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模擬戦

カルネリアの、とある剣術道場で二人の門下生が模擬戦を行っていた。


カッカカン、カン、カカン!!

木刀同士を激しく打ち合う音が道場内に広がる。

優勢なのは黒髪の少年。

畳みかけるように剣を振るい、相手に反撃の隙を与えない。


カン、カカカン、カカッ!


少年は勝負を決めるように大振りの一撃を放つ。

しかし、その攻撃は、まるで誘われていたように相手の刀身に受け流される。

「・・・・ふっ」

「やべっ」

少年は崩された態勢を立て直そうとするが、相手はそれを許さなかった。

カン、カッカカン。

1、2、3と打ち込まれる剣撃を防ぐたびに、さらに態勢が崩されていく。

そして、

「うわっ!」


カーン!!


大きな音と共に、持っていた木刀が大きく宙を舞い、少年はしりもちをついた。


「あぁーー、くっそーっ、」


「よし!」


「まじかよ、あっこから返してくんのかよ。」


「いやー油断したね。これで、3連勝ってことで。」


 道場の床で大の字になって休む少年を見下ろしながら、俺は額の汗をぬぐう。

 道場では、ほかの門下生の声と木刀を叩く音が響きわたる。

 夏の日差しが差し込み、セミの鳴く昼下がり。


 なにこれ、めっちゃ青春。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 俺は冒険者登録と同時期に、剣術道場に通い始めた。

といっても、毎日通っているわけではない。5日に一度の休日か、出勤が夕方の場合に午前中に数時間か。

 通い始めた理由は、戦うすべを身に着けたい気持ち半分、好奇心が半分といったところだ。


 カルネリアには複数の剣術道場があっため、どこに通うか選ぶことができた。


 当然、この世界の剣術にも流派があり、流派ごとに剣術道場が存在しているのだが、俺の選んだ道場には流派はなく、一人の師範が独自に剣術を教えている。

 ここでは剣術の基礎から、有名な流派の基礎や特徴について幅広く学ぶことができる。

 そのため、俺のような何も知識がない人間にはちょうど良かった。


 ただ、俺が複数ある道場のうち、ここを選んだ理由は別にある。

それは、ここが錬気術の習得に重きを置いているからだ。


この道場の師範は特殊な魔眼を持っており、彼の指導に従うことで効率的に錬気術を習得できる。と、冒険者組合の受付嬢が教えてくれた。


 ほかの道場の門下生の大半が魔剣士であるのに対し、この道場は魔剣士の割合は2割程度で、それ以外は、錬気術を身に着けたい人、剣術に興味のある子供、最低限の剣術の基礎を学びたい冒険者、趣味の大人、など様々な人が習いに来ている。

 おかげで、俺が興味本位で入門しても嫌な目はされなかった。


 そもそも、俺が錬気術を使えない可能性もあるが、物はためしと思い、今は剣術と錬気術を学んでいる。


「なぁ、最後のなんで、防げたんだよ。上半身はノーマークだっただろ?」


 先ほどまで、俺と模擬戦をしていた少年が訊ねてきた。

 彼はクリム・ログワール。

 俺が入門した数日前に入門したそうで、よく練習が重なる。

 小柄で幼く見えるが、たしか、18歳だったはず。

 今は実家の精肉店で働いているが、冒険者志望らしく、ここで剣術と錬気術を学んでいるそうだ。


「確かに、ノーマークだったよ。でも、大振りだったから、ぎりぎり、防御が間に合ったって感じかな。」


「そうか。・・・いや、それは嘘だ。俺が剣を振り始めるころには、カナメは受け流す気満々の構えをしてた。」


しっかり見てるなー。


「んー、今思い出した! 視線から予想したんだよ。」


「視線で?」


「・・・そう、クリムの視線が一瞬、動いたから、目算で脇腹くらいを狙ってくるなーと。」


まぁ、それだけでないが。


「そんだけの理由で、んーーー、いや、でも・・・・゛うーーん」


クリムは不服そうに唸りががら、何かを考えている。


「動体視力がいい方なんだよ。」


「だとしても・・やっぱりおかしい。目線を見たってことを信じたとしても、それだけじゃ、あんな動きにはならないだろ。優勢だった俺が剣を振るより早く上段で構え直すなんて。」


「うーん。」


 確かに、それだけではあの動きにはならない。

 クリムは俺の態勢を崩すために、下段に連続で攻撃しつつ、上段への防御がしにくいように、俺を誘導していた。そこから、一気に俺の脇腹に切り上げるように剣を振るってきていた。

 そう来ると分かっていても、防戦一方から、あれを完全にいなして、反撃に移るのは無理があった。

 そのため、すこし肩に負荷をかけることになった。


「・・よく考えたら、受け流してからの反撃も変に重かった。」

「そうかなー。」

「カナメは、まだ錬気術使えないだろ。」

「そうだけど、」


「だよな。じゃあ・・・・・なんで女子なのに、そんなに力が強いんだよ。」


わぉ、ノンデリカシー


「前から不思議に思ってたんだよ。鍔迫り合いも押し返してくるし、体術の練習でも俺を普通に投げ飛ばすし・・・・なのに、筋肉質ってわけでもない。」


そんなこと考えてたんですね。


「私、着痩せする筋肉なんだよね・・・・」


「だとしたら、どんな鍛え方をしてるか教えてくれよ。」

「ぐぬ、」

「ぐぬ?」

「ぐぬぬ!」

「やっぱり、なにか特別なことをやってるのか?」


「・・・あ、そうだ。思い出した。今日はこれから師範に呼ばれてるんだった。」

「は?」


「行かなくては、」

「おい、ちょっと待てって。」

「では、対戦ありがとうございました。」


立ち上がろうとするクリムに一礼をして、道場の出口に向かう。


「説明してくれないなら、次から錬気術を使うからな。」

そんな声が背後から聞こえた。



読んでいただきありがとうございます。

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