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第十四話 砂漠で起こりし異変

 しばらく進んだところに、話し合いに良さそうな建物を見つけた。

 辺りを見渡すと、元々は集落のような場所だったらしく、崩れてはいるが他に建物がいくつかある。

 とりあえずは捕らえた男を、エルミー達が砂で作った即席の牢屋に放り込んだ。

 

 その後、若干日差しが差し込んでいるが、無事だった家に入り話し合いをすることにした。直射日光をガンガン浴びながらの会話は、彼らにはきついだろうからな。

 中にあった家具はほとんど腐敗していたので、収納空間から代わりになるものを取り出し設置。

 三人は、それを見て驚くも静かに席に着いた。


「俺達は、ここに人探しをしに来たんだ」

「人探し? わざわざこのザベラ砂漠に?」


 黒髪の青年―――カルラは、俺の言葉に疑いの目を向ける。

 当然といえば当然だ。

 ここは無法地帯。わざわざ赴く人達はいないだろう。武者修行だとか依頼で来る者達は居るようだが。


「闇の炎、は知っているよな?」

「はい。このザベラ砂漠にも赤い炎があります。私は、見たことがないんですけど」


 金髪の少女―――シェナ・ガルーニャがフレッカのことを言う。


「実は、俺達が探しているのは、その赤い炎。その化身なんだ」

「どういうことだ? そういえば、あんたらも炎を使っていたが」


 赤髪の青年―――シン・ガルーニャは問いかけてくる。ちなみに、シェナの兄で、三人は幼馴染同士らしい。

 カルラとシンは、俺と同い年で十八歳。シェナは、二つ下で十六歳だ。


「すでに察しているかと思うけど、俺は闇の炎を扱えるんだ。そして、彼女達は闇の炎の化身」


 そう言って、俺はミニサイズのヴィオレット達を紹介する。

 


「ヴィオレット」

「どもー、エメーラだよー」

「……リムエスです」

「そして、彼女が」

「娘のアメリアだよ。はい、これ」

「お、おう。ありがとう。って、娘?」


 アメリアから冷たい水が入ったコップを手渡さしされたシンは、驚きのあまりコップを落としそうになる。


「お前、既婚者だったのか?」


 冷静に喋るカルラだが、若干目を見開いている。


「まあ、妻子持ちだけど。ちょっと特殊って感じかな」


 俺は、あははと頬を掻く。


「じゃあ、あそこにいる二人も」


 砂の部屋から見えるララーナとエルミーを見てシェラは問いかける。俺は、ああ、と肯定する。

 

「にしても、よく素手で、ここの砂を触れるな」


 一応、捕らえた男の監視を二人にはしてもらっている。本当は、ただ遊んでもらっているだけなんだが。

 

「わたし達は炎だからね」

「お前もそうなのか?」

「俺は……どうだろうな」


 カルラの問いに、俺は視線をテーブルに落とす。これは、ずっと疑問に思っていることだ。俺は、闇の炎を扱えている。

 彼女達みたいに、灼熱の砂漠で平然としている。

 だけど、俺はずっと人間だと思って過ごしてきた。

 俺は……何者なんだ? と。


「……それにしても、あの炎がこんなにも可愛い存在だったなんてな」


 話題を変えようとしてくれたのか。シンは、テーブルの上に居るヴィオレット達を見て呟く。


「言っておきますが、これは仮の姿です」


 可愛いと言われても嬉しくないとでも言っているかのように、むっとした表情で言うリムエス。

 

「ヴィオレットー、見せてやれー」

「え? え? わ、私?」


 自分がやるのではなくヴィオレットに、本当の姿になってもらおうとするエメーラ。戸惑いながらも、ヴィオレットはテーブルから下りて。


「うお!? で、でかくなりやがった!?」

「わぁ、凄い美人」

「なるほど。先ほどの姿とは、別物だな」

「も、もういい?」


 少しずつ人に見られるのに慣れてきたヴィオレットだが、まだ恥ずかしいらしく俺へ視線を向ける。


「ありがとう、ヴィオレット」

「むにゅう……」


 俺の言葉に、ミニサイズに戻ったヴィオレットはアメリアに抱きかかえられる。


「よくやった、ヴィオレット。成長したねぇ」

「そう、かな」

「ええ、成長していますよ。これはガチです。以前のあなたでしたら、無理と言って縮こまっていたでしょうからね」

「え、えへへ……」

「ふふ。嬉しそうだね、ママ」


 そんなヴィオレットを見て、エメーラはふっと笑みを浮かべていた。が、俺の視線に気づき、いつものだらーっとしたエメーラに戻る。

 そういうことだったのか。別に隠さなくてもいいのにな。


「闇の炎、か。俺達、ザベラの民では太陽神の涙なんて言われている」

「太陽神の涙?」

「ああ。俺は、信じていなかったが。ザベラに住む子供は、まずそのことを教えられるんだ」

「ザベラ砂漠は、太陽神様が我々に与えし試練の場。この地で生き抜くことで、死した時、太陽神様の使途として転生できる。太陽神の涙は、試練を与えたとはいえ、我々のことを想い、悲しんだために天より落ちた涙。そう教えられるんです」

「そうやって、太陽神様のために頑張ろうって刷り込むんだよな……」


 どこにも、そういうものはあるんだな。

 いや、こういう過酷な環境だからこそ、というべきなのか。そうやって教えることで、少しでも生きるための希望を持たせる。

 信じるか、信じないかは本人次第だけど。


「ヤミノ。お前は、その闇の炎の化身を、何のために探しに来たんだ?」

「嫁にするためじゃねぇの?」

「お、お兄ちゃん……!」


 あながち間違っていないから否定できない。


「えっと、実はそう、だったり」

「え?」

「はっはっはっは! すげぇな! 嫁探しのために、こんなところに来るなんて!!」


 苦笑いしながら、シンの言葉を肯定するとシェラは目を丸くし、シンは大笑いする。


「笑い過ぎだ、シン。……ちゃんと意味があるんだろ?」

「もちろん。実は」


 外界の情報がほとんどと言っていいほど入ってきていないであろう。そう思った俺は、今後のためにカルラ達に今何が起こっているのかを話した。

 すると、シンの表情が強張る。


「まさか、それって」

「シン」

「……」


 シンは、怪我を負っていた箇所を抑えながら、隅っこに置いてある筒状の武器を睨む。


「やっぱ、この地にもあいつらが来ているみたいだーね」

「明らかに、あの武器は異質。そして、イア・アーゴントの装甲に酷似しています」

「……何が起きているか。教えてくれないか?」


 フレッカを探さなくちゃならない。だけど、奴らがこの地に居るのなら無視することはできない。俺達は、そのために行動しているのだから。

 

「わかった。お前達も無関係じゃないみたいだからな」


 ぐいっと一気に水を飲みほしてから、シンは真剣な表情で口を開く。


「この地は、一人の男と侵略者によって、力による支配をされようとしている」

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