目覚め
「ん、ん? ん・・・」
気が付くと森の中で仰向けになっていた。
背中にはひんやりとした地面と体に押し付けられた小石の感覚がある。視界に入る木々は見たこともないほどの高さをしており、幹の上部からは深緑の葉がうっそうと茂っている。
その葉の隙間からは落ちる木漏れ日は現実味がないほどの神秘性を秘めていた。
えっと、どこここ?
なぜ、森の中で寝ていたのかが全く思い出せない。
深夜に寝落ちをして、ふと目が覚めた際に今が夜か朝か何をしていたかわからなくなることがあるが、それらは数秒もすれば状況を思い出す。
しかし今回に関しては一切何が何だかわからない。なんで森の中にいるのか、その前後の記憶もあやふやだった。思い出せる最後に記憶をたどる。
そうだ。旅行に行こうとしていた。オーストラリアへの一人旅。
大学3年の春休みに何を血迷ってかオーストラリアへ旅行に行くことにしたんだった。
旅行当日の朝、早く起きて荷造りの最終確認を行っていた。そのあとは・・・え・・と、あ、空港の最寄りの駅で降りた。駅の改札に向かうエスカレーターが混んでいたから階段を使ったが思いのほかキャリーバッグが重くてエスカレーターに乗ればよかったと後悔したんだった。そして・・・・・・・・・・
だめだ。それ以降は全く思い出せない。
つまりは、駅で何かあった? いや、どれだけの期間、記憶を失っているかわからない以上は駅で何かあったと考えるのは安直すぎるか。
思い出せない以上、今わかっている情報から、ここがどこか考えるべきだろう。
空に向けていた視線を周囲に移す。
周囲にそびえたっている木々のほとんどが直径が俺の身長以上あるような大木で、中には直径が4~5メートルある大木も確認できた。ちなみに俺の身長は169センチである。それらの樹木が乱立しているため、幹が重なり合って遠くのほうがどのようになっているか確認ができない。
大木によって光があまり入らないためか視界に入る範囲の地面は背の高い植物は確認できず、コケとシダ植物、ツル植物に覆われていた。
こんな森林、日本にあったけか?
いや日本ではない気がする。理由としていくつかあるが2月にしては植物が育ちすぎている。気温も日陰で横になっていても寒いと感じない温度である。20度前後といったところだろう。イメージだが森の中は涼しそうなので、本来もっと温度が高いと考えると日本だと、どれだけ南に行けばいいか検討もつかない。
俺が旅行の準備をしていたのは2月12日だった、それから何日経過しているかわからないが、何ヶ月も経過しているとは考えたくないという理由もある。
それなら、海外か。なんで? いや、オーストラリアに向かう途中だったのだから、オーストラリアの森の可能性が高いか。今回のオーストラリア旅行のプランにこんな森はなかったから、何かの事件、事故に巻き込まれて記憶を失い森にいるとか。
森に運ばれる事件っていうのが、どういう意図のものなのかわからないけど、季節的に考えてもオーストラリアなら辻褄が合うようなきがする。
あとは何かのドッキリに掛けられているとかだろうか。正直、これが一番状況としてはありがたいが、その場合、記憶まで操作されるとは考えにくいだろう。
ほかには、飛行機が墜落して偶然生き残った俺が漂着した。だけだと海岸ではなく森にいたことと辻褄が合わない。漂着した後に森の中で何か悪いものを食べて記憶を失ったとかだろうか。
さすがに、思考が跳躍しすぎているか。
あと考えられるのは・・・・実はここは地球ではなくて別の世界で、不慮の事故に巻き込まれ死んだ俺が異世界転生したとか。
まあ、そんなわけないよな。
さて、拉致があかないので、取り敢えずオーストラリアの森の中だと仮定しよう。
わからないことがたくさんあると判明しただけのような気もするが、だいぶ頭の中も整理できて来た。
頭で考えているだけでは、何も進まないのだから、そろそろ寝転がってないで行動を起こすべきだろう。
しかし、だ。
行動を開始する前に後回しにしていた、ある現実について考えないといけない。
正直、最初に考えるべき情報だった。これを先に考えないと今までの考察が全く的外れなものになりかねないほどの情報だった。というよりも、この事実から目を反らすために、別のことを必死に考察していたといっても過言ではない。いったん別のことに思考を逸らして落ち着かないと、あまりの事実に手を付けられなかったから。
いや、目も逸らしてなければ、手ても付けていた。
目覚めてすぐに、
目を開けて、視界に入ってすぐに手を付けていた。
そして現在も俺の両手が揉んでいる本来、俺の胸部は無いはずの柔らかい2つの膨らみについて考えないといけない。
伝わりにくかったら申し訳ありません。
ぼちぼち書いていくのでよろしくお願いします!!
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