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第十二話 着いて早々

今年最後の更新……になるかな?

なるかもですから、皆さん良いお年を!!

 赤炎の化身たるフレッカを求めてザベラ砂漠へと訪れた俺達。

 今日は、快晴だったが……ザベラ砂漠は、別世界に居るんじゃないかと言うほど熱い。周囲は、見渡す限りの砂、砂、砂。

 さっきまで、しっかりとした地面に足をついていたからか、不安定さが際立つ。


「ここがザベラ砂漠か」

「いやぁん! あっつーい!!」


 ぱたぱたと右手で自分の顔をあおぐエルミー。だが、熱いと言っている割に全然汗を掻いていない。


「熱いわけがないでしょ? 自分達は、炎ですよ?」

「知ってまーす。こういうところだから言ってみただけ」


 指摘され、すぐ笑顔で答えるエルミー。

 対してリムエスは、困った子だと言わんばかりに表情を歪める。


「だから、風を送らなくても良いんだよ? ララーナお姉ちゃん」

「本当に大丈夫ですか? 熱くないですか!? やせ我慢は毒ですよ!!」


 エルミーの冗談を真に受けてララーナは、自分の上着を必死に動かし風を送っていた。


「本当に大丈夫大丈夫。これぐらいの暑さなんてへっちゃらだよ」

「なら、よかったです!」


 脱いだ上着を着て、心の底から良かったと思っているようで笑顔を作るララーナ。そんな彼女を見て、別の意味で熱くなってしまっているエルミーだった。

 褐色の肌が赤くなりとろんっとした目を向けている。


「それにしても、砂ばかりだねぇ」

「砂漠、だから。あっ、エメーラ。髪の毛に砂が」

「もじゃもじゃだから大変だー。ヴィオレット、取っておくれー」


 エメーラの髪の毛に入った砂を一生懸命に掃うヴィオレットを見詰めつつ、俺は周囲を今一度見渡す。

 ここは、今までのところより炎の意思が強い。

 

「フレッカさんの気配、中々捉えられないね。パパ」

「だな。なんだろう……なんかこう力と力がぶつかり合っているような」

「あ、それ。たぶんフレッカのせいだよ」

「フレッカの?」


 今度は、ララーナに抱きかかえられたエメーラが呟く。


「今、思い出したんだけど。ここで、過去に青の奴と大喧嘩したんだよね」

「そういえば、そうでしたね。もしかしたら、その時の名残があるかもしませんね」

「……フレッカと青の人って、そんなに仲が悪いのか?」

「うん。よく喧嘩してた」

「何かとぶつかってたよねー」

「それによく巻き込まれていましたよ……」


 エメーラ達の反応を見る限り、本当によく喧嘩をしていたのだろう。


「いつだったかは思い出せないけどねー」

「凄い喧嘩だったんだね。周囲にとんでもないエネルギーが充満してるよ」


 言うなれば、このザベラ砂漠全域にフレッカの気配があると言えよう。加えて、彼女はどういうわけか他の炎達と違って自由に動いているようだから、より大変だ。


「まあ、フレッカが暴れていれば見つけやすいのでしょうけど」

「どかーん! と言う大きな音を頼りに探すってことですね!」

「あ、どかーんって砂が爆発した」


 エルミーの言う通り、離れた場所で砂が爆発したかのように激しく動く。

 そして、こちらへ真っすぐ向かってくる。

 この気配……イア・アーゴントじゃないな。


「主! ここは自分が」

 

 と、俺の前に立つリムエスだが。


「はいはーい! ここは、あたしにお任せあれ!!」

「私もやります!!」

「最近、運動してないからわたしも参加しちゃおうかな」


 やる気満々な娘達が、更に前に立つ。


「な!? あなた達!?」

「ごめんねぇ、お母様。でもぉ、力が弱まっているんだから、少しでも回復に専念しなくちゃ。ね?」

「ぐぬ……」


 これも娘としての優しさ、なのだろう。

 

「リムエス。ここは、エルミー達に任せよう」

「主……」


 俺は、リムエスの頭に手を置き、真っすぐ娘達を見詰める。

 

「お? 来た来たぁ!」


 砂の中を泳ぎ、こちらへ向かってきたのは人など簡単に丸のみにしてしまうほどの巨大な口を持ったワーム系の魔物サンドワームが二体。

 

「まずは」


 俺達を襲わんと二体同時に突撃してくるが、アメリアの作った空間転移の陣に吸い込まれ、空中へと飛ばされてしまう。


「右のは任せたよ! ララーナお姉ちゃん!」

「よっしゃー!」


 そのままエルミーは、リムエスも使っていた黄炎の小さな盾を生み出し、左のサンドワームへと飛ばす。

 小さな盾は、まるで、飛ぶ刃の如く体を切り刻む。

 

「突貫!!!」


 そして、ララーナは全身に緑炎を纏い、弾丸の如くサンドワームへ飛んでいった。砂を泳ぐ魔物ゆえに、空中では何もできない。

 なんとか反撃せんと、数十に及ぶ牙が生えた口を開くも、まったくの無意味だった。

 緑炎を纏ったララーナは、そのままサンドワームを貫く。


「いえい!!」


 地上に着地すると、元気よくガッツポーズをとる。


「いえっーい!!」


 それに続くようにエルミーも顔の横でピースサインをし、ウィンクをする。


「良い連携だったね」

「はい! 事前に決めていた通り、うまくいきました!!」

「姉妹の絆、ここに極まれり!!」

「極まれり!!」


 どうだ! と言わんばかりにララーナとエルミーは互いの肩を抱き合う。アメリアも、それに続き胸の前でガッツポーズをとった。


「いやぁ、これが子供の成長を喜ぶ親の気持ちなんだねぇ」

「むう。自分には、まだよくわかりません」

「三人とも。凄かった、よ」

「うん。この調子なら、この無法地帯も大丈夫だな」


 娘達の戦闘力も、かなりのもの。ここが死と隣り合わせな無法地帯だとしても、必ず生き残れると確信できる。

 

「よし! 皆! フレッカを探しに行くぞ!!」

《おー!!》

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