との違和感をひしひしと感じてしまう。正直、今にも足がもつれそうだ。ちなみにさっきまではいていた3センチほどのヒールは即座に脱ぎ捨てたため、靴下一枚で森林を全力疾走している。
「これっ、はぁ、はぁ、どこまでっ、走ればいい」
(■■■■■は森林に縄張りをもっています。森林が開けている場所目指してください。森林を抜ければ追ってきません。)
さっきから■■■■■が聞き取れないが、あのネズミのこの世界での名前なのだろうか
そのことを聞き返す余裕もなく、走りながら周囲を見渡すが、どの方向も森が開ける様子はない。
(斜め左方向に行ってください。一瞬ですが幹の合間から光が見えました。)
俺は走ることに必死で確認できなかったが、アルマの見たものを信じて斜め左に方向を変更する。
すると、まだ距離はあるものの、正面に複数の幹の隙間から光が見える。
「見えた!」
後ろのネズミとの距離は、徐々に縮まって10メートルほど、森を抜けるまで50m前後、ぎりぎり逃げ切れるだろうか。
最後の距離を必死に走る。も限界だが幸い下り坂になっており、ネズミに追いつかれずに済んでいる。
500メートル近く全力疾走しているため、体の違和感を抜きにしても体力も筋力ともに限界で走れているのが奇跡といえる。
さっきまで光しか見えてなかった前方の景色が見えてくる。そこには青空が広がっていた。
「あと少しっ」
(あと少しです。がんばって!)
勢いを落とさないまま森抜ける。
ぱっと森があけ、明るい陽射しが降り注ぐ。
思わず目を細めながら俺が見たのは前方に広がる崖だった。
「え、やば!」
(あっ)
か細いアルマの声が脳内で響いたと同時に、右足で急いでブレーキをかける。
しかし、ふらふらの足と靴下であることが相まって俺は足を滑らせる。それを支えるために出した左足は見事に空を切る。両足が地面から離れてしまい、一瞬体が宙を舞ったあと頭から地面に落ちる。
「ぐへっ」
やばい、意識が飛ぶ。
崖まで残り僅かな下り坂を勢いよく転がる。
次の瞬間、無重力に投げ出されたようにすっと衝撃が収まる。
薄れゆく意識の中で最後に俺の眼下には、底が見えないほどの渓谷が広がっていた。
あ、これ死んだわ。
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