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俺たちの星座は二人だけのもの

作者: 大橋 秀人

瞬くと、帰り道の夜空を指差す親友がいた。

「ほらあれ、昨日と同じところに出てる」

葵衣は言われたまま素直に頷く。

空気が冷え込み、星はくっきりと闇に浮き出していた。

「同じようでも昨日とは違うと思うよ」

塾上がりに三人で同じの場所を同じ時間に歩いている。

「そんなの知ってるよ。でも大体、しばらくは同じくらいの場所に出てるって意味。少なくとも俺たちの受験が終わるくらいまでは」

意味ありげな親友に頷きを返す葵衣。

僕は必死に見つからない3つ目の星を探した。



同塾の僕たちの中で星に詳しいものはいなかったから、親友のその提案に異議はなかった。

「前からここを歩くとき、空を見上げると青白く光る星が気になってたんだ」

彼が説明するその星の位置は、ごく自然に見つかった。

「それを基準に水平に視線を移すと、今度は赤い星が見つかる」

「どっちの水平?」

「向かって右」

すると葵衣はそれを見つけたのか、確かに頷いてみせる。

その星が赤みを帯びているかは疑問だったが、彼の謂わんとしている場所辺りに小さな光は見て取れた。

「そして赤星と青星の直線上にぼんやり光る星がある」

そう言いながら親友は指で夜空に一筋の線を描いて見せる。

「どのくらいの距離なの」

「真ん中の青星と同じくらいか少し遠目かな」

「そんなのある?」

僕と葵衣はそれぞれにその星を探したが、なかなか見つからない。

「2つの星よりぼんやり光ってるけど、必ずあるから」

断言されると探さずにはいられない。

が、僕にはそれがどうしても見つけられなかった。

「あった」

やがて葵衣が声を上げる。

「1度見つければ見失わない」

「うん、そうだね」

その確かな声に僕は思わずそう応えてしまう。

「この星たちをさ、俺たちの星座にしようと思って」

恥ずかしげもなく親友は夜空にそう宣言し、葵衣もまんざらでもないように頷いた。

その後は全員で夜空を見上げながら他愛のない話をしながら家路についた。

もちろん僕は二人の話なんて耳に入るはずもなく、受験が終わるまでの数週間を必死にその星を探すことに費やす羽目になったのだった。



大人になった今でも、僕は冬が本格化するこの時期になると、たまに夜空に目を向けることがある。

そして赤星と青星を見つけたその先にあるはずのそれに目を凝らす。

が、やはり見つけられない。

そろそろ頃合いだろうか。

「俺たちの星座ははじめから2つだった」

と、夫婦になった二人になら訊ける気がした。


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