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どんな世界 ?


「ところで、喉が渇きましたね。」

(結構な量の涙を流してたしね。)

「なんのことですか?」


どうやら、あれはノーカウントらしい。


(いや、確かに喉は渇が渇いたかも。こっちに来てから何も飲んでないし。でも川までの道のりが・・・)


小川まで10メートルほど、決して遠い距離ではないが、体の怪我を考えると到底たどり着けそうもない。


「はい、ですので回復魔術を使おうと思います。」


 そう言うとアルマは両手のひらを太ももに向ける。

すると両手の周りが薄く黄緑に光りだす。その光は徐々に広がり、両足を包み込むように伸びていく。両足はかゆさと気持ちよさの中間のような感覚がする。

俺は初めて目にする魔術に見とれてしまっていた。

そのまま、数分が経過しレインの手から光が消える。


「ふぅ、これで足を動かせるといいんですが」


 そういうと、彼女は軽く伸ばしていた足を胡坐をかくような形で曲げる。

思わず身構えてしまったが、感覚としては、ひどい筋肉痛くらいだろうか。


(だいぶマシになった。こんな短時間で回復できるものなんだな。)

「術者の回復魔術の腕に左右されますね。」


 回復魔術には自信があるということだろうか。

 その後、彼女はケガがひどかった足の裏の切り傷と足首の骨折にも個別に回復魔術をかけた。そこで、どうやら魔力が尽きたようだ。

 とりあえず、最低限は歩けるようになったので、小川に近づいて水を飲んだ。

両手で掬った水は氷のように冷えていた。そして、今まで飲んだどんな水よりもおいしく感じた。

アルマは2杯で満足したようだったが、俺はあと、3,4杯は飲みたかったかな。


そんなこんなで、もう一度、焚火の前に戻ってきた。


「この倦怠感って浅池さんも感じますか?」

(あ、うん。これが魔力切れなんだろうって思ってた。)

「やはり伝わるんですね。魔力量が底に近づくと倦怠感を感じるようになるんです。こういうのも個人差がありますが。」

(魔力を使い切ると死ぬとか?)

「魔力切れで死んだ事例は聞いたことがありませんが、私の場合は9割5分ほど消費すると気を失ってしまいます。9割消費くらいで倦怠感を感じ始めます。完全に消費しても何ともない人もいるそうです。」


なるほど、この状態になっても、一応魔術は使えるのか。

 それから、アルマからこの世界のことを聞いた。

環境は地球と類似している点も多いようで、地域によっては四季があり、砂漠や氷雪地帯、熱帯雨林などの様々な環境もあるそうだ。

文明レベルは地球には遠く及ばないらしい。街中を馬車が普通に走っているくらいの文明だそうだ。少なくとも魔術で動く車のようなものは発明されていないということだろうか。

蛇口もコンロもないが魔術で代用できるから、思いのほか生活で不便はないそうだ。



 地球と異なっていた点としては人族以外の人間がいることだろうか。

魔人族、獣人族、ドワーフ族、など。なんともファンタジーだ。

不思議な話だが、全ての種族が共通の言語を使っているとか。

なんでだ?

 しかし、残念ながら言語は地球にあるものとは異なっているようで、日本に来た時は彼女も苦労したらしい。

 説明の際に名詞はアルマが既存の近しい単語に変換して話してくれている。

 俺も、この世界で生きるには覚える必要があるわけか。気が重い。


あと、地球と異なる点で最も興味を引くのは魔術だろう。

そう思って、魔力と魔術についても聞いたが、レインが想像以上に饒舌になって驚いた。

「魔術に関しては、謎が多いが、現在の魔術理論では、魔術の発動を魔術想像論と、物理魔術論の2つの方向性から解明をしていて、・・・」なんて話された時は、大学の講義が始まったかと思った。理解が追いつかなかったので中断してもらったが。

 説明のわかる範囲で要約すると、大地を流れる地脈から発生したのが空間魔力。

それがこの世界では空間に充満しているらしい。

それを生物が空間魔力を自分の魔力に変換して利用している。

空間魔力も魔力も魔素と呼ばれる粒子に蓄積された大地のエネルギーらしい。

俺にも使えるか聞いたが、魔術を使うには魔力と空間魔力を認知する必要があるらしい。

 いわく、この世界の人間は多くの場合、10歳までに魔力を認知するそうだ。

認知すれば、生活魔術は使えるようになるとか。

生活魔術とは単純な水、火、風の魔術で日常生活に欠かせないものらしい。

 どんな魔術も発動は無詠唱でいいそうだ。

詠唱や魔法陣もあるそうだが、これまた難しい話になりそうだったので、また今度ということで。

結局、俺が魔術を使えるようになるかは、わからないらしい。まずは魔力を認知しないといけない。

いきなり、超高度な魔術が使える展開を期待していた俺としては、肩透かしもいいところだ。素直に悲しい。

 あと、魔王とかいないのか聞いてみたが、そんな存在はいないとのことだった。

異世界の勇者は求められていなかった。

 しかし、人族と魔人族は長く戦争をしているとか。数十年前に大きな戦争があり、その後、膠着状態にあったそうだ。5年たった今どうなっているか分からないらしい。

 そのあとも、悪魔がどうとか、竜神が、精霊がとか。空間魔力量がどうとか、

そんなことを話してくれていたが、情報過多で記憶から押し流されてしまった。

また、必要になったときに聞こう。


 それにしても、迷う様子もなく元の世界の単語を日本語に変換しているが種族名もだが、魔素や魔力も日本では創作物の中でしか登場しない。5年間でよくここまで日本語を勉強したなと感心してしまった。


最後まで読んでいただきありがとうございます。


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