決意1
話し終えたアルマは、まだ嗚咽を漏らしながら涙を流している。
彼女の言葉は俺に向かって言ったのか、ひとり言だったのか。
それすら、俺にはわからない。
それは、俺が逃げてきたことだから。
他人と向き合って、仲たがいするのが怖くて。
相手の考えていることが分からなくなれば、そこで終わり。
まるで自分の意志で一人を選んだと言い聞かせていた。
嫌われる前に、自分が傷つく前に拒絶してきた。
そういう学生生活を送ってきた。
でも今は違うと思った。
逃げることなんてできない。
彼女のことを見て見ぬふりはできない。
結局、俺は臆病で、絶対に相手に踏み込まないといけない環境に置かれないと、行動できなかっただけかもしれない。
彼女の本心を知った。
彼女も不本意だったかもしれない。
俺を信頼して言葉にしたわけじゃない。
ただ感情を押し殺すのに限界がきて、吐き出しただけ。
それでも、知ったからには、俺にだってできることがあるかもしれない。
歩み寄るべきは俺だ。俺自身が彼女の不安の種なら、解消させられるのは俺だけだと思っ。
ここで俺が彼女から目を背ければ、離れることのできない俺たちの関係は生殺しだ。
彼女はこんな状況で、俺の会話に付き合ってくれた。
それはきっと彼女にできる最大限の譲歩だったはずだ。
にもかかわらず、俺は歩み寄るふりをしながら、自分の意志を通していただけだった。
もう、十分に見損なわれているかもしれない。
それでも、彼女に向き合わないといけない。
俺がこの体から出ていくまでは、同じ景色を見て、同じ物を食べて、同じ痛みを共有する。
それなら、愉快な記憶を共有した方がいいに決まっているから。
そうしたいと思ったから。
こんなものは、俺が人が涙を流しているのを見て感化されているだけかもしれない。
人がそう簡単に変れるとは思わない。
だとしても、彼女の手助けをできたらと今は思った。
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谷間から見える空には星が登っている。
俺が脳内で会話シュミレーションをしている間に、アルマは泣き止んでいた。
どう切り出したらいいか分からない。
そんなことを考えていると、アルマが大きく息を吐いたあと喉を鳴らす。
「まだ、いるんですよね。」
(はい、います。)
「ずいぶんとおとなしかったですね。」
(まぁ、それは)
会話は彼女が切り出してくれた。
あまりに自分が情けない。
だから、まとまっていない気持ちを、喉でつまりそうになる言葉を声に出す。
(俺も異世界に胸を弾ませてたということもあって、自分勝手な行動をとってしまったと今は反省していて、だからごめん。いや、すみませんでした。)
「ん? 突然、どうしたんですか?」
(いや、俺、元の世界では一人を好んでたというか、良く単独行動していたから。その、相手のこと何も考えられていなかったなって思って。アルマに出会ってからも、無神経なことばかりしてたと思って。それで、えっと、でも、別に危害を加えるつもりは全くなくて。ほんとに)
「そうなんですね。」
(だから、その、俺、魔術も使えないし、元の世界でも普通の学生だったから、役に立つようなことはないかもしれないけど、協力できることがあればしたいと思ってる。信用できないと思うけど、、、)
「そうですか。」
(あと、勝手に体を入れ替わったりも絶対しない。)
「はぁ、、、まぁ、わかりました。ありがとうございます。」
(・・・はい)
(「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」)
「まぁ・・・・、ボッチ大学生だったなら、空気が読めなくても仕方ないかもしれないですね。」
(うぐぅ)
そう、ここから少しずつ信頼してもらえるような行動をとろう。
会話しかできないけど・・・・・
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感情描写ってどこまで書けばいいか分かんないなー