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遺跡6


(今、地球時間何時?)


 俺がそう聞くと、アルマはスーツのポケットからスマホを出す。

2月13日4時35分を示していた。充電はあと40パーセントほど。


(階段を上りはじめてから3時間くらいか。だいぶ上の方に来ているはずだが。)


休みながら登ってはいるがそろそろ地上に出たいところだ。


「道幅的に考えても、出口が近いんじゃないでしょうか。」


 そう、この階段、特殊な作りをしていて、数百段ごとに折り返しているのだが、折り返すごとに道幅が狭くなっているのだ。

 最初はあれほど広かった通路は、今は1mくらいの幅になっている。

 なので、そろそろ出口が近いのではということだ。

 逆に、後3、4折り返しで人が通れなくなりそうだ。

 そんなことを考えていると、次の折り返しにたどり着いた。

 恐る恐る体の向きを変える。

 そこには、階段ではなく通路が存在していた。

 そして、その先には光が差し込んでいる場所がある。


(おお、ついに、)


アルマは速まる足を抑えながら、慎重に光の元にたどり着く。


「よかった。地上です。」


 上へと続く円形の縦穴からは青空がのぞいていた。

よかった。


 どうやら、雨も止み、日も登っているようだ。



 地上への穴の正体は、枯れ井戸だった。

井戸の隣には畳一畳ほどの大きさの祠があった。

人が整備しているような痕跡はなく古びて苔むしている。

まさか、この地下にあれほどの遺跡があるとはだれも思わないだろう。

 ちなみにどうやってこの井戸を上ったかというと、アルマが身体強化魔術とやらを使って普通によじ登った。

 何でもできるんですね。とほほ

そんな感じで地上に出た俺たちだが、少し離れた場所には俺たちが落ちた渓谷も確認でき、相変わらず深い森の中という感じだ。


(このあとは、人里を探すことになるのか。)


 いつになったら安心して休めるのやら。

というか、まだ異世界に来て半日しかたっていないのだから驚きだ。

ちょっと詰め込みすぎではないだろうか。


「喉も渇きましたし、まずは水場を探したいです。川があれば其処を下ることにしましょう」


(了解、もう喉がカラカラだ。)


休んでいた木陰から立ち上がり、歩き出す。

回復魔術をさらに使ったため、歩いても大きな傷以外は痛みが無くなった。

ありがたい。


(ところで、魔術で水は作れないのか?)


「魔術で水は作れます。しかし、厳密には水ではないんです。魔素が水の性質を模倣しているだけです。喉の渇きはうるおせますが、体内に吸収された後に魔素に戻ってしまうため、逆に危険です。」


(なるほど)

よくわからん。


 んーと、本物を無から創造しているのではなく、そっくりの物を魔素で作り上げているということだろうか。それも時間経過で消滅するみたいな。

 たしかに、体内に入れた水が突然消滅したら危なそうだ。

 それに魔術自体がファンタジーなので、深く考えたことはなかったが魔術を使う度に物質が増加し続けるというのも変な話しだ。

そう考えると、消滅する方が普通かもしれない。

でも、回復魔術も魔力で傷を負った場所を補完しているのではないのだろうか。


(ん?じゃあ、回復魔術は大丈夫なのか。突然体中に傷が現れて血まみれ、みたいな危険なことになるのでは?)

「なりますよ。」

(なりますの!?)


あら、思わずお嬢様口調になってしまいましたの。


「当然、そうならないように工夫が必要です。」

(そうなのか。)

「ややこしいですが、聞きますか?」

(お願いします。)

「わかりました。これは魔術の性質なのですが、魔術で作った水をコップに置いておく分には1日はもちます。ですが、広範囲に散らすと数分で魔素に分解されます。水分の蒸発と似ているかもしれません。」


(なるほど、体内に入れると水は体中に分散するから、魔術の水は分解されやすいと)


「そういうことです。回復魔術は怪我を補完しているため分散はしにくいです。三日は持つでしょう。その間に怪我が治ればいいですが、治らなければ浅池さんの言ったように悲惨なことになります。」


(お、おう)

「対策の一つは魔術をかけ直すことです。これは充電みたいなものですね。ですが回復魔術が使える人しか使えません。もう一つは自然治癒魔術を併用することです。これは、簡単に言えば自然治癒力を大幅に向上させる魔術です。この魔術だけでも小さな傷は十分に治せます。自然治癒魔術を回復魔術で治した後に使えは、回復魔術で治療した部位は、3日もすれば本来の肉体に置き換わります。自然治癒魔術はそれほど魔力消費しないですし、こちらの手法の方が一般的です。以上の二つが対策になります。わかりました?」


(回復魔術と自然治癒魔術のセット利用がお得ってことか。)


「一般的にはそうですね。ですが、自然治癒魔術にも欠点があります。それは体に負担がかかってしまうことです。治癒するには体に、その分の栄養が不可欠ですし、体力も使うため食事や水分補給をしないと栄養失調や貧血で倒れてしまうことがあります。そのため私は自然治癒魔術を使ってないです。」


(なるほど・・やばいやんけ。)


傷開いちゃうじゃん。


「そうですね。なので水分を取ったあとは、何か食べたいですね。十分な食事ができれば、自然治癒魔術も使えます。」

(そうなのか。)

遺跡を出たと思ったら次は水と食事の確保らしい。

そういうわけで、俺たちのサバイバル生活が幕開けた。


そして、・・・・・・・・・・・1日が経過した。

・・・いや、ちょっと端折りすぎたか。

読んでいただきありがとうございます。

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